週刊海外テックWatch
Soraの失敗が示すもの Disneyとの「夢の提携」はなぜ崩れたか
2026年4月6日 11:34
「1日100万ドルが消えた」
Soraのアプリは2025年9月に公開され、すぐにApp Storeのランキング首位に躍り出た。PCMagによれば、10月のダウンロード数は480万回、11月は610万回に達した。ところがその裏で、コストは膨らみ続けていた。WSJによると「Soraは1日あたり約100万ドルを失っていた」という。
映像生成というタスクの性質が、コスト増の根本的な原因だ。テキストを扱う言語モデルが「文字を書く作業」だとすれば、映像生成モデルは「映画のセット全体を毎秒作り直す作業」に等しい。動く世界全体を理解しなければならないため、計算コストは桁違いに高い。WSJは、ユーザーがプロンプトを書き込むたびに有限なAIチップのリソースが消費されていったと伝えている。
こうしたコスト構造の問題を、Soraを立ち上げた研究者自身も認識していた。SoraはUC Berkeley出身のTim Brooks氏とBill Peebles氏が2023年初頭にOpenAIに加入して立ち上げたプロジェクトだ。映像生成チームは「世界シミュレーションチーム」として、ChatGPTを擁するコア研究チームとは別個に機能しており、社内では「スタートアップの中のスタートアップ」とも呼ばれていたとWSJは伝える。
2024年春にはMetaによる大規模な引き抜きのターゲットとなったPeebles氏だが、Soraチームの責任者として引きとめられた経緯がある。そのPeebles氏自身がXに「パワーユーザーのSoraへの需要には驚かされているが、現在の経済性は完全に持続不可能だ」と投稿していたとBusiness Insiderは紹介している。
一方、ユーザーの実際の使われ方も期待を裏切るものだった。スコットランドのメディアThe Heraldのコラムニスト、Derek McArthur氏は「Soraはハリウッドを終わらせる存在になるはずだったが、結局はAI Slop(粗製乱造されるAI生成コンテンツ)の主要な発生源になった」と記し、「実際に使われたのはSNSでのエンゲージメント稼ぎを目的とした粗雑な動画の量産だった」と辛らつに評している。
マリオやピカチュウを使った動画が大量生成されるなど著作権保護の甘さや、政治的ディープフェイク動画への懸念もブランドを傷つけた。ユーザー数は最盛期の約100万人から50万人以下に落ち込んだ。