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日本郵船、自動車専用船の積み付け計画作成業務を効率化に向け「デジタルアニーラ」を導入

年間4000時間以上の労働時間の削減を実現

 富士通株式会社は3日、日本郵船株式会社が、自動車の積載台数や車種、寄港数などにより膨大な積み付けパターンが存在する、自動車専用船の積み付け計画作成業務の一部を自動化するため、膨大な組み合わせの中から高速に最適なものを導き出す、富士通株の量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を導入し、9月1日から実業務でのトライアル運用を開始したと発表した。

 日本郵船では、1隻の自動車専用船に数千台もの自動車を積載して、日本と世界各地を結び、グローバルな自動車輸送事業を展開している。

 自動車専用船の船内では、自動車を1台ずつ決められた間隔で、あらかじめ作成された積み付け計画に沿って積載しているが、例えば、最大積載数約7000台・フロア数12階の自動車専用船が、十数の港に寄港しながら車高や車幅が異なる60種類以上の車両の積み降ろしを行う場合、車両の積み付け方の候補数は、総当たりで計算すると10の2000乗通り以上にもなる。

 それら膨大なパターンの中から、船の最大積載量に近い積載率で車両を積み込むことや、積み降ろし作業時に安全に作業できる船内スペースを確保することなどの制約条件を満たした積み付け計画を作成することは非常に複雑な作業となる。

 従来は、専門のプランナーが経験を重ねながら、積み付けのパターンや配列法を習得して積み付け計画を作成していたが、プランナーごとの経験値や技量により積み付け計画の品質に個人差が生じることや、1隻あたりの計画作成時間が最大約6時間にも及ぶこと、急な状況の変化による積み付け計画の変更に多くの業務負荷が生じるといった問題があり、それらの解決が長年の課題となっていたという。

 この課題の解決のため、日本郵船では、量子現象に着想を得たデジタル回路で、現在の汎用コンピューターでは難しい、膨大な組み合わせの中から最適なものを高速に導き出すことができる、富士通のデジタルアニーラに着目し、積み付け計画作成業務に導入した。

システム概要図

 デジタルアニーラの導入にあたって、日本郵船の社内システムから積み込む車両のサイズや積み降ろす港の情報を取り込み、デジタルアニーラによって解を求めることにより、積み付け計画作成業務の中で最も重要な席割り作業(さまざまな条件を考慮し、車両の最適積載位置を計画する作業)を約、30分で自動的に完了させるシステムをクラウド上に構築した。

 導入前の実証実験では、このシステムを活用することにより、これまでベテランのプランナーが1隻あたり最大約6時間を要していた積み付け計画作成業務を、約2.5時間に短縮することを実現した。

 これにより、プランナーが積み付け計画作成に要する時間を年間4000時間以上削減でき、その効果として、意思決定の迅速化がもたらすビジネスチャンスの拡大が見込まれるとともに、急な計画変更へのより効率的な対応の実現や、プランナーの経験の違いによる、積み付け計画の品質のバラつきを抑えるなどの、大きな効果が見込まれるとしている。

 日本郵船と富士通は今後、トライアル運用の中でさらなる処理の高速化や出力結果の精度向上を図るなどのシステムのレベルアップを進め、2022年4月に本格運用の開始を目指す。さらに、荷役効率や本船の運航効率の向上を実現し、ソフトウェアイノベーションの側面から、自動車輸送事業における温室効果ガス排出の最小化を目指すとしている。