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米salesforce.com、IoTに最適化されたクラウドサービス「Salesforce 1」を発表
Dreamforce 2013基調講演レポート
(2013/11/20 13:00)
米salesforce.comは、同社のプライベートイベント「Dreamforce 2013」を開幕した。米国時間の2013年11月19日~21日までの3日間、米カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターにおいて開催される。
今年で11回目を迎えるDreamforce 2013には、経営者、ITプロフェッショナル、ビジネスパートナーなど、全世界から13万5000人が事前登録し、1250以上のセッションが実施されることになる。
開催初日の11月19日午前9時(米国時間)から行われた米salesforce.com 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏の基調講演では、「Welcome to The Internet of Customers(顧客のインターネット)」と題し、新たなクラウドプラットフォームである「Salesforce 1」を正式に発表。同社の最新状況のほか、2時間30分にわたって、最新事例を交えながら、Salesforce 1の詳細を説明した。
IoTに最適なクラウドサービス「Salesforce 1」
Salesforce 1は、モバイルデバイスへの対応を加速するとともに、Internet of Things(IoT)に最適化したクラウドサービスとし、これまでの同社のクラウドサービスを新たなフェーズへと進化させたものと位置づける。
登壇したベニオフCEOは、「今日ほど興奮していることはない」と前置きし、「コンピューティングの世界には第3の波が訪れている。それは、すべてのものがインターネットで接続されている時代である。そして、モバイル、ソーシャル、クラウドといった環境がこれを支えている。ソーシャルメディアで全世界で延べ45億人が利用している」とした。
また、IoTに関しては、「私は、フィリップスの歯ぶらしで歯を磨くが、その歯ぶらしが、Wi-Fiでつながり、GPSで場所もわかるようになっている。そして、ちゃんと歯を磨いているのか、いないのかがわかる。歯医者に行くと、なぜ、最近は歯を磨いていないのかと聞かれる。私は、日本に行くのに歯ぶらしを持って行くのを忘れたと言い訳することになる。このように、モノがインターネットにつながることで、新たな可能性が生まれる」としたほか、ポケットのなかから、キヤノンのコンパクトデジタルカメラ「PowerShot N」を取り出して、「このカメラは、インターネットにつながっている。一度これを使うと、ネットにつながっていないカメラは使えなくなる」などと具体例を説明。
モノがインターネットにつながることで、顧客に対するサービスが大きく変化するため、それに対する新たなインフラが求められていることを示した。
その上で、「Salesforce 1は、新たなカスタマープラットフォームである。1999年に開発したソフトウェアは、デスクトップやノートPC向けには最適だったが、いまは新たなデマンドがあり、それに向けて新たなユーザーインターフェイスが必要となっている。それを実現するのが、Salesforce 1であり、ブランド戦略の観点でもこの名称には大きな意味がある」などと述べた。
5つの観点で取り組む
続けて、Salesforce 1には、デベロッパー、ISV、エンドユーザー、アドミニストレータ、顧客という5つの観点からの取り組みが重要であると話す。
「新たな世代のプラットフォームが必要となるなかで、モバイルアプリを作るためには数多くのAPIが求められる。Salesforce 1では、iOS版およびAndroid版のモバイルアプリケーションを提供することになるが、これまでの10倍以上のAPIが必要であると考えており、コールメソッドも230をそろえている。また、ISVは、これらのアプリを活用してインテグレーションしたいと考えており、多くのISVと協力し、Salesforce 1で動作するようにした。またすべてのアプリケーションが、Salesforce 1ではカスタマイズできるようになっている。さらに、管理者向けのアプリケーションを用意した」などとした。
そして、「Salesforce 1は、あらゆるデバイス、あるゆるアプリが利用できる環境を整える。つまり、すべてのことができるようになる。そして、200万のAppExchangeのアプリ含めて、これまでの資産も継承することができる」などとした。
Salesforce 1の説明においては、共同創業者であるパーカー・ヘリス氏が、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドクに扮(ふん)して、最新のEVスポーツカー「ステラ」に乗って登場。「Salesforce 1は未来からやってきた」として、今後のクラウドサービスの方向性を示すとの姿勢を強調した。
また、基調講演では、Salesforce 1を先行活用し、成果をあげている事例として、フィリップス、ADPのほか、プレイステーション4を出荷したばかりのソニーをあげ、顧客を中心としたスマートフォン連携のマーケティング成果などを紹介した。
4種類のサービスを提供
Salesforce 1は、「Salesforce 1 Platform」、「Salesforce 1 Sales Cloud」、「Salesforce 1 Service Cloud」、「Salesforce 1 ExactTarget Marketing Cloud」が提供されることになる。
クラウド、モバイル、ソーシャル、コネクトの4つを網羅するプラットフォームがSalesforce 1 Platformだとし、ここにはForce.com、Heroku 1、ExactTarget Fuelを統合する。その上に、新たなSalesforce 1 Platform APIと、さらにその上にSalesforce Appを用意することになる。これにより、Sales Cloud、Service Cloud、ExactTarget Marketing Cloud、AppExchangeを提供することができるという。
Salesforce 1 Sales Cloudでは、Sales ConsoleやPardotを提供。Salesforce 1 ExactTarget Marketing Cloudは、マーケティングの自動化を実現することになり、1対1のマーケティングを可能にすると位置づけ、「もっともパワフルなデジタルマーケティングプラットフォームである」とした。
また、Dropbox、Evernote、Kenandy、LinkedInなどの大手ISV各社がSalesforce1 Customer Platform上でのサービスを提供。salesforce.comの既存ユーザーは、自動的にSalesforce1へとアップグレードされるという。
ベニオフCEOは、「みなさんは、カスタマーサービスに向けたボタンをちゃんとかけているか。salesforce.comは、株主、競合会社、パートナーのことを考えている会社ではない。お客さまのことだけを考えている。お客さまのことを知り、行動に移さなくてはいけない」などとした。
HPと共同開発したデータセンター向け製品「SUPERPOD」
基調講演のなかでは、新たに「SUPERPOD」が発表された。SUPERPODは、Hewlett-Packard(HP)と共同で開発した、マルチテナント型のソフトウェアサービスを運用するためのデータセンター向け製品。HPのメグ・ホイットマンCEOは、「世界有数のHPのコンバージドインフラストラクチャーがSUPERPOD。salesforce.comのインフラを当社が支えることになる。お互いの強みが発揮できる協業であり、顧客にとってもベストなサービスを選択できるメリットがある。従来は、マーケティングが、テクノロジービジネスにつながるとは思っていなかった。だが、どの分野もテクノロジービジネスの一部になっている。すばらしいタイミングでSUPERPODを投入できた」とした。
一方、salesforce.comは、2014年度第3四半期において、10億ドルの売上高をあげたこと、2015年度には50億ドルの売上高が視野に入っていることを示し、「これはわれわれが考えていた以上に高い成長を遂げている」とした。
また、ベニオフCEOは、同社の社会貢献についても説明し、サンフランシスコのUCSFベニオフ小児病院への取り組み、ハイチ大地震後の復興における支援などについて触れ、ゲストとして、俳優のショーン・ペン氏が駆けつけ、ハイチでの支援状況などについて説明した。
今回の基調講演は、Salesforce 1という新たなプラットフォームの説明が中心となった。
米salesforce.comは、これまで25社の企業買収を完了し、クラウドサービスを拡張してきたが、新たなブランドへと移行すること、それに伴いサービス体系を再構築することで、Salesforceの進化を強く印象づけたといえる。
今後、これらのサービスがどんな形で浸透するのか。また、サービス拡張がどんな勢いで加速するのかが注目される。