マニア心をくすぐる「HP MicroServer」を試す【OSインストール&ベンチマーク編】


 日本HPが提供している小型サーバーの「HP ProLiant MicroServer」(以下、MicroServer)は、マニア心をくすぐるサーバーだ。前回は、MicroServerのハードウェアスペックなどを紹介した。今回は、実際にMicroServerにOSをインストールして触ってみた感触や、いくつかのベンチマーク結果を紹介する。

 

ECCなしのメモリを試す

 MicroServerは、メモリが1GB、HDDが160GBという標準構成しか販売されていない。さすがに、メモリ1GBでWindows Server 2008 R2を動かすには、心もとない。そこで、手持ちのメモリに入れ替えようと思ったのだが、あいにくとECC付きは余分がない。

 そこで、Athlon II NEO N36Lのスペックを見ると、ECCなしのDDR3メモリでも動作するようだったので、手持ちの2GBメモリに入れ替えて、メモリテストのMemTest86+を10時間ほど動かしてみた。結果としては、エラーはまったく起こらなかった。

 ただし、サーバーでの運用ということを考えれば、ECC付きのDDR3メモリを利用した方がいいし、日本HPのサポートもないが、ひとまず、手元にあるMicroServerで、ECCなしで動作したことはご報告しておく。

CPU-Zで、MicroServerのCPU Athlon II NEO N36Lをチェックしてみた。プロセッサ名は表示されていないが、SpecificationにはAthlon II NEO N36Lと表示されている。コアのクロック数が799.5MHzとなっているが、これはAMDの省電力機能 Cool'n'Quietを使用しているため。CPU負荷が低い場合は、自動的に動作クロックを下げる。Athlon II NEO N36LはCPUコアを2つ持っている。L2キャッシュは1MB×2で、トータル2MBとなる今回は、MicroServerにECCなしのDDR3メモリを使って、いくつかのベンチマークを行ったが、動作自体はまったく問題なかった。ただし、日本HPのサポート外である点には注意

 

一手間かかるOSのインストール準備

 さて、今回は、Windows Server 2008 R2をインストールしてみた。MicroServerには、Easy Set-up CDのようなドライバ/ユーティリティのメディアは添付されていないため、Webサイトから入手することになる。

 MicroServerには、パソコンのようなマニュアルが付いているわけではない。また、ドライバなどのCD/DVDも添付していない。必要なユーザーは、HPのサイトからダウンロードする必要がある。マニュアルに関しては、インストレーションガイドユーザーガイド構成図が日本語ドキュメントとして提供されている。これ以外に、英語だが、参考になるのがメンテナンス&サービス ガイドだ。

 さて、前述したようにドライバも添付されていないため、ユーザーが自ら用意する必要がある。日本HPのWebサイトにも、Windows Server 2008 R2用のドライバが用意されている。ただし、Languageを「日本語」にすると、チップセット用のドライバなどがリストアップされないので、Languageは「英語(International)」にする必要があった(ダウンロードはこちら)。

 しかも、AMDのチップセットなどのドライバをダウンロードする場合、HPサイトから直接ダウンロードすることができなかった。最終的には、AMDのサイトを案内され、AMD785EとSB820MのWindows Server 2008 R2用のドライバをダウンロードする。


HPのサイトからドライバをダウンロードする。テストを行った10月18日現在、日本語サイトからは、ドライバのリストがうまく表示されないため、今回は米国のサイトから行った現在、提供されているのは、チップセットのドライバとストレージのユーティリティ、ネットワークカードのドライバなどチップセットのドライバーやストレージのユーティリティをダウンロードする。ボタンをクリックすると、このようなテキストが表示されてしまう。若干、サイトの構築に問題があるようだが、http://wwwd.amd.com/AMD/SReleaseF.nsf/HPSW?openformというURLが表示されている。このURLを入力して、AMDサイトからダウンロードする

 不思議なのは、HPのサイトに掲載されているURLを直接入力しても、アクセスができなかったこと。どうやら、HPのサイトにいったんアクセスしておかないと、チップセット用のドライバが置かれているページには、アクセスできないようだ。また、AMDのWebサイトのトップページからは、このドライバーが置かれているページにたどり着くことはできなかった。通常、AMDのWebサイトには、Windows 7/VistaなどのクライアントOS用のドライバしか用意されていない。どうも、HPのMicroServer用に、特別にWindows Server 2008(32ビット/64ビット)、Windows Server 2008 R2(64ビット)のドライバを用意しているようだ。

 AMDのサイトでダウンロードするドライバは、AMD RS785EとSB820M用のドライバ、RAID管理を行うRaidXpertというソフトだ。ちなみに、これらのドライバは日本語環境にも対応しているため、日本語版のWindows Server 2008 R2にインストールしても問題ない。

 Windows Server 2008 R2をインストール後に、AMD RS785EとSB820M用のドライバーをインストールすれば、チップセット用のドライバ、グラフィックドライバ、HDD用のドライバなどがインストールされる。MicroServerのパフォーマンスを生かすためには、AMDのドライバをインストールした方がいい。

Windows Server 2008の32ビット/64ビット、Windows Server 2008 R2(64ビット)用のチップセットドライバが用意されている。RaidXpertは、RAID用のユーティリティソフトAMDのURLを入力しても、ドライバが表示されない。いったん、HPサイトを表示してからでないとダメなようだ。また、AMDのWebサイトから、このページには到達できないようだ

 グラフィックドライバがインストールされるため、1920×1080などのフルHDの解像度でWindows Server 2008 R2が利用できる。また、このドライバは、DirectX 10.1に対応しているため、DirectXを使用するIE 9を動かすこともできる。


Windows Server 2008 R2をインストール直後のデバイスマネージャ。ディスプレイは標準VGA、NICはBroadcom NetXtremeがインストールされているAMDのチップセット ドライバをインストールチップセットとNICのドライバーをインストールすると、ディスプレイはHD4200、NICはHP Insight NC107iに変わっている。これで、MicroServerを最大限に生かすことができる

 

ベンチマークの結果は?

