特別企画
XP期限切れ間近のいま、仮想デスクトップサービスを改めて考える(3)
導入実績をもとにNTTネオメイトが提供する「AQStage 仮想デスクトップ」とその裏側
(2014/3/18 06:00)
第2回では、NTTネオメイトが自社6000台のPC全てを仮想デスクトップ化する過程でさまざまな課題が浮上し、それらをどう解決したか話を聞いた。NTTネオメイトはその経験とノウハウをもとに、当初からの目的であったNTT西日本グループへの仮想デスクトップ導入を進め、一般ユーザーを含めると2014年3月現在では計約5万台という膨大な数の仮想デスクトップを管理、運用している。
迅速な大量導入はもちろんのこと、その大規模なシステムを安定的に運用し続けるのにも、さまざまなノウハウが必要であることは言うまでもない。NTTネオメイトではそうした実績から得られたノウハウをもとに、オンプレミス型など大規模導入向けサービスを提供し、さらに2013年からは中小規模でも導入しやすい「AQStage 仮想デスクトップ ライト」の提供を始めた。
第3回では、大規模導入で得られたノウハウや経験をもとに、仮想デスクトップをメニュー化し社外に提供を始めた背景や、サービスのメニュー構成、サービスの運用体制やサポートについて、NTTネオメイトに話を聞いた。
◇第1回:PCのリプレイスに「仮想デスクトップ」という選択肢~「AQStage 仮想デスクトップ」を試す
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20140310_638358.html
◇第2回:自社6000台の仮想デスクトップ導入で得られた知見とは~NTTネオメイトに聞く
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/special/20140313_638943.html
「ワークスタイルの変化」が仮想デスクトップ化を後押し
第1回でも触れたように、東日本大震災とWindows XPのサポート期限切れをきっかけに、仮想デスクトップの導入が進んでいる。
かつて、シンクライアントがセキュリティとコストダウンを両立できるソリューションとして注目された時期があった。しかし、シンクライアントではシンクライアント端末にすべて入れ替える必要があり、またサーバーも用意する必要があるなど、実際には期待されたほどのコストメリットが得られず、高度なセキュリティレベルを必要とする業務以外ではあまり広がらなかった経緯がある。
仮想デスクトップは、サーバー側で管理・処理を行う点ではシンクライアントと似ているが、なぜ今になって本格的な導入が進みつつあるのか。NTTネオメイト プラットフォームサービス推進部の中村氏によれば、現在の動きは従来とは決定的に異なる点があるという。それは「ワークスタイルの変化」だ。
「今までPCだけだったのが、LTEのようなモバイル通信インフラが整備され、スマートフォン、タブレットなどのモバイルデバイスからもリモートアクセスしやすくなった。こういったワークスタイルを変える動きの中から、リモートからの利用にはセキュリティを担保しなければいけない、というところで、仮想デスクトップがもう一度注目されるようになってきた」(中村氏)。
自由度と信頼性が魅力の「AQStage 仮想デスクトップ」
仮想デスクトップに光が当たった直接のきっかけとしては、XPのサポート期限切れや東日本大震災による事業継続性の認知が上げられるが、その背景として、モバイルデバイスがビジネスの現場で広く使われるようになったというビジネス環境の変化があったというわけだ。
ここで、NTTネオメイトが提供する「AQStage 仮想デスクトップ」のサービスメニューを見てみよう。
NTTネオメイトでは、ワークスタイル変革を背景とした需要を受け、“多様なワークスタイルへの対応”がサービスの軸となっている。柔軟性がありながら、“常に高いセキュリティの実現”や“保守・運用の一元管理”といった点を合わせて提供する点が、かつてのシンクライアントとの大きな相違点と言えるだろう。
実際、「AQStage 仮想デスクトップ」のサービス案内を見ると、柔軟なカスタマイズ性が大きな特徴となっていることがわかる。既存のPCやモバイル端末をそのまま活用して仮想デスクトップ端末として利用できるほか、USBメモリを既存PCに差し込んでシンクライアント化するタイプや、統一的な操作性と機器管理を実現できるシンクライアント専用端末を用いることも可能。予算や業務内容、目指すワークスタイルに応じて、自社に合った自由度の高い仮想デスクトップ環境の構築を図ることができる。
「AQStage 仮想デスクトップ」ソリューションは3つのプランに分かれ、中規模事業者向けの最も低コストなクラウド型「ライト」プランは、仮想デスクトップソリューションとしては破格の安さと言える1アカウントあたり月額1500円から、同じくクラウド型の大規模事業者向け「スタンダード」プランは1アカウントあたり月額5000円からとなっている(いずれも100台3年利用時、オプションなどによって変化)。
パフォーマンスを重視する場合やデータの外部管理を避けたい事業者向けには、オンプレミス型の「プレミアム」も用意される。オンプレミス型ではカスタマイズ性がさらに高く、既存システムとの連携もより密接に行える。
大規模で複雑化した社内PCやシステムをスムーズに仮想デスクトップ環境へ移行したい場合、NTTネオメイトのように自社導入で800のアプリケーションをThinApp化した経験とノウハウを持つサービス事業者であれば、安心して相談することができそうだ。
企業の規模や社内事情などに応じて適切なプランを選択できるだけでなく、セキュリティ対策のために外出が多い部署のみクラウド型で一部先行導入した後にオンプレミス型で全社導入など、段階的な導入にも柔軟に対応できる点が「AQStage 仮想デスクトップ」の特徴と言えるだろう。
導入実績は重要な選択のポイント
