特別企画

NAND型フラッシュメモリの生みの親 東芝に聞く エンタープライズ向けSSD製品の最新動向と将来に向けた取り組み【前編】

 NAND型フラッシュメモリは、PC、タブレット、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラなど、さまざまなエレクトロニクス製品を支える大容量のストレージ部品として広く採用されている。また、半導体チップならではの優れたデータ転送性能を生かし、従来のハードディスクドライブ(HDD)に代わる高性能ストレージとして、企業のさまざまな業務システムやクラウド基盤などでも採用が進んでいる。

 フラッシュメモリの歴史をたどると、その原点は東芝にある。フラッシュメモリの基礎技術は東芝によって発明され、1987年に世界で初めてNAND型フラッシュメモリの基本構造を発表している。現在、同社は四日市工場(三重県四日市市)においてメモリチップの量産を行うとともに、近年ではコンシューマからエンタープライズまで幅広いセグメントを対象とする多種多様なSSD製品を発売するようになった。

 今回は、特に業務システムやデータセンター向けに設計されたエンタープライズSSDに焦点を当て、SSD市場に対する同社の取り組み、製品ラインアップとその特長、将来の展望などを取り上げていく。また、自社のOpenStack基盤で東芝製エンタープライズSSDを実際に活用しているGMOインターネット株式会社にも取材協力を仰ぎ、東芝製エンタープライズSSDの強みをユーザーの目線から語っていただいた。

フラッシュメモリを発明した東芝、国内の四日市工場でチップを量産

 東芝は、次世代を担う新しいタイプの半導体メモリとして、1984年に一括消去型不揮発性メモリを世界で初めて開発し、それを「フラッシュメモリ」と命名した。1987年には世界初となるNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND型フラッシュ)の基本構造を発表し、フラッシュメモリの普及を促進する目的から1991年にNAND型フラッシュの仕様も公開している。

 そして、NAND型フラッシュの生産拠点として知られる同社の四日市工場(三重県四日市市)は、半導体チップの生産拠点として1992年に設立された。開設当初は主にDRAMチップの生産を行っていたが、2002年以降はNAND型フラッシュの生産や次世代半導体技術の研究・開発を手がけるようになった。

 四日市工場にとって大きな追い風となったのが、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の爆発的な普及だった。これにより、NAND型フラッシュの市場規模が一気に拡大し、2005年には第3製造棟、2007年には第4製造棟、2011年には第5製造棟を稼働させるなど、四日市工場でも増産体制を段階的に強化してきた。四日市工場は、このようなNAND型フラッシュ市場の急伸を受け、2011年9月にはNAND型フラッシュ累計(1GB換算)100億個の製造を達成している。

 また、東芝とフラッシュメモリの製造ジョイントベンチャーを組むSanDiskが発売するストレージ製品のNAND型フラッシュも、四日市工場で製造されている。2015年の実績によれば、東芝とSanDiskの連合によるNAND型フラッシュ出荷総容量は世界トップレベルとなっている。

東芝 セミコンダクター&ストレージ社 四日市工場の外観(写真は東芝による提供)。2016年3月現在で5つの製造棟が稼働している。NAND型フラッシュ市場の急伸を受け、2011年9月にはNAND型フラッシュ累計(1GB換算)100億個の製造を達成している

あらゆる形状・インターフェイスのHDD/SSDを1社で手がけている東芝

 東芝の社内カンパニーであるセミコンダクター&ストレージ社は、同社の主力事業である電子デバイス事業において、半導体製品やストレージ製品の製造・販売を一手に担っている。

 2016年3月時点では、ノートPCやデスクトップPCに適したクライアントHDD、ノートPCやタブレットなどを対象とするクライアントSSD、HDDとNAND型フラッシュを組み合わせたクライアントSSHD、サーバーシステムや大規模ストレージ装置向けのエンタープライズHDDやエンタープライズSSDを提供している。