比較したAthlon II X2 250は、クロック周波数3.0GHzで、L2キャッシュはAthlon II NEO N36Lと同じくトータル2MB。Athlon II NEO N36Lの方が、コア電圧が低くなっている分、省電力化されている

 今回は、ハードウェアの性能を測るため、PassmarkのPerformance Testと、HDDのパフォーマンスを測るCrystalDiskMarkを用いた。CrystalDiskMarkでは、MicroServerで公開した共有フォルダをネットワーク越しにドライブレターにマウントして、パフォーマンスを測った。

 参考として、手持ちのAthlon II X2 250(3.0GHz)を使ったデスクトップPCのデータも掲載しておく。CPU、メモリ、チップセット、HDDのメーカーも異なるため、MicroServerと厳密に比較することはできないが、参考として動かしてみた。



マイクロサーバー
デスクトップ
マザーボード
ASUS M4A785TD-M EVO
チップセットRS785E+SB820M
AMD785G+SB710
プロセッサ
Athlon II NEO N36L(1.3GHz)
Athlon II X2 250(3.0GHz)
メモリ
DDR3 800MHz 2GB
DDR3 1066MHz 4GB
HDD
SATA 7200rpm 160GB
HSGT HDP725050GLA360
グラフィック
785E内蔵グラフィック(HD4200相当)
785G内蔵グラフィック(HD4200相当)
PassMarkのPerformance Testの結果。CPUのベンチマークは、デスクトップのAthlon II X2 250がずばぬけて高い。また、メモリのベンチもDDR3 1066をフルに生かしきるデスクトップの方が高かった。ディスクアクセスやグラフィックは両者ともほとんど変わらない

 Performance TestのCPU Markを見ると、さすがに3.0GHzで動作するAthlon II X2 250は、1.3GHzのAthlon II NEO N36Lに比べると高いパフォーマンスを示している。Athlon II NEO N36Lは、1.3GHzでの動作を考えれば、それなりのパフォーマンスだろう。ただ、Athlon II X2 250のTDPが65Wで、15WのAthlon II NEO N36Lは、省電力という面で見れば非常に優れている。

 Memory Markに関しては、Athlon II X2 250が4GB(2GB×2)をDDR3 1333で動作していることと、デュアルチャンネルで動かしているため、これだけ高いパフォーマンスを示している。一方MicroServerは、DDR3 1333をクロック数を落として、800MHzで動作させている。これにより、メモリも省電力化されている。

 グラフィックに関しては、両方ともATI Radeon HD4200相当とほとんど同じグラフィックコアが採用されているため、あまり差は出なかった。

 HDDは、使用しているHDDの機種が異なるが、ベンチマークとしてはあまり差は出なかった。

 面白いのがCrystalDiskMarkのベンチだ。ネットワーク越しに、それぞれの共有フォルダをドライブとしてマウントし、ベンチマークを行った。ハードウェアとしてMicroServerの方が非力だが、CrystalDiskMarkではMicroServerの方が上回った。

 ローカルで動かすPerformance Testでは、HDDのベンチマークとしては差が出なかったので、これはネットワークチップの差かもしれない。デスクトップPCはRealtekのネットワークチップを使っているが、MicroServerではサーバー用のネットワークチップが使われている。このあたりは、MicroServerと比較するPCのハードウェアスペックをそろえて分析してみないとわからないが、MicroServerでは、さすがにサーバー向けのチップを使っているだけの効果はある、ということだろう。

CyrstalDiskMarkの結果。MicroServerの方が、ネットワーク越しのディスクアクセスが高いパフォーマンスを示しているMicroServer側のCrystalDiskMarkのベンチマーク結果

 ベンチマークを分析してみて、MicroServerはCPUは非力だが、データベースなどを動かさないファイルサーバーとしての用途なら、十分なパフォーマンスがあると感じた。HDDが4台搭載できるため、ファイルサーバーとしては十分な容量を用意することができる。

 CPUやチップセットなど、多くのパーツはモバイル用が使われており、サーバーといえども、大幅な省電力化が果たされている。例えば、24時間動かすActive Directoryサーバーなどにはぴったりかもしれない。

 ともかく、HP MicroServerは、企業ユーザーにとっては24時間365日動かす省電力サーバーとして、個人ユーザーにとっては遊べるサーバーといえるだろう。

 

現状ではサポート外も、「Aurora」での利用に向くか?

 MicroServerは、マイクロソフトがリリースを予定している25ユーザーまでのサーバーOS「Windows Small Business Server」(開発コード名:Aurora)がぴったりかもしれない。