法人向けから個人向けまで、仮想デスクトップサービスを提供する事業者は少なくないが、カタログスペックだけではわからないのがノウハウや運用実績だ。しかし、実際に利用する側として最も重要なのが、スムーズな導入と安定運用だろう。どれだけノウハウを持っているかを判断するポイントが、運用実績となる。
今回取材したNTTネオメイトは、第2回で見てきたように、現在では3万5000台規模となった大規模導入を経験しており、「失敗を知っているところが強み」(中村氏)。自社6000台の導入で数々の課題に直面し、インフラ構成から細かな環境設定まで、試行錯誤しながら1つずつ解決してきた経験とノウハウを蓄積した上で、はじめて社外に提供するソリューションとなっており、こうした実績があるかどうかは、サービス選択の際にはぜひチェックしておきたいポイントだ。
とくに大規模導入においては、第2回で見たように、初めて導入する際には気付かないような問題に遭遇することが多い。大規模導入実績がない業者では、どうすれば安定動作するかを一から模索するといった状況になるおそれもある。
大規模導入では、万一、仕切り直しといったことになると損失も大きい。また、いったん導入した後でサービスを長期にわたり継続的に提供できるかもチェックする必要があるだろう。
この点について、NTTネオメイト プラットフォームサービス推進部の陶山氏は「NTT西日本グループに納入した3万5000台の実績と運用が強み。既存環境からVDIへのマイグレーション経験もあり、短納期で提供できる」と胸を張る。なにより、全国に膨大なネットワーク回線を構築しているNTTグループであることから、信頼性の高い回線を選べるのが利点。「全てをワンストップで提供しているので、万が一のトラブル時でも原因箇所の切り分け対応がスピーディー」であることもメリットとして上げた。
導入の目的は業務の効率化であったり、事業継続性であったり、コストを抑えたXPマシンのリプレイスであったりと様々なケースがあるが、どんな目的でも最も重要なのはスムーズな導入と長期にわたる安定運用だ。サービス選定の際には価格やスペックばかりに目がいきがちだが、導入実績についてはぜひ確認しておくことをおすすめしたい。
「一歩踏み込んだ」充実の監視・サポート体制
前述の通り、安定運用は導入を検討するにあたってマストの条件となる。そこで、気になるのがサポートだ。これについても、NTTネオメイトに話を聞いた。
「AQStage 仮想デスクトップ」の場合、「AQStage Operations View」による充実した監視、専門のサポート部隊の存在も大きなポイントだという。
「AQStage Operations View」は、世界標準であるITIL(Information Technology Infrastructure Library)準拠の統合IT運用監視ツールで、仮想化環境も含めたリソース管理、サービスレスポンスの低下などの早期発見、回復を目的とした「監視機能」と、構成管理、運用自動化などによるサービス品質の向上や効率化を目的とした「マネジメント機能」をフル活用して24時間365日のリアルタイムの監視を行っている。また、相談窓口となる専用サービスデスクを設け、トラブル発生時のメール・電話にも対応している。現在サービスデスクは約8万ユーザーへサービスを提供しているという。
大規模導入では、技術層の厚みもポイント
とくに仮想デスクトップ環境は、仮想化基盤やサーバーシステム、ストレージ、クライアントOSなど多数のコンポーネントから成り立っており、それぞれが複雑に組み合わされている。NTTネオメイト 仮想化技術センタの前野氏は、「どれか1つに不都合があると他のコンポーネントにも影響を与え、複合的な問題を引き起こしやすい。そのため、細かな障害であっても適切に監視して状況を正確に把握することが非常に大事」だと明かす。
「通常の監視では気づけず、ユーザーからの報告で初めて障害を知ることもあった」という苦い経験から、下位レイヤの監視だけでなく上位レイヤの監視はもちろんのこと、パフォーマンスの変化については、一定幅の“閾値”を設け、ユーザーの体感に即したチェックを行っている。さらに、「AQStage Operations View」の機能を活用してサービスの動作を詳細に検知するなど、「一歩踏み込んだ監視」に重点を置いているという。
「それぞれの監視ツールを、仮想デスクトップ環境において一番いい使い方ができるような形で用意している」と前野氏。仮想デスクトップと監視ツールの上手な組み合わせは、さまざまな失敗経験からの改善や、大規模導入の実績があるNTTネオメイトならではの“技術”と言えるだろう。
前野氏は、日本で20数名しかいないVMware VCAPの資格を持つひとりでもある。NTTネオメイトではVMware VCP取得者は136名、Citrix CCAは59名、Cisco CCIEは50名、Cisco CCNAに至っては2157名の取得者がいる。また、ITサービスマネジメントではITILエキスパートが4名、ITILファンデーションは348名の取得者を擁する(2013年4月現在)。
こうした技術者の層の厚みも、サービスレベルを判断するひとつの指標と言えるだろう。
サポート切れWindows XPの更新にもまだ間に合う
まもなく迎える2014年4月9日は、Windows XPのサポート終了期限。このタイミングを機に新しいPCに置き換えるか、仮想デスクトップに切り替えるか、悩んでいる企業も少なくないだろう。すでにNTTネオメイトにも、Windows XPからの移行を含む仮想デスクトップの導入について、2014年1月以降だけで300件を超える相談があったという。多数の案件を抱え始めてはいるものの、今から相談しても規模によってはまだ間に合うとのことだ。
Windows XPの更新に限らず、業務の改善・効率化、セキュリティの確保、管理コストの削減など、仮想デスクトップ化による“改革”を進めたいと考えている企業は、まずは無料のお試しや、無料参加のセミナーイベントなどを利用してみるところから始めてはいかがだろうか。