週刊海外テックWatch
Soraの失敗が示すもの Disneyとの「夢の提携」はなぜ崩れたか
2026年4月6日 11:34
「脇道のプロジェクトにそれるわけにはいかない」
危機感を募らせたのが、2025年8月にOpenAI初のアプリケーション部門CEOに就任したFidji Simo氏だった。かつてInstacartで広告事業を成功させてIPOを実現し、Facebook(現Meta)ではモバイル広告事業の立ち上げを主導した人物だ。
Simo氏は全社会議で「脇道のプロジェクトにそれて、この機会を逃すわけにはいかない」と発言したとBusiness Insiderは伝えている。数年内に控えるIPOと巨額の赤字という状況のなか、収益を生まないSoraを放置できなかったのだ。
WSJによると、OpenAIは次期AIモデル(開発コード名:Spud)のトレーニングを数週間後に控えており、コーディングやエンタープライズ向け製品を動かすための計算リソース確保が急務だった。「AIチップはあらゆる先端研究所にとって最も貴重なリソースで、SoraはOpenAIでその大半を消費していた」と同紙は当時の状況を伝えている。
Altman氏自身は、どう考えていたのか――。4月2日付のポッドキャスト「Mostly Human」(ジャーナリストのLaurie Segall氏がホスト、Sora終了発表の翌々日)に出演したAltman氏は、「生成動画は大好きだが、計算リソースを次世代の自動化製品に集中させる必要があった」と述べた。
さらに、ソーシャルメディアのようにユーザーの依存性で競争するビジネスは避けたかった、とも語っている。Soraの打ち切りは「非常に難しい判断だった」と認めながらも、その言葉には迷いよりも決断の色が濃かった。
OpenAIはSora終了の公表と同じ3月31日、1220億ドルの資金調達を発表し、初めて「AIスーパーアプリ」戦略に公式に言及した。WSJは3月19日付で既に、ChatGPT、コーディングAIのCodex、ブラウザーを統合した「統合型パーソナルエージェント」の開発計画を報じており、製品ポートフォリオの見直しにはAnthropicに押されているエンタープライズ市場での巻き返しを図る狙いもあるとしていた。Soraはまさにその整理の代表だった。
「AIで映画を作る夢」はいったん遠のいた。だが代わりに、AIがどこで、どう活用されるのかが明確に見え始めている。