シトリックス、2012年は「モバイルワークスタイル」「クラウド」に注力

日本における事業戦略を発表


シトリックス マイケル・キング社長

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は、日本における2012年の同社事業戦略について発表。そのなかで、シトリックスのマイケル・キング社長は、「2012年は、モバイルワークスタイルの実現と、クラウドサービスの拡張を可能にするソリューションを提供することに力を注ぐ」とし、中堅・中小企業に特化したオールインワンのVDIソリューションである「Citrix VDI-in-a-Box」、デスクトップの仮想化を促進し、アプリケーションの移行と容易な管理を実現する「Citrix AppDNA」、XenAppのモバイル版として、エンタープライズアプリケーションのモバイル対応を実現する「Mobilizing Enterprise Apps」を、新たに投入することを明らかにした。

 「Citrix VDI-in-a-Boxは、ひとつのランチボックスのように、VDIに必要な機能をすべて提供できる。容易な設置と管理が可能であり、セキュリティやパフォーマンスの強化のほか、マルチハイパーバイザー対応となっている。これまで日本では投入していなかったが、4月1日から出荷を開始する。また、Citrix AppDNAは、Windowsとブラウザ対応アプリケーションの新たなプラットフォームへの移行を支援するもので、Windows 7への移行なども促進できる。今年度下期に投入できる」(シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部の伊藤利昭本部長)と語った。

モバイルワークスタイルの実現と、クラウドサービスの拡張を可能にするソリューションを提供することに力を注ぐCitrix VDI-in-a-Box
シトリックス マイケル・キング社長

 Mobilizing Enterprise Appsでは、タブレットに最適化したデスクトップ環境を実現する「XenApp6.5 Mobility Pack」、システムインテグレータや大手企業、ISVなどを対象にした「Mobile Application SDK for Windows」を提供する。

 またクラウドサービスの強化として、Citrix NetScalerを戦略的に展開。第1四半期にはNetScalerのクラウド対応を行うとしたほか、Citrix CloudStackを市場をリードするクラウドインフラストラクチャとして位置づけ、第1四半期にはCitrix CloudStack 3.0を投入。XenServerおよびNetScalerと連携することで、オープンで拡張性の高いクラウド基盤を構築できるとした。

 そのほか、今年度下期に投入する予定のCitrix Receiver with Follow-Me Dataでは、あらゆるデバイスからのデータアクセス、リモートからのデータ消去などを実現するといった機能を紹介した。

 これらの製品の投入により、同社が掲げる「従業員の生産性を大幅に向上」、「ビジネスに俊敏性を、ITシステムに柔軟性を提供」、「ワークライフバランス、創造性、社会との調和を生む環境の実現」に寄与するとしたほか、今後の3つの活動として、「デスクトップ仮想化とモバイルワークスタイルにおけるリーダーシップを拡大」、「クラウドサービスの強化」、「お客さま、パートナーへの価値を向上」に取り組むと語った。

 さらに、2012年には、パートナー戦略も強化していく考えで、「シトリックスのパートナーに対する教育に力を注いでいく。シトリックスユーザーグループコミュニティにより、ユーザー同士の連携を強化していくほか、企業向けクラウドコミュニティを開設する予定である」と語った。

 一方、キング社長は、「2011年はシトリックスにとってすばらしい1年だった。シトリックスジャパンは、全世界で成長率が一番だった」と、同社の取り組みを振り返り、仮想化市場において、No.2のシェアを獲得したことや、NetScalerがデスクトップ仮想化の世界的リーダーに躍進したこと、企業買収に関して6億ドルの戦略投資を行い、ソリューションのカバレージ範囲を拡大したことなどを示したほか、日本では東日本大震災後に、様々な復興支援活動を行い、シトリックスオンラインサービスの無償提供において、2300ユーザーが登録した実績などを示した。

 シトリックスオンラインサービスは、全世界で前年比18%増となる4億2700万ドルの売り上げとなり、SaaSベンダーとしては世界第5位になったという。日本では正式には発表していないが、「今後、情報を提供できる」と語った。

 さらに、XenDesktopでは、500以上のCitrix Readyパートナーがあり、80社以上のユーザーが1万ライセンス以上を利用していることを示しながら、「2011年には大企業、大手インテグレータ、アナリストの間で、デスクトップ仮想化の世界において、シトリックスがダントツのリーダーであるという認識が浸透したほか、日本でのデスクトップの仮想化が進み、それがメインストリームになり、その経験をパートナー、ユーザーと共有できた重要な1年だった」などと語った。

 キング社長は、デスクトップ仮想化において、三菱東京UFJ銀行、北洋銀行、大和総研、富士市教育委員会、広島大学などの導入実績も明らかにした。

 さらに、「日本の多くの企業が、ネットワークに対して強い関心を寄せている」としながら、Citrix CloudStackが全世界で85の大規模クラウドサービスにおいて導入実績があること、日本では北海道大学をはじめとする導入実績があり、「Citrix CloudStackが最も速く成長しているのは日本の市場」と強調した。

 一方、キング社長は、企業が直面しているのは、「モビリティの課題」、「企業向けクラウドの進化」、「クラウドサービスの構築」の3つであると指摘。さらに、東日本大震災以降、多くの企業がディザスタリカバリや事業継続計画(BCP)に対する関心を高め、新たなワークスタイルの模索、個人が所有するスマートフォンなどを業務に利用するBYODなど、クラウド利用、モバイル推進の流れにあることを示す。さらに、「PCの時代には、モバイル、ワイヤレス、クラウドといった要件はなかった」と前置きし、「PCの時代に非常識とされていたことが、クラウド時代の新しい常識になる。この世界において、モバイルからクラウドまで、エンド・トゥ・エンドで提供できるのはシトリックスだけである」などと語った。

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(大河原 克行)
2012/2/24 13:28