特別企画

不動産業なのに○○がない!? INVESTORS CLOUDがITで創った前人未踏のビジネスモデル

代表取締役の古木大咲氏

 ITを駆使すると画期的なビジネスモデルが生まれることがある。不動産業を営む株式会社INVESTORS CLOUD(以下、インベスターズクラウド)もそれを実現した1社だ。一時は倒産寸前まで追い込まれたというが、ITを活用することで、不動産業では前人未踏の「無在庫型ビジネスモデル」を構築。驚くほどの復活劇を演じた。旧態依然とした不動産業をいかにして革新したのか。

 代表取締役の古木大咲氏に苦難と飛躍の経緯を聞く。

不動産業で画期的な無在庫型ビジネスモデル

新築デザインアパート例

 同社は不動産会社として、アパート経営を希望する人に「土地情報」と「新築デザインアパート」を提供している。アパートは「1棟として同じものは建てない」をコンセプトに同社が建築を請け負い、「LOFT」「SKIP」「UNDER LOFT」「TRIPLE」「MEZO」「MEZO+」という6種類の空間を提案。「暮らしの中にたくさんのイイね!」が生まれる「CRASTINEシリーズ」として、デザイン性・機能性に優れたアパートを提供している。

 一方で「土地」については、ITを駆使して「流通」を革新。この点で従来の不動産業とは一線を画している。

 「従来は街の不動産屋からディベロッパーが土地を購入し、ユーザーに販売するため、二次流通による無駄なマージンが発生するのが常でした。当社は独自にクラウド基盤を構築し、街の不動産屋の土地情報とオーナー希望者をマッチングする仕組みを実現しました。土地の流通については、当社は一切費用をいただきません。このため、ユーザーはより安価に土地を購入できるのです」(古木氏)。

 現在は10都市・1万2000社の厳選された土地情報がクラウド上に集約されており、ユーザーが好きな土地を選んで購入。インベスターズクラウドはその土地に新築アパートを建てる費用と管理料で収益をあげている。

 マッチングの仕組みは、同社にも「土地を在庫として抱える必要がない」というメリットをもたらした。同社がいま注目されているのは、この「不動産業なのに在庫がないビジネスモデル」を実現したためだ。地価は外部の影響を受けやすく、在庫は常にリスクを伴う。それでも不動産業界で「無在庫型モデル」は前例がないのだという。

 「一般的に不動産会社の収益の半分は“在庫”といわれますが、当社は土地を購入しないので在庫も借金も不要です。2013年度には(2011年度比で500%超となる)138億円を売り上げました」。マッチング実績は1000棟を突破し、2012年には土地・建物セットの自社開発棟数で全国1位になったという。

従来型のビジネスモデルとの違い

 古木氏は「この飛躍はまさにITのおかげ」と強調する。では、具体的にどのようにITを活用しているのか。

(川島 弘之)