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中国が進める「NVIDIAの1000倍高速」戦略 アナログ技術でAI覇権に挑む
2025年12月8日 11:44
1940年代の技術が復活 アナログでAI演算
アナログコンピューターは、1940年代から60年代にかけて科学技術計算の分野で広く利用された技術だ。その後のデジタルコンピューターの台頭で主流から外れていったが、最近、再び脚光を浴びている。背景にはAIの需要拡大とエネルギー問題がある。
アナログ回路は、電圧の強弱という連続的な物理量をそのまま用いて計算を並列実行できるため、膨大な行列演算を行うAIと相性がよい。また、データをメモリ上で直接処理する「インメモリコンピューティング(IMC)」を実装する基盤としても有力だ。
従来のデジタル方式では、演算装置とメモリが分離され、狭いバスを通じてデータが行き来しているのに対して、アナログ方式ではメモリ内で直接計算を行う。これによって高速かつ低消費電力が可能となる。
北京大学のRRAMアナログチップは、この分野の最先端の研究成果だ。アナログ方式では本来精度確保が難しいとされてきたが、今回の北京大学チームの実験では、特定の演算タスクにおいては、デジタル方式と同等の精度を得られたという。
中国は国家としてアナログコンピューターの研究を支援している。2023年には清華大学が「ACCEL (All-analog Chip Combining Electronic and Light Computing)」と呼ぶ光学アナログコンピューティングチップを発表している。このときは「NVIDIA A100の3.7倍以上の性能」との触れ込みで、業界の注目を集めた。
しかし、アナログAIコンピューターはまだ実験室段階であり、実用化には多くのハードルが残る。中国は、米国との競争の中で、すぐにでも使える技術を欲している。