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東芝、データセンターなど大規模施設向けのUPSを活用した「需給調整市場」参入に向けた技術検証が完了

 株式会社東芝は27日、バーチャルパワープラント(VPP)関連サービスの新たなソリューションとして、データセンターなど大規模施設向けの無停電電源装置(UPS)が持つ電力の余力を「調整力」として、「需給調整市場」を通じて提供し、収益を上げるソリューション向けに開発中のUPSが、需給調整市場を運営する一般社団法人電力需給調整力取引所が取引規定の中で定める「運用時技術要件」を満たすことを確認したと発表した。今後、データセンターなど大規模施設でUPSを運用することを想定し、長期運用を含めた事業実証を東芝グループ内で行い、ソリューションの早期実用化を目指す。

 需給調整市場は、一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御・需給バランス調整を行うために必要となる「調整力」を調達するため、2021年4月に開設された。需給調整市場で扱われる調整力は、今後カーボンニュートラルに向け、気象条件によって出力が変動する太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのさらなる導入拡大に伴い、今後ますます価値が高まると見込まれている。さらに2024年4月から、10秒以内もしくは30秒以内といった短時間での応動が求められる「一次調整力」などの取引が新たに開始され、市場の活性化が期待されているという。

 UPSは本来の役割として、停電などの電源トラブルが発生した場合に、接続されている蓄電池を利用して施設内に設置された機器に高品質な電気を安定供給することで、重要な機器を停電や電力トラブルから守る電源システム。UPSはこれらの機器が必要とする最大の負荷電力にあわせて設計・設置されるため、電力容量的に余力を持つケースがある。

 この余力と充放電の応動が速いという特長により、UPSは一次調整力に適していると説明。国内のデータセンターなど多くの大規模施設に導入されている東芝インフラシステムズ株式会社の「TOSNICシリーズ」は、高効率・高信頼の大容量システムに対応したUPSで、東芝ではこれをベースに、需給調整市場向けの調整力として提供可能なUPSの開発を進めてきた。

 開発したUPSを用いた技術検証を、東芝インフラシステムズのインフラシステム技術開発センターと東芝の研究開発センターで実施し、運用時に求められる性能(周波数変動に応じた調整力の提供など)を達成したことを確認した。その結果、同UPSが需給調整市場向けの一次調整力として運用できる見込みを得たという。

 開発したUPSは、東芝製二次電池「SCiB」を搭載している。SCiBは、2万回を超えるサイクル寿命を持ち、繰り返し充放電することが可能。この特長は、需給調整市場への調整力提供に使用する蓄電池として優れていると説明。SCiBを搭載した東芝グループ製UPSに、外部からの充放電指令によりUPSの蓄電池を充放電するなどの市場取引に向けた機能を追加することで、調整力として活用することが可能になる見込みとしている。

 東芝では今後、東芝グループの研究開発新棟「イノベーション・パレット」で、データセンターなど大規模施設でUPSを運用することを想定し、長期運用を含む事業実証を進める。また、東芝エネルギーシステムズが展開するRA(リソースアグリゲーター:需要家側エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを集め、それらを制御してエネルギーサービスを提供する事業者)やAC(アグリゲーションコーディネーター:RAが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売り電気事業者と直接取引を行う事業者)などのVPP関連サービスとUPSを合わせて、需要家向けVPPソリューションのワンストップサービス提供を検討していくとしている。