 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術第二部 ストレージプロダクツ応用技術第三担当 グループ長の中島賢司氏は、「当社は、2009年に富士通のHDD事業を取り込みましたが、それによってエンタープライズ分野のストレージ技術や製品に関する数多くのノウハウを取得しました。それが、現在のような充実した製品ラインアップにつながった原動力にもなっています。多くのドライブベンダーは、複数のベンダー同士の業務提携によって製品ラインアップの拡充を図っていますが、東芝はこうした幅広い製品ラインアップをたったの1社で網羅できています」と説明する。

 そして、特にSSD製品に関してコンシューマ向けとエンタープライズ向けの両製品を横断してみると、東芝が手がけるSSD製品の形状やインターフェイスが極めて幅広いこともよく分かる。

 SSDの形状は、HDDのフォームファクタを踏襲した2.5インチSFF(Small Form Factor)タイプのほか、PCI Express接続の拡張カード(Add-in Card)タイプ、モバイルクライアントへの搭載に適した小型のmSATAモジュールタイプやM.2モジュールタイプ、わずか1グラムで16mm×20mmという省スペースを実現したシングルパッケージSSD(BGAタイプ) などがある。特にシングルパッケージSSDは、半導体チップそのものを製造している東芝だからこそ製品化できた形状といえよう。

 そして、SSDとホスト間を結ぶインターフェイスに関しては、定番のSATA Gen.3(最大信号レート 6Gbps)やSAS Gen.3(最大信号レート 12Gbps、デュアルポートにも対応)のほか、さらに高速なデータ転送を実現するPCI Express Gen.3(NVM Express準拠)も新たに加わった。

株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術第二部 ストレージプロダクツ応用技術第三担当 グループ長の中島賢司氏
東芝が提供しているSSDのさまざまなフォームファクタ(出典:東芝提供による資料)。磁気ディスクと磁気ヘッドの存在によってドライブ形状そのものが束縛されるHDDと異なり、半導体チップから構成されるSSDは形状の設計に大きな自由度がある。東芝は、こうしたSSDならではの自由度を最大限に生かした製品ラインアップをとっている

NAND型フラッシュとSSDコントローラの双方を自社で開発・製造

 東芝グループ全体の総売上は2014年度で約6兆円だったが、そのうちNAND型フラッシュやSSDのビジネスを含む電子デバイス部門は約1.8兆円の売上規模となっている。現在、ストレージの市場そのものは売上ベースで年率5%以上の成長を遂げているが、特に高スループット・低レイテンシの高性能ストレージが強く求められている現状において、エンタープライズSSDの伸びしろがかなり大きいことは想像に難くない。

 東芝は、こうしたストレージ市場の最新動向を踏まえた上で、近年ではエンタープライズSSDに注力するビジネス戦略をとっている。とはいえ、エンタープライズ特化型のSSDは各社からすでに発売され、単にエンタープライズ向けと銘打って製品を投入するだけでは不十分だ。このため、東芝はエンタープライズ領域のあらゆるニーズを真剣に考え抜き、十二分な付加価値を作り上げた上でエンタープライズSSDを展開している。それは、ドライブ自身の性能、機能、信頼性などを支える設計・製造という観点のみならず、顧客へのサポート体制も含めたトータルでの取り組みである。

 同社では、コンシューマ向けモデルとエンタープライズ向けモデルの双方を手がけているが、コンシューマ向けのモデルにはない高信頼のための機能として、ドライブレベルで実装されたパワーロスプロテクション機能や暗号化機能などがある。パワーロスプロテクション機能は、SSD内にキャパシタを搭載し、このキャパシタに充電された電力を使うことで、万が一突然電源が切断された場合にもNAND型フラッシュへのデータ書き込みを確実に完了させる機構だ。

 また、SSDを構成するNAND型フラッシュとSSDコントローラの双方を自社で開発・製造している点も東芝の大きな強みである。

 SSDは、電子基板の上に数多くの半導体チップを搭載した典型的なエレクトロニクス製品であり、大がかりな研究施設と生産工場の保有が求められるHDDと異なり、SSDのビジネスに参入する際の敷居はかなり低い。だからこそ、数え切れないほどのベンダーがSSDを手がけ、市場もまた爆発的に広がったわけだが、裏を返せば多くのベンダーはNAND型フラッシュとSSDコントローラを、例えば東芝のような外部のチップベンダーから購入することで、自社のSSD製品を成り立たせていることにもなる。

