特別企画
京都プロメドの遠隔画像診断を支える“おまかせ型”VPN「オールインワンネットワーク」BtoBtoBモデルの、Win-Win-Winな事例
(2014/9/29 06:00)
京都プロメド株式会社(以下、京都プロメド)は、全国の医療機関で撮影されたMRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed Tomography)の画像をもとに、ネットワークを介して遠隔画像診断するサービスを営んでいる。そのための、医療機関との間を結ぶネットワークに、NTT西日本の「Bizひかりクラウド オールインワンネットワーク」(以下、オールインワンネットワーク)を採用した。
全国と結んで医用画像を扱うために必要な条件と、そこでオールインワンネットワークを選んだ理由について、話を聞いた。
遠隔画像診断を通じ、地域医療の質向上への貢献をめざす京都プロメドの取り組み
医療機関がエックス線やMRI、CTなどで撮影した人体内の画像は、放射線科医という専門の医師が見て診断し、レポートする。理想的には、各医療機関に専任の放射線科医がいて、"読影(radiologic interpretations)"にあたるのが望ましい。
しかし実際には、放射線科医の数が不足しているだけでなく、勤務している地域も偏在しているという。「特に日本では、機器の台数が多い一方で放射線科医が少なく、『機器はあっても、的確に診断できる人が少ない』という大きなミスマッチがあります。都市部には医師がいても、地方には少ないというように、医療の質が偏ってしまっているのです」と、京都プロメドの代表取締役社長 画像診断センター長で、自らも放射線科医である河上聡氏は現状を解説する。
専任の放射線科医がいなかったとしても、読影の必要性は変わらないため、多くの医療機関、特に地方の医療機関では、放射線科医が非常勤で週1回程度現地に行って読影したり、フィルムで郵送してもらって診断したり、といった方法をとっている。「そうなると、放射線科医が訪問するタイミングによっては、撮影してから診断まで1週間かかる場合もあります」(河上氏)。
こうした状況が変わる1つの転機は、河上氏が彦根市立病院にいた2005年だった。画像診断の応援として、彦根市立病院と京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)とを地域ネットワークで直接つなぎ、彦根市立病院側にある画像サーバーに京大病院からアクセスして、遠隔で画像診断する環境を構築した。
「それ以前は、回線速度の問題がありました。しかし、京都に『京都デジタル疎水』、滋賀県に『びわ湖情報ハイウェイ』という自治体運営のネットワークがあり、両者を使って彦根市立病院と京大病院を結んだところ、院内のLANと同じような速度でアクセスでき、『その場にいなくても診断できる』と衝撃を受けました」(河上氏)。
そこで河上氏らは、2007年に、遠隔診断を通じた地域医療の質向上への貢献を目的に京都プロメドを設立した。京都プロメドでは、契約する医療機関とデータセンターをIP-VPNの回線で結び、画像をデータセンターに保存。データセンターとネットワークで結んだ京都プロメドの読影室内で放射線科医がデータセンターに保存した画像を診断するサービスを提供している。
同社は京都大学医局員の外勤先となっている。「現在、日本では、医療機器の画質や撮影する技師のレベルには全国でほとんど差はありません。遠隔診断で読影医偏在の問題を解消できれば、京大病院とほぼ同等レベルの検査を全国どこにいても受けられます。さらに緊急性が高い場合には、当社では受け付け時間内であれば、全国の医療機関からの依頼に対し、1時間くらいで診断が可能です」(河上氏)。
さらに、リアルタイムで医療機関の主治医と放射線科医が画像を共有し確認できるため、診断の疑問点などを電話で話しながら議論する、といったことも可能になった。主治医による患者についての補足情報により、画像の見方が変わって、当初の所見が変わってくることもありうるという。逆に、当初、医療機関側で気づかなかったくも膜下出血の兆候を遠隔読影で発見・指摘し、緊急対応をとる、といったケースもある。「医療機関内と同じような『リモートの読影室』をめざしました」と河上氏は語る。
全部任せられるワンストップ型のネットワークサービスが欲しい!
こうしてスタートした京都プロメドの遠隔読影事業だが、サービスを利用するためには、データセンターと医療機関を接続するネットワークが必要になる。当初、その部分はNTT西日本のサービスではなく、他社のネットワークサービスを中心に利用していた。
ネットワーク回線はIP-VPNを利用するケースが多かったものの、採用していたネットワークサービスの提供事業者が関西ローカルのため、サービス提供が出来ず、一部地域ではインターネットVPNを利用するなど、さまざまな回線を用いて医療機関とデータセンターを接続していた。このため、つぎはぎのような構成になっていたという。
また、ルーターの手配や保守は別途行わなければならなかった。アクセス回線は医療機関が、ルーターは京都プロメドが契約して保守するとなると、医療機関の拠点追加をするだけでも大変だ。「システムエンジニアが居たとしても、すべての人がネットワークの専門家ではないので、専門知識があるわけではありません。当社のような小さな企業にとって、ネットワークの手配やサポートは大きな負担になっていました」(河上氏)。
京都プロメドの抱えていたネットワークの負担は、2012年、NTT西日本がオールインワンネットワークを提供開始したことで大きな転機を迎える。オールインワンネットワークは、IP-VPNサービスの「フレッツ・VPN ワイド」に、アクセス回線の「フレッツ光ネクスト」、アクセス回線につなぐためのルーターのレンタルと運用保守がひとつになったサービスだ。つまり、IP-VPNに必要な回線、機材の運用保守を、NTT西日本がワンストップで請け負う。
「それまでも、『こういうワンストップ型のネットワークサービスの提供はできないか』とNTT西日本に話をしていました。2012年に営業担当者から『できるようになりました』と提案を受け、検討をしたところ、我々のニーズをすべて満たすサービスであり、かつ価格も安かったので、早速採用することにしました。この2年間で医療機関側のネットワーク回線の9割以上はオールインワンネットワークにしました」と河上氏。「新しい医療機関と接続する時は、すべてオールインワンネットワークにしています」。
当時NTT西日本京都支店で営業を担当していた札埜寛士氏(現:NTT西日本ビジネス営業本部 ネットワーク営業推進部)も、「河上先生が困っているという話は聞いていましたが、当時は、ルーターのレンタルや保守まで含んだサービスはなく、提案できていませんでした。そこに、まさにニーズにピッタリとあったサービスを提供できるようになったので、すぐにご提案をしました」と振り返る。
なお、オールインワンネットワークはNTT西日本のサービスだが、東北地方など東日本地域にある医療機関も、NTTグループのネットワークサービスを利用して、データセンターにつなぎ、一元的に対応している。
オールインワン導入で心理的な負担は大幅に削減!
こうしてネットワークの運用保守が一本化され、すべてNTT西日本に任せられるということが、京都プロメドにとって、なによりの大きなメリットになった。
従来、複数のサービスを組み合わせて運用をしていた時は、接続が切れたなどの"ネットワークインフラ"のトラブルが発生した際、回線が悪いのか、ルーターが悪いのか、といった障害個所を京都プロメド側で切り分け、それぞれのサービス提供窓口に連絡をしなければならなかった。
電話ですぐに障害個所が判明すればよいが、わからなければ直接医療機関に駆けつけ、回線に問題があるとわかればここでようやく通信事業者に連絡し、対応を依頼する、ということになる。非常に離れた場所にある医療機関でトラブルが発生した場合、解決まで数日かかることもあったという。京都プロメドの担当者はこれらの対応を1人で実施していた。1人で日本全国の契約先のネットワークインフラを含めたサポートするのは大変だ。
そうした状況が、オールインワンネットワークへの移行によって激変した。なんらかの障害が発生した場合、一次対応は京都プロメドが受けるが、NTT西日本のサポートは24時間の受け付け体制(故障駆けつけは9:00~17:00、オプション契約により24時間駆けつけ可能)を整えており、西日本各地を網羅した保守部門が、ルーターからアクセス回線、IP-VPNまでワンストップで対応する。
「医療情報ですから、復旧が1週間後になります、では困るのです。その点、オールインワンネットワークでは、NTT西日本がルーターまで面倒見てくれ、同じサービスの質を継続してくれる。ネットワーク対応に大きくリソースを割けない当社にとっては、本当に助かります。以前、他社の回線を使っていた時には、回線やルーターのトラブルも多く、その対応に追われていました。いまはNTT西日本が迅速に対応してくれますし、そもそもトラブルが少ないので、病院からのクレームもなく安心しています。心理的な負担は大幅に下がったと言っていいでしょう(笑)」(河上氏)。
「当社では、読影室に放射線科医が集まり、それぞれが各担当ブースに設置されたPCを使い遠隔読影をしています。そのため、画像をストレスなく見られるネットワーク回線は大切です。また、ネットワーク回線の維持・運用に振り回されず、本業である画像診断に集中できることは、とても重要なことです」と河上氏は語る。
京都プロメドではこのようなメリットを評価し、新規契約はもちろんのこと、前述のように既存顧客(医療機関)とデータセンターを結ぶネットワーク回線もオールインワンネットワークへ移行させた。とはいえ、回線は京都プロメドにとってあくまでサービスの"足回り"であり、コストが高くなっては、医療機関に入れ替えを認めてもらうのも難しい。
これについて河上氏は「他社のIP-VPNを利用していた医療機関は、オールインワンネットワークに切り替えたことで、コストが下がりました。また、インターネットVPNからオールインワンネットワークへ切り替えた場合でも、ルーターの保守費やプロバイダ費用を含めると同じぐらい。トータルでは、コストを削減したといえるでしょう。それでいて、回線のサービス品質も良くなっています」と答える。サービス面だけでなく、コスト面でも、十分に納得させるだけの価格を提供できているのだ。
なお、医療情報は、決して外部に流出させてはいけない大事な情報だ。そのため、放射線科医が集まる日本放射線科専門医会・医会(JCR)でも、遠隔画像診断に関するガイドラインを制定しており、その中で、「画像の送信、報告の通信については、VPNなどによる暗号化通信が必要」と定めている。
オールインワンネットワークは、インターネットを経由しないIP-VPNのため、もともとのセキュリティーも高いが、京都プロメドのサービスで利用する場合は、さらに暗号化を行ってセキュリティーを高め、上記ガイドラインに準拠するようにしている。
「医療機関にとっては、ネットワークコストはできるだけ削減したいところですが、医療情報ですから、セキュリティーも確保しなければならないジレンマがあります。オールインワンネットワークではセキュリティーの確保、コストと品質の両立という問題を解決することができました」(河上氏)。セキュリティーが求められ、かつ大容量のデータを扱う医用画像用のネットワークとしても、オールインワンネットワークは、十分なパフォーマンスが出せるネットワークとして活用されていることが、河上氏の言葉からも分かる。
また、河上氏はNTT西日本の提案力を高く評価している。「データセンター側で他社のネットワーク回線を利用していた時は、回線速度が大幅に遅くなって業務に支障をきたす事象が頻発しましたが、なかなか事象が改善しませんでした。NTT西日本に相談をしたところ、解決策を提示してくれたので、NTT西日本のネットワーク回線へ切り替え、事象を解決することが出来ました。NTT西日本には、単に"線をつなぐ"だけでなく、当社の課題に対して適切なネットワークを提案・設計していただきました」(河上氏)。NTT西日本の札埜氏はこの件について、「トラフィックを分散可能なネットワーク構成をご提案し、特定のゾーンに負荷が集中しないようにしました」と説明してくれた。
Win-Win-WinのBtoBtoBモデルを構築
河上氏は、京都プロメドを設立する前から、NTT西日本の社員と個人的な交流があり、ネットワーク等の技術的な相談をしていたという。「その後しばらくお付き合いが途絶えていたのですが、会社を創設してしばらくしてから、実はNTT西日本の医療担当になりましたと連絡をいただきました。偶然のことで驚きましたが、これをきっかけに従来の個人と個人のお付き合いから、会社としてのお付き合いに広がっていきました」と河上氏。オールインワンネットワークの導入を通じて、「関係がしだいに強くなっていった」とNTT西日本ビジネス営業本部で医療ビジネスを担当する鬼武克行氏も、そう感想を語った。
現在では、新たに遠隔画像診断サービスの利用を希望する医療機関に対し、京都プロメドが遠隔画像診断サービスとセットでNTT西日本のオールインワンネットワークの紹介をしている。京都プロメドがオールインワンネットワークの申し込みを受け付け、月々の料金も、画像診断のサービスにネットワークの料金を合わせ、一本化し請求している。
医療機関側は遠隔画像診断サービスとネットワークサービスごとに契約を締結する必要がなく、事務手続きを省力化できるメリットがあり、万が一トラブルがあった場合も一社に連絡をすればよい。京都プロメド側はネットワークをNTT西日本のオールインワンネットワークにしてもらうことで、医療機関に安心して自社サービスを利用してもらえるメリットがあり、また、運用保守をNTT西日本に任せることが出来、自社の強みである遠隔画像診断サービスに注力することが出来る。NTT西日本もオールインワンネットワークの販売を促進できるという、BtoBtoBの、Win-Win-Winな関係が構築できているのだ。
「医療機関に遠隔画像診断サービスを最初にご紹介する際に、ネットワークの仕組みについて詳細に説明をするのは、ネットワークが専門ではない当社にとっては大変です。しかし、現在では『ネットワークの構築から保守まで、すべてNTT西日本がやってくれます』と言えば病院側も納得してもらえます」と河上氏。医療機関側にとってもNTT西日本の持つ信頼のブランド力は大きいようだ。
現在、京都プロメドと遠隔画像診断サービスの契約をしている医療機関は60弱。多くはオールインワンネットワークへの切り替えが終了しているが、今後、京都プロメドはすべての回線をオールインワンネットワークに切り替えていく方針だ。
「通信最大手のNTT西日本に、人の動きも含めて相談できるというのは、極めて心強く安心感が高いものです。欲をいえば、回線の開通がもっと早くなると、サービス利用までの期間が短縮できますから、うれしいですね」と河上氏は語る。
ビジネスを通じて信頼関係を積み重ねていった京都プロメドとNTT西日本の関係は、現在はビジネスパートナーとしての関係にさらに発展しつつある。「NTT西日本は、京都プロメド様から医療情報システム事業者をご紹介していただき、その紹介をきっかけにNTT西日本と新たなビジネスを共創しようとする試みもすでに行われています。また、京都プロメド様が、遠隔医療診断サービスを営む同業他社に対して、NTT西日本のオールインワンネットワークをご紹介していただくケースもあります」とNTT西日本京都支店で営業を担当する井戸和馬氏は説明してくれた。
これについて河上氏は、「ネットワークを使った医療はこれからも必要です。NTT西日本が、当社との付き合いの中で実績を得てくれれば、社会全体がいい方向に向かうでしょう」と話す。またNTT西日本の鬼武氏も、「河上先生が新たなサービスを模索・検討される際には、NTT西日本も一緒に検討に参加させていただいてます。また、京都プロメド様とお付き合いのある関連SI事業者を当社にご紹介していただくなど、ビジネスを通じて横のつながりが増えていくのは本当ありがたいことです。NTT西日本の医療担当として、優れた事例はどんどん業界内に展開したいですし、それが医療業界、ならびに社会全体に貢献できれば、と思います。京都プロメド様とは今後も理想的な形を作りながら、良好な関係を続けていきたいと思います」と述べた。
医療格差の解消のため遠隔画像診断サービスを営む京都プロメドと、ネットワークサービスを広く展開しているNTT西日本。両社のビジネスの融合が、さらなる広がりを持って日本の医療ビジネスの活性化と、ひいては社会全体への貢献につながっていくことを期待したい。
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NTT西日本が提供するオールインワンネットワークは、IP-VPNと、足回りとしてのアクセス回線、そしてルーター機器のレンタルと運用監視といった通信ネットワークで必要とされる要素を、まさにオールインワンで提供するサービスだ。
2社の事例を実際に取材してみて、この"オールインワン"という要素が、実は市場において非常に求められていたサービスだ、ということがわかった。企業規模の大小や拠点数の多寡にかかわらず、通信ネットワークに関するIT部門の負担を軽減し、企業が本業に専念できるようにするにはピッタリなサービスだろう。
また、自社だけで導入するだけでなく、新しいビジネスを"共創"していく際にも適したサービスだといえる。導入から運用保守までを一貫してNTT西日本がサポートしてくれるので、京都プロメドのようにIT担当者が少ない企業であっても、NTT西日本との協力により、安心して通信ネットワークをパートナーやお客さまに勧めることができるからだ。こうしたBtoBtoBモデルでの活用も、今後さらに進んでくるのではないか。
クラウド時代になり、社外のサービスを積極的に活用するようになったことで、通信ネットワークが果たす"縁の下の力持ち"的な役割はますます大きくなった。企業が安心してビジネスに打ち込むためにも、ネットワークは止まってはならない存在だ。NTT西日本のサポート力が生きてくるオールインワンネットワークは、そうしたクラウド時代に最適なネットワークサービスといえる。