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「デジタルエンタープライズ」を推進 Boxのプラットフォーム戦略

競合との差別化は?

 デジタルエンタープライズの柱は、(1)従来とは異なる使い勝手やシンプルさを持ったエンドユーザー向けアプリケーション(2)セキュリティの組み込み――である。New York Timesは、これを「チャンスであると同時に、必要に迫られた動き」と分析する。つまり、競合との差別化を図るために必須ということだ。

 オンラインストレージ界には、コンシューマーに人気のDropboxがあり、エンタープライズでもパブリッククラウド最大手のAmazon Web Servicesが2014年に「Zocalo」を発表。GoogleやMicrosoftなどエンタープライズ向けクラウドベンダーも、この分野に拡大している。特に価格競争を得意とするAWSは無視できない存在だ。

 BoxはNew York Timesに対し、「AWSの機能をコピーするのは不可能だ。価格競争になる」と述べている。同時に、AWSの弱みも挙げ、「Amazonは解決すべき複雑性がたくさんある。Boxはコンテンツ周りで、検索、容易に管理できる暗号化、あらゆるコンテンツを閲覧できるプレビューなどを備えており、これは強みとなっている」とコメントしている。

 Cloud Techは、Boxが投資家の期待する成長を達成できるか否かとは関係なく、サブスクリプションというBoxのビジネスを評価する。Boxはほかのエンタープライズ向けクラウドベンダーと同様にサブスクリプションをビジネスモデルとしているが、これにはオンプレミスとは異なる定期的な収益と予測性、製品の改善や新機能を継続的に提供することで競合優位性などのメリットがあるとする。

 Wall Street JournalはBoxの戦略発表に合わせ、CEOのAaron氏と共同設立者でCFOのDylan Smith氏のこれまでの軌跡を紹介している。Smith氏がオンラインポーカーで稼いだ2万ドルを投資してLevie氏の叔父のガレージで始めたというBoxは、Levie氏にとって、11のアイデアに失敗した後の挑戦という。

 Citrixから持ちかけられた買収、IPOの延期などをたどりながらLevie氏は、この1年は「人生で最も難しい年だった」と振り返っている。そして、「市場や懐疑的な見方をコントロールすることはできないが、長期的なミッションにフォーカスして、気を散らさず前進しなければならない」とLevie氏は言う。

 クラウド時代の中でBoxはどうやって生き残っていくのか。「デジタルエンタープライズ」は決め手になるのだろうか――。

岡田陽子=Infostand