 東芝は、古くからNAND型フラッシュを量産してきたベンダーだが、自社のエンタープライズSSDを発売するにあたり、SSDの素性に大きな影響を与えるSSDコントローラも自社で開発する決断を下した。同社が第1世代のエンタープライズSAS SSD(PX01シリーズ)を発売したのは2011年だが、最新の第3世代モデル(PX04シリーズ)に至るまで、その設計思想は頑なまでに受け継がれている。

 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術第二部 ストレージプロダクツ応用技術第三担当 参事の友永和総氏は、SSDコントローラを自社で手がけている強みについて「当社のSSDコントローラには、ハードウェアロジック、マイクロコントローラ、ファームウェアなどが含まれ、NAND型フラッシュの制御とホストコントローラの役割を兼ねたSoCの形をとっています。NAND型フラッシュの制御にはさまざまなパラメータがあり、高いアクセス性能や動作の安定性を決める上で最適なチューニングが求められます。当社は、自社のNAND型フラッシュに特化したSSDコントローラを開発することで、自社チップが持つ性能や機能を最大限に引き出せる条件を作り上げています。この結果、エンタープライズの厳しい要件を満たす高性能、安定動作、省電力などにつなげられています。また、NAND型フラッシュの特性にあわせたエラー検出・訂正技術も不可欠ですが、そのマッチングと実装には高度な技術力を必要とします。当社のSSDコントローラは、QSBC(Quadruple Swing-By Code)と呼ばれる独自のエラー訂正方式を採用することで、業界最高クラスの信頼性を確保しています」と説明する。

株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 メモリ事業部 メモリ応用技術第二部 ストレージプロダクツ応用技術第三担当 参事の友永和総氏
SSDを構成しているさまざまなコンポーネント(出典:東芝提供による資料)。SSDは、電子基板にさまざまな半導体チップとコネクタを搭載した製品であり、エレクトロニクス製品の設計ノウハウさえあれば比較的参入しやすいビジネスといえる。しかし、エンタープライズ分野の厳しい要件に応えるには、自社開発のNAND型フラッシュとSSDコントローラを組み合わせた高度かつ緻密(ちみつ)な設計が求められると、東芝は力説する

OpenStackベースのサービス基盤に東芝製エンタープライズSSDを採用したGMOインターネット

 東芝に取材した際に同社のエンタープライズSSDを実際に活用しているエンドユーザーにもコンタクトさせてほしいという旨を伝えたところ、OpenStackベースのサービス基盤に東芝製SSDを導入したGMOインターネット株式会社の紹介を受けた。後日、GMOインターネットからも個別取材の快諾をいただき、日をあらためて話を伺ってきた。

 GMOインターネットは、独立系ネットベンチャーとして、またインターネットサービスプロバイダとして日本で初めて店頭公開(1999年8月、証券コード 9449)を果たした企業である。現在、グループ企業は連結で86社(うち9社が上場済み)に及び、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット証券事業、モバイルエンターテインメント事業を柱としたビジネスを展開している。また、これらの事業にかかわるすべてのインフラを自社でトータルに提供することにより、サービス同士のシナジー効果を最大限に発揮させている。

 このように、同社が手がける事業は極めて多岐にわたり、またそれぞれのサービス基盤には技術的な先進性も随所に盛り込まれている。しかし今回は、東芝製SSDに関連するOpenStackベースのサービス基盤にのみ焦点を当てていこう。

 同社は、2012年ごろよりOpenStackの調査や技術検証を開始したが、OpenStack自身が半年ごとにリリースを重ねていく中で、OpenStackが実サービスでも利用できるレベルに達したと判断し、まずはハイパフォーマンスな仮想環境を提供する「お名前.com VPS」のサービス基盤でOpenStackを採用し始めた。その後、OpenStackの採用範囲を順次広げていき、2016年3月現在では、ゲームアプリの開発・運営を支援する「GMOアプリクラウド」、IaaS型クラウドサーバーを提供する「お名前.com クラウド」、自由度の高い仮想環境を提供する新サービスの「ConoHa byGMO」でもOpenStackを採用済みだ。

