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理研数理、AWS上での稼働が可能となった「富岳」アプリケーション「GENESIS on AWS」の商用利用をサポート

 株式会社JSOLのグループ会社である株式会社理研数理は16日、Amazon Web Services(AWS)上での稼働が可能となった、スーパーコンピューター「富岳」のアプリケーションの一つである分子動力学ソフトウェア「GENESIS」について、民間企業などによる商用利用をサポートするサービスを12月1日に開始すると発表した。これは、富岳で開発されたアプリケーションとして、最初の大規模商用利用になるという。

 GENESISは、分子全体の動きをコンピューター上に再現できるアプリケーションで、生命科学や創薬などの分野のほか、高分子材料などさまざまな材料開発にも利用されている。オープンソースソフトウェアとして公開されており、ワークステーションなどでも利用することが可能だが、膨大な計算時間が必要となり、富岳を利用することで計算時間を大幅に短縮できる。

 一方で、富岳の利用は「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に基づき、利用促進業務を行う機関によって利用者選定の審査や報告書の提出が求められ、申請からアカウント発行までに、課題の種類によって数日から3カ月半程度の期間を要する。GENESISを利用する企業にとっては、その利用目的が機密情報に当たるものが多く、またスピードも求められるため、特に企業競争力に直結するような秘匿性の高い開発において、富岳の利用には一部課題があったという。

 こうした中、国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター(以下、R-CCS)は、富岳上で開発してきた研究成果であるシステムソフトウェアやアプリケーションを、クラウドサービスや他のスーパーコンピューターで誰もが直接利用できる環境を構築するといったクラウドの富岳化、いわゆる「バーチャル富岳」の実現に向けて取り組んでいる。これにより、より多くの企業・研究機関に対して、富岳を利用しやすい環境を整え、富岳ユーザーの拡大、技術の普及拡大、さらにこれらによるSociety 5.0の実現を目指している。

 「GENESIS on AWS」は、「バーチャル富岳」の提供に先行して、R-CCSが開発した分子動力学ソフトウェアGENESISのAWS上での稼働を実現したもの。R-CCSでは、高い秘匿性とスピードが求められる創薬・材料開発分野に対して、「バーチャル富岳」に先駆けて提供することは意義深いと判断し、先行提供を決定。理研数理が、GENESIS on AWSの商用利用をサポートする。

 理研数理は、企業・研究機関からの申し込みから最短1週間でAWSインスタンスを提供するほか、操作方法についても併せてサポートする。顧客は、GENESISをタイムリーに利用できるほか、利用内容を公開する必要がないため、スピードと高い秘匿性が求められる研究・開発業務において、これまでよりさらに利用しやすくなる。加えて、理研数理は理化学研究所をはじめとするアカデミアと長年にわたる信頼関係を有しており、顧客の研究・開発業務の高度化に向けて、研究者などによる技術指導や共同研究をコーディネートできるとしている。

 JSOLと理研数理はこれまで、科学シミュレーション分野において知見や技術を提供してきた。また、JSOLは2023年4月、理化学研究所から「2023 年度 Society 5.0 の実現に向けた『富岳』活用推進にかかる支援業務」を受託しており、研究者が持つ高度な研究シーズと民間企業のビジネスニーズを掛け合わせることで、Society 5.0の実現を目指していると説明。今後も、グループの総合力を生かし、高度な研究技術を用いて社会課題の解決に取り組んでいくとしている。