特別企画

Haswell世代のCPUを搭載したQuanta製データセンター向けサーバーが登場

 テックウインドが発表した、データセンターにフォーカスしたサーバー「D51B-1U」と「D51B-2U」は、注目に値するサーバーといえる。この製品は、台湾のQuanta Computer(以下、Quanta)が製造しているサーバーだ。

高い技術力を持つODMベンダー

 日本のユーザーには知名度は高くないものの、このサーバーを製造しているQuantaは、大規模なODM(Original Design Manufacturing)専業メーカーで、ノートPCのODMでは世界最大規模を誇っている。提供先としては、DellやHP、Appleなどの米国メーカー、東芝、富士通といった日本メーカーがあり、実績としては申し分ない。

 こうしたメーカーからODMを受託するには、高い技術力と信頼性が要求される。ODMベンダーは単なる製造下請けではなく、高度な製品企画力や技術力、製品に対する高いクオリティなどが必須なのだ。

 そのQuantaでは現在、サーバーの製造にも大きく力を入れており、サーバー本体だけでなく、データセンター向けのネットワークスイッチやラックソリューションなど、データセンターを構成するさまざまな製品にまで事業エリアを広げてきた。

 こうしたデータセンター関連製品でも、ノートPCと同様、ODMメーカーとして著名ベンダーに製品を提供する一方で、自社ブランドでのサーバー提供にも力を入れている。一般には「ホワイトボックスサーバー」と呼ばれるジャンルになるが、その背後には、ODMで培ってきた何百万台というサーバーの知見が生かされているし、合理的なコストで大量に生産できるノウハウもある。

 そして、ブランディングのためのコストもそれほどかからないので、(少なくとも定価ベースでは)安価に提供される点も魅力。もちろん、Intelをはじめとするパートナーとは、しっかりとした技術的な協力関係もある。ホワイトボックスというと、「安かろう悪かろう」というイメージで見られることも多いものの、ODMメーカーが作るサーバーが有名メーカー製品と比べて機能や品質が劣っている、ということは決してない。

 それを証明するかのように、KDDIやさくらインターネットなど、日本国内でもQuantaサーバーを導入するデータセンターが増えてきている。大規模なパブリッククラウドを運用する企業にとっては、Quantaの製品は注目に値するものなのだ。

Xeon E5 v3を搭載した新サーバー、随所にこだわりが

テックウインドでは、1Uラック/2Uラック型のD51Bシリーズを扱っている

 今回、テックウインドが取り扱いを発表したのは、最新のXeon E5-2600 v3シリーズ(開発コード名:Haswell-EP)を搭載したサーバー「D51Bシリーズ」だ。1Uラック型の「D51B-1U」と、2Uラック型の「D51B-2U」が提供されているが、いずれもXeon E5-2600 v3シリーズを2基搭載でき、メモリもDDR4メモリを最大24枚搭載できる。

 Xeon E5-2600 v3シリーズとDDRメモリを利用することで性能の向上が見込めるが、特に消費電力あたりの性能向上は大きく期待できるところだ。

 2Uと1U筐体の差は、サーバー内部に搭載できるストレージユニットの数など、拡張性の差と考えていいだろう。1U筐体では、2.5インチのSASディスクを最大10台まで、2U筐体では、最大24台まで搭載することができる。

 また、搭載できる台数は減るが3.5インチのディスクを搭載できるモデルも用意された。1台のサーバーに搭載できるディスク数は減るが、1ディスクあたりの容量を増やしたり、低速回転で長寿命のドライブを使用することで、例えば大容量でありながら、低コストのストレージとしても利用することができる。

 ディスクについて特筆すべきポイントは、NVMe仕様のフラッシュメモリを搭載可能な点だ。高速なインターフェイスであるPCI Express(PCIe 3.0 x4)に直結するNVMeを使えば、今までのSAS/SATAと比べての数倍(最大32Gbps)のI/O性能が実現する。

 こうした高速なNVMeフラッシュを利用できるため、データベースや仮想化など、高速なディスクI/Oが必要な用途にも適用可能。また、今までのPCI Expressカード型フラッシュストレージとは異なり、フロントベイからアクセスできるので、メンテナンスの面でもメリットがあるといえる。

1UのD51B-1Uは、従来のS210シリーズをアップデートした製品だ。メモリのソケット数やディスクベイの数などにより、複数のモデルが用意されている
2UのD51B-2Uシリーズも、S210シリーズのアップデート。ディスクは3.5インチ/2.5インチが搭載できるモデルが用意されている

 クラウド化やノード間の接続が進み、重要視されることが多くなったネットワークやストレージ機能についても、オンボードで多ポートを最初から搭載するのではなく、メザニンカードを必要に応じて搭載できる、柔軟性の高い形にした。自社が必要とする仕様にマッチしたメザニンカードを搭載すれば、ネットワークやストレージを拡張できるのみならず、それを安価に行うことができるからだ。

 ネットワークメザニンカードはOCP(Open Compute Project)のカードが利用でき、Gigabit Ethernet(GbE)×2ポートを搭載したカードや、10GBase-T×2ポートのカード、光ファイバー(SFP+)を2ポート搭載したものなどをラインアップ。ストレージ用は、6Gbps/12GbpsのSASカードが用意されている。

ネットワークやストレージ用のメザニンカードが用意されている

 またQuantaのサーバーは、データセンターでの利用を考えてさまざまなパーツをモジュラー化しているが、D51Bシリーズは従来製品と比べてもメンテナンス性がさらに向上した。例えば電源系の制御ユニットは、コントローラボードを含めてワンパッケージ化されているので、そこが故障した場合は、その部分を丸ごと交換することで、早期の復旧を可能にしている。

Quantaのサーバーはモジュール化が進んでおり、非常に簡単にメンテナンスできるようになっている

 一方、Xeon E5-2600 v3シリーズでは、細かい電力制御をコアごとにかけられるようになっているが、それをきちんと制御しようとすると細かい設計が必要になるし、状況を的確にモニタしないと効果が確認できない。

 Quantaでは、こうした点に対応するため、サーバーの電源管理用にQuanta Data Center Manager(QDCM)というソフトウェアをリリースしている。これは、Intelのサーバー管理ソフトであるData Center Managerをベースに、Quantaが自社サーバー向けにチューニングしたもの。グラフィカルなUIを使用することで、数百台、数千台のサーバーを簡単に管理することができる。

 BIOS設定にも、サーバーで動かすシステム(仮想化など)を想定したテンプレート設定が用意されている。低消費電力モード、ハイパフォーマンスモード、バランスモード、仮想化モード、カスタムモードなどの5つのモードがあらかじめ用意されており、これらの設定を利用すれば、複雑なBIOS設定がメニュー選択で簡単に行える。

Quantaでは、データセンターに向けた管理ソフトを提供している
Quanta Data Center Managerを使えば、各サーバーの電源管理を集中的に行うことが可能になる
BIOSレベルで、複数のアプリケーションに対した設定が簡単に行えるようになっている

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 Quantaのサーバーは、Intelのチップセット、プロセッサをベースとした、非常にスタンダードな製品だ。

 しかし、スタンダードな製品でありながら、ODMベンダーが自ら提供する製品であるがゆえに、大手のサーバーベンダーよりも価格競争力のある値段で提供されているため、魅力のあるサーバーといえるだろう。サポート面でも、テックウインドが全国規模での保守サービスを展開しているほか、エンジニアによるプリセールス、サポートを提供しているため、安心して導入できる。

 その中でも、CPUが最新のHaswell世代となったD51Bシリーズは、注目の製品ではないだろうか。

山本 雅史