ConoHa byGMOのリニューアルでオールフラッシュ化を決断

 特に2013年7月からサービスを開始したConoHa byGMOは、VPS(仮想プライベートサーバー)の世界に新たな風を吹き込む新ブランドである。ConoHaは「Compute Nodes with Hi-flexible Architecture」の略からとられたもので、その名の通りにコンピュートノード群に高い柔軟性を持たせることで、VPSならではの手軽さをそのままに、クラウドサービスに匹敵する大きな自由度を提供する。

 現行のConoHa byGMOでは、クラウド基盤ソフトウェアとしてOpenStack Juno(コミュニティー版を独自にカスタマイズしたもの)、仮想化技術として既存のVPSサービスなどで豊富な実績を持つKVMを組み合わせている。

 また、ユーザーにOpenStack APIを積極的に公開しているのも大きな特徴だ。こちらのページを見ても分かるように、APIに関連するドキュメンテーションが非常に充実しており、あたかも自前でOpenStack基盤を運用しているかのような環境を提供している。運用担当者と開発担当者との連携も容易なので、昨今注目されている開発手法『DevOps』にも柔軟に対応できる。

 ConoHa byGMOは、もともとストレージエリアとしてサーバー内蔵HDDを利用していたが、サービス品質のさらなる向上を目指し、現在ではSSDのみで固められたオールフラッシュ環境へと移行を果たしている。

 事業本部 テクニカルエバンジェリスト エンタープライズクラウド担当の斉藤弘信氏は、オールフラッシュ化の経緯を「ConoHa byGMOは、その自由度の高さからWeb系アプリケーションを中心に利用されるお客さまが多く、ストレージに対する負荷も高くなる傾向にあります。当初は、HDDでも十分なストレージ性能を確保できていたのですが、サービスの成長とともにストレージが早々にボトルネックとなってしまいました。サービス品質を下げないために、コンピュートノードに対するVMの収容数を調整するなどして対処してきましたが、それではいつまで経っても根本的な解決に至りません。そこで、サービスのリニューアルを機に、ストレージ環境そのものをSSDによってオールフラッシュ化する決断を下したのです」と語っている。

GMOインターネット株式会社 事業本部 テクニカルエバンジェリスト エンタープライズクラウド担当の斉藤弘信氏

大量導入時の安心感や国内スタッフによる充実したサポート体制を高く評価

 ConoHa byGMOのリニューアルにあたり、サービスを運営している事業本部からは、ストレージエリアのオールフラッシュ化のみならず、据え置き価格での提供、マルチリージョンでのサービス展開も大きな要件として掲げられた。すなわち、これらのサービス要件をSSDの切り口からとらえれば、サービスコストを維持できる優れたコストパフォーマンスと、世界中でスムーズに調達できるグローバルな製品供給体制も重要な選定条件となる。

 GMOインターネットは、こうした数々の要件を基準に検討を重ねた結果、用途に見合ったシステム構成を実現するには、サーバーベンダーからSSD込みの形で調達するのではなく、SSDのみを別立てで調達するのが望ましいと判断した。同社は、グローバルな製品供給体制を持つ4社からSSD製品の候補を挙げ、性能、信頼性、サポートなどを総合的に比較・検討した結果、東芝製エンタープライズSSDの採用を決めている。

 システム本部 第四サービス開発部 インフラエンジニアリングチーム マネージャーの島原弘和氏は、「当初は、容量単価を抑えられるコンシューマ向けSSDも視野に入れましたが、ConoHa byGMOはホスティングサービスということもあり、お客さまのデータを守り抜くことが最優先されます。このため、今回はエンタープライズSSDしか選択肢はないと考えました。また、SSDを選定するにあたって最も懸念したのが、運用フェーズにおけるSSDのロット不良やファームウェアのバグでした。当社ではSSDを大量に導入する関係から、ひとたびこのような問題が発生するとサービス全体が破綻してしまいます。その点で、東芝はミッションクリティカルな製造業などにも数多くのソリューションを提供しているベンダーですから、ファームウェアの設計を含めて可用性に対する意識が強く、東芝製SSDに対する印象もたいへん良好でした」と述べている。

 また、同社の営業担当として取材時に同席した株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 国内営業統括部 企画担当 課長代理の元木洋一氏は、「これまではドライブ製品のOEM供給元として、特にサーバーベンダーやストレージシステムベンダーと接する機会が多かったのですが、SSDに注力するようになってからは、GMOインターネット様のようなエンドユーザーの皆さまとお話しする機会が増えています。これは、自動車をお買い求めになるお客さまに、タイヤメーカーがその車に適したタイヤをご紹介しているような状況にも似ているでしょうか。当社は、製品の品質に対する絶対的な自信があるのはもちろんのこと、サポート体制も群を抜いて優れていると自負しています。例えば、国内(神奈川県横浜市栄区)に技術スタッフがそろっていますので、お客さまからの高度なお問い合わせにも迅速にお答えできます。実際、GMOインターネット様からSSD関連の解析作業を依頼されましたが、一両日中に回答を差し上げました。このような経緯も、当社のエンタープライズSSDを採用していただく大きな後押しとなったのではないでしょうか」と説明を加える。

GMOインターネット株式会社 システム本部 第四サービス開発部 インフラエンジニアリングチーム マネージャーの島原弘和氏
株式会社 東芝 セミコンダクター&ストレージ社 国内営業統括部 企画担当 課長代理の元木洋一氏

リニューアル時に導入した数千台のドライブは初期不良ゼロを達成

 ConoHa byGMOのサービス基盤では、コンピュートノードとして1Uラックマウントサーバーを採用し、ストレージエリアとしてこれらのサーバーに6台ずつの東芝製エンタープライズSSDを搭載している。また、RAIDレベルとして速度とデータ保護を両立できるRAID 0+1を採用している。容量効率の高いRAID 5やRAID 6といった選択肢もあったが、RAID 0+1は既存のサービスで豊富な実績があり、運用面でのリスクを最小化する目的からConoHa byGMOでもRAID 0+1をそのまま踏襲した。

 コンピュートノードのサーバー内蔵SSDは、すべての顧客に一律50GBのストレージエリアを提供するものであり、より大容量のストレージが必要な顧客にはオプションのストレージエリアとしてブロックストレージとオブジェクトストレージを提供している。
オブジェクトストレージに関してはHDDベースで構成しているが、ブロックストレージはオールフラッシュ環境を採用している。具体的には、ドライブ収容数の多い2Uラックマウントサーバーに多数の東芝製エンタープライズSSDを搭載し、SDS(Software-Defined Storage)の形式でストレージエリアを提供している。

 そして、気になる導入効果だが、「ストレージ側のボトルネックがなくなったことで、コンピュートノード1台に収容可能なVM数が15%以上も増えています。また、サーバーCPUをさらに活用できるようになり、システム全体の性能向上にもつながっています。特に注目したのが、驚異的な故障率の低さです。当社自身の運用実績によれば、サービス基盤で稼働するHDDの故障率はおおむね全体の1~2%となっています。これに対し、東芝製エンタープライズSSDは、その10分の1以下という極めて低い故障率で運用できています。また、初期に導入した数千台のドライブについても初期不良がゼロだったことにたいへん驚かされましたし、運用開始時点のファームウェアもアップデートすることなくそのまま運用を続けられています。こうした数々の実績は、東芝製品の優れた品質を裏付けるものといえるでしょう」と、島原氏は総評する。

東芝製エンタープライズSSDを採用しているのは、コンピュートノード内のサーバー内蔵ドライブと、ブロックストレージを提供するストレージサーバーの内蔵ドライブである。サービスのリニューアル時に導入されたドライブだけでも数千台に及ぶ規模感となる(具体的なドライブ導入数と機種名は非公開)

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 後編では、東芝が提供するエンタープライズSSDの最新ラインアップとそれぞれの特長、そして将来に向けた展望を取り上げていく。

伊勢 雅英