2010年の設備投資が70%増-Appleの次の“大きなこと”


 Appleが10月に発表した第4四半期(7-9月期)決算は、売上高が前年同期比25%増の98億7000万ドルと過去2番目、純利益は同47%増の16億7000万ドルで過去最高を記録した。不況下でも圧倒的な強さを示した同社だが、このほど明らかになった2010年の設備投資では、前年比70%増の19億ドルを計画しているという。Appleが次に何を狙っているのかに関心が集まっている。

 好調のけん引役は、「iPhone」と「MacBook」だ。同四半期にiPhoneは736万台、パソコンはMacBookを中心にデスクトップと合わせて300万台を売り上げた。ともに四半期ベースで過去最高という。一方、Apple再生のきっかけとなった「iPod」は減少に転じ、8%減だった。

 調査会社Caris&Companyのアナリスト、Rober Cihra氏は、Appleが米証券取引所委員会(SEC)に提出した業績報告書を精査。Appleが2010年の設備投資を前年比70%増の19億ドルと見込んでいる部分に着目し、「何か大きな計画がある」と予想している。

 Cihra氏は設備投資の内容について、「(Appleは)生産・製造プロセス機器の購入に言及している。これは、Appleが社内で製品や部品を組み立てようとする動きを示唆するものだ」と記している。

 同氏のもう1つの予想はデータセンターだ。Appleは今年、ノースキャロライナ州にデータセンターを新設する計画があることを認めている。センターの目的は明確になってはいないが、クラウドサービス「MobileMe」をはじめ「AppStore」「iTunes Store」などのサービス強化が考えられる。また、消費動向を受けて新規出店を控えていた直営店「Apple Store」の展開計画を進める可能性も十分にあるだろう。

 Cihra氏のリサーチノートを紹介したAll Things Digitalは、さらに独自の予想として「TVサービス」と「タブレット」の2つを挙げている。

 Appleはセットトップボックス「Apple TV」を出しているが、ヒットには至っていない。だが最近、AppleがサブスクリプションTVサービスに向けて動いているといううわさが浮上している。All Things Digitalによると、Appleは、iTunesなどのマルチメディアソフトウェア経由でTV番組視聴できるパッケージサービスに向け、放送局などと話し合いを進めているという。

 料金は月額30ドルと伝えられており、実現すれば既存のCATVや動作配信サービス「Hulu」などと競合する可能性がある。TVサブスクリプションについては、ほかにも「Apple TVや開発中とみられるタブレットなどのハードとはひも付けしない」(All Things Digitalなど)、「タブレットのキラーアプリにする狙いである」(Computerworldなど)の諸説があり、なお不明である。

 タブレット端末は以前から何度もうわさが浮上しているが、今回、注目されたきっかけは、The New York Timesの幹部が口にした「Apple Slate」という言葉だ。

 NYTの幹部は10月半ばの社内向けスピーチで、次のように述べたという。「われわれは、ジャーナリズムに合ったモバイルプラットフォームや端末を見つけ出す必要がある。Times Reader(「Adobe AIR」向けNYTリーダー)、iPhoneアプリ、WAP、間もなく登場する『Apple slate』や、その他、今後登場するものなどだ。これらによって、ニュースルームは、最高レベルのジャーナリズムを届けるという課題にもっと向き合うことができる」

 スピーチを取り上げたのはNieman Jounalism Labなどだが、“Apple slate”(slateは「石板」の意味)が製品名を指す固有名詞なのか、一般的な意味で言ったのかは実際のところ不明である。

 タブレットについては、おりからの電子書籍ブームとからめる見方もメディアでは浮上している。例えば、Wired.comは11月5日付のコラムで、これまでのCEOのSteve Jobs氏の傾向から考えて、タブレットでやろうとしていることはメディアではないかと予想している。Jobs氏は音楽、モバイルなどの既存業界に新規参入し、新しい形を示してきた。タブレットでは、苦境が続く新聞や雑誌などの出版業界に新風を起こすつもりではないか、というものだ。

 これらのうわさに対し、Apple側は例によって、一切コメントしていない。

 これらのうわさの真相はともかく、当分はAppleの絶好調が続くというのは衆目一致するところだ。Caris&Companyのアナリスト、Cihra氏は、年末商戦を含む2010年第1四半期(10-12月期)はiPhoneやMacの出荷台数がさらに増加すると見ている。Macは300万台を超え、iPhoneは1000万台に達すると予想されるという。



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(岡田陽子=Infostand)
2009/11/9 09:00