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富士通、ネットワークの設備更新を「デジタルアニーラ」で最適化する技術を開発

 富士通株式会社は8日、カナダ・トロント大学との共同研究において、富士通の量子インスパイアード技術「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer(以下、デジタルアニーラ)」を用いて、老朽化した広域ネットワーク設備を最新の光ネットワーク技術を用いた設備へと移行する、ネットワークのモダナイゼーションを最適化する検証を、2021年4月から2023年2月に実施し、有効性を確認したと発表した。ネットワークのモダナイゼーションに、量子インスパイアード技術を適用する取り組みは世界初になるという。

 富士通では、老朽化したネットワーク設備の故障リスクの増加を背景に、最新の光ネットワーク技術を用いた設備へ移行する、ネットワークのモダナイゼーションが米国を中心に活発化していると説明。サービスを停止せずに各地に点在する旧設備を撤去するためには、旧設備を利用する全ての回線を新設備へ切り替える必要があり、回線切り替え順序によっては数カ月から数年に及ぶ移行期間の後半まで、多くの旧設備を維持し続けることとなり、占有スペースや、電気、空調、メンテナンス費用などの多大な運用コストが発生する。

 また、回線を切り替えるには、回線が設置されている施設へ技術者を派遣する必要があり、切り替え順序によっては遠方施設へ何度も訪問が必要になるなど、旅費や人件費などの多大な移動コストが発生する。このため、移行作業期間の初期段階でより多くの旧設備を撤去でき、かつ技術者の移動コストを最小化できる、回線切り替え順序を見いだすことが極めて重要になる。

回線切り替え順序と設備運用コストの関係

 こうしたネットワーク設備の更新は以前から行われてきたが、その多くは、企業などの施設や敷地に設置された小規模なネットワークを対象としていたため、移行計画の策定は手作業で行われてきた。しかし、現在、移行が急務となっている、国や地域に広がる広域ネットワークでは、膨大な回線と設備が複雑に絡みあうため、回線切り替え順序の組み合わせは小規模な場合でも10の150乗以上になり、これらの組み合わせから最適なものを実用的な時間内に手作業で導き出すことは不可能だという。

 こうした課題に対し、富士通ではトロント大学Shahrokh Valaee教授のチームとの共同研究において、数十の設備と数百の回線が複雑に絡み合う複数の大規模ネットワークから組み合わせ最適化問題を導出し、デジタルアニーラを用いてコストを最小化する回線切り替えの順序を探索した。

 デジタルアニーラには、探索の対象となる変数を0か1で行列に配置した際、それぞれの行と列に1を取る変数が1つであるというルール(2way-1hot制約)を持つ最適化問題に対して、探索しなければいけない変数の組み合わせの数を大幅に削減し、高速に解を探索できる特長がある。

 そこで、データ表現形式を工夫することにより、2way-1hot制約を持つ最適化問題を導出した。これにより、デジタルアニーラの特長を生かした探索が可能となり、大幅な高速化を実現した。検証では、一般的な商用最適化ソフトウェアを用いた場合に比べて、移行期間中の旧設備の運用コストを最大30%削減し、技術者の移動コストを最大80%削減できることを確認した。

コスト削減の効果

 富士通は、ネットワークのモダナイゼーションで先行する北米市場向けに技術の提供準備を進めるとともに、さらなる研究開発を進めることで、あらゆる業界の新しい価値や競争力をデジタルアニーラで生み出し、スマートでサステナブルな産業社会の構築に貢献するとしている。