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米政府 vs 技術企業 メッセンジャーデータ提供をめぐる攻防

「政府の負け試合」?

 AppleやMicrosoftと政府の争いをCNetは「技術企業対米国政府」とし、2年前、元CIA職員Edward Snowden氏が米国家安全保障局(NSA)など米政府によるネット盗聴を暴露したことから来た「不可避の結果」と見立てている。

 技術企業は疑心を抱くユーザーの側につく姿勢を見せている。これについてThe Guardian「これまで技術企業がわれわれのプライバシーを侵害すると思っていたが、現在の情勢をみると、実際には技術企業はユーザーのプライベート情報を一生懸命守ってくれている」と評価している。

 メディアは政府のゴリ押しを危険視する。Cook氏の意見のように、鍵を渡すことはハッカーにチャンスをもたらす。また、技術企業に対し政府がアクセスできるようなシステム設計を求めた場合、これら技術企業は中国やロシアなど他国の要求にも応じることができる、とCNetは指摘する。The Guardianは「サイバーセキュリティが重大な問題となる中、どうして政府はサイバーセキュリティを弱めようとするのか」と批判する。

 The Guardianはさらに厳しく、米政府の要求は同国のサイバーセキュリティを脅かすだけでなく、プライバシー、さらには米経済にも悪影響をもたらしかねないと警告。この対立を、「政府の負け試合」と決めつけている。

 犯罪につながるダイレクトな情報を手に入れたい当局と、さまざまな理由から拒否する技術企業。新しいコミュニケーション手段が生まれるごとに、この問題は浮上してくる。両者の攻防の行方が、ユーザーに大きな影響を与えることを忘れてはならないだろう。

岡田陽子=Infostand