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中国が進める「NVIDIAの1000倍高速」戦略 アナログ技術でAI覇権に挑む

禁輸下での生き残り策 ソフトで補う半導体の遅れ

 ソフトウェアのFlex:aiとRRAMアナログチップは、技術的なアプローチこそ異なるが、その狙いは同じで、「AI演算の限界を突破し、エネルギー効率と処理性能を両立させる」ことだ。物理アナログがAI半導体の長期的な構造転換を支える“種まき”だとすれば、Flex:aiは即効性を発揮する戦略テクノロジーと言える。

 中国は現在、先端半導体の製造装置やNVIDIA GPUの輸入に制限を受けている。国内の半導体製造能力は、SMIC(中芯国際)の7nm(ナノメートル)プロセスが最高で、3nmを量産しているTSMCやSamsung Foundryにはとても及ばない。

 そんな中、Flex:aiは、既存のGPU上でソフトウェアによってアナログ的な挙動を再現するというユニークな方法で、リソースを最大限に利用することを狙う。

 また、この技術をオープンソース化して広めることで、中国独自のAI技術スタックを国際的に確立しようとする意図も見える。South China Morning Postは「NVIDIAへの依存度を引き下げ、米国の禁輸下で国産AI技術スタックを構築できるかもしれない」と伝えている。

 一方、NVIDIAも2024年、GPUリソースを最適化するオーケストレーションプラットフォーム「Run:ai」を買収(約7億ドルとも報道)している。

 11月25日付のTom's Hardwareは、Flex:aiが「(Run:aiと)理論上は同様の主張」としながらも、「中国製半導体、特にAscendチップを使用したクラスターとの広い関連」があるだろうと指摘する。中国発AIエコシステムを構築する重要なピースとなる可能性があるわけだ。

 ただし、Tom's Hardwareは「オープンソースコードはまだ公開されておらず、ドキュメントやベンチマークも発表されていない」と指摘し、依然として疑問点が多いとしている。