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freeeが三井住友海上火災保険と提携、顧客向け保険サービスを拡充へ

 フリー株式会社(以下、freee)は25日、三井住友海上火災保険と業務提携し、2024年中にスモールビジネス向け統合型保険プラットフォーム「freee保険セレクト」を提供すると発表した。

 オンライン申し込みが可能で、利用者は自分のニーズに応じた商品を選択することができ、保障が限られている中小企業や個人事業主でも、大企業並みの補償制度の導入をサポートするという。またfreeeの各種プロダクトと連携し必要な保障をレコメンドすることや、保険金の受取、保険料の支払いの自動経理処理にも対応することを目指す。両社の提携は、エクスクルーシブなものではなく、それぞれが同業他社と提携する可能性もあるという。

統合型保険プラットフォームとして「freee保険セレクト」提供開始

 freeeの常務執行役員 CSO、武地健太氏は、「当社は会計が祖業ではあるが、会計にとどまらずに経営全体を支える、統合型の経営プラットフォームを提供する会社になっていきたいと考えている。freeeという1つのサービス上で、ビジネスのいろいろな業務、機能がシームレスにつながる、そして完結するような世界を目指していきたい。中小企業や個人事業主は、大企業に比べリスク対策が十分ではないという背景があり、今回業務提供させていただいた保険、共済といったリスクに対応する商品を提供していきたい」と今回の提携の背景を説明した。

フリー株式会社 常務執行役員CSO 武地健太氏

 一方、三井住友海上火災保険の執行役員 ビジネスデザイン部長、平野訓行氏は、「起業は我々の保険なしでも可能だが、起業した後、リスクに少しずつ気づいた時に、どこに相談したらいいのか、誰に聞けばいいのか、そういったことをどこで調べたらいいのか分からないといった話を、おしかりの声も含めて聞くことが多い。我々も一生懸命、代理店を通じ、さまざまな形で案内をしているつもりだが、どうしても、これまでの我々の販売ネットワークと今の環境変化がうまくマッチしきってないところもあるかと思っている。freeeと業務提携することで、我々にとっては新たな接点を持つ機会になる」と説明。リーチできていなかった新規顧客獲得窓口として期待するとしている。

三井住友海上火災保険株式会社 執行役員 ビジネスデザイン部長の平野訓行氏

 また、この事業を担当するfreee 保険事業責任者の土井啓夢氏は、「当社ではこれまでも、複数の保険商品を提供してきた。個人事業主向けには、医療やがん、所得保障などをセットにしたパッケージの保険を提供。会計のプレミアムプラン加入者向けには、そこに付帯された形で税務調査の専門の税理士が対応してくれるといった保証のサービスを、同じような形で法人向けには、税務調査の安心サポートというサービスを提供してきた」と、保険に対するこれまでの取り組みを説明。

 その上で、「freee保険セレクト」を提供するきっかけを、「こういった商品提供を通じ、さまざまなスモールビジネスの方々と対話を重ねる中、経営において何かが起きた時の対策への重要性はかなり高いと実感した。では我々に何ができるのかと考え、統合型保険プラットフォームとして、さまざまなfreeeのプロダクトとつながり、スモールビジネスユーザーに対し、保険・保証の提供ができないかなと構想を打ち立てた」と述べた。

フリー株式会社 保険事業責任者 土井啓夢氏

 freee保険セレクトの特徴は、1)オンライン上での商品の検索と申し込みができること、2)中小企業でも導入できる補償金・お見舞金など大企業並みの補償制度、3)利用する企業や個人がニーズに応じて保険・共済を選ぶことができるニーズに応じた商品選択、4)freee各種プロダクトの連携により、必要な補償をレコメンドや保険金受取・保険料支払の自動経理処理への対応――、の4点となる。

「freee保険セレクト」の特長

 このうち2024年の提供開始時に提供するのは、商品の検索・申し込み、保障制度の導入サポート、補償請求の受付、従業員の加入状況管理といった4つの機能だ。

「freee保険セレクト」2024年の提供開始時の特長

 freee保険セレクトに掲載される保険商品は、企業総合賠償責任保険「ビジネスプロテクター」、個人向け海外旅行保険「ネットde保険@とらべる」、個人向けゴルファー保険「ネットde保険@ごるふ」、個人向け自転車保険「ネットde保険@さいくる」、個人向け自動車保険「1DAY保険」の5つとなる。

2024年の提供開始時は5商品を掲載予定

 freee保険セレクトにより対象となるサポートとしては、各種見舞金などを支払う補償制度の導入支援を提供する。この制度を利用することで企業や事業者が、葬祭費用見舞金、住居災害見舞金、入院見舞金、出産祝い金、介護休業補償金、介護費用助成金、育児休業補償金、家事援助費用助成金などに合わせた福利厚生規定を簡単に作成できるようになる。

 さらに今後、保険相談サービス、小規模事業者向け総合賠償責任保険の提供を予定している。

補償制度導入サポート

 三井住友海上火災保険の平野執行役員は、「なぜfreeeと組んだかだが、まず企業向け保険の入り口での案内をしっかりしていきたいと考えた、ということが1つめの理由となる。さらに、今後目指していくのはやはりデータ連携だと思っている。データ連携することで、その企業の状態が今までよりも格段に理解できるようになり、保険の引き受け、アンダーライティングとしては相当高度にできると思っている。また、我々はこれまで伝統的な手法で、大企業の職域にお邪魔し、自動車保険からあらゆる保険を提供してきた。そのクラシカルな提供の仕方で果たして十分なのか?という課題感を持っていた」と説明。データ連携により、企業の実態把握、従来型セールス手法とは異なる顧客アプローチができる点がメリットと説明した。

 freeeの武地常務執行役員は、「今回のような保険提供は、我々が目指す経営プラットフォームを拡充していく中で、当社が提供しているのは会計プラットフォームでも、ソフトウェアプラットフォームでも、SaaSプラットフォームでもない。やはり経営を支援していくことが目標となる。創業時から業務を管理するソフトウェアに加え、取引支援、金融支援などを包括的に提供するという夢を持っていた。当社のお客さまであるスモールビジネスのオーナーの皆さんは、決してバックオフィス業務だけやっているのではなく、営業活動だけでもなく、リスク管理も含めいろいろなことをやっている。それを支援することが当社の取り組むべきことであり、競合との優位性にもなってくる」と保険提供の狙いを説明。経営プラットフォームを実現することで、顧客にとっての利便性が上がり、さらに企業とし優位性を確保することにつながると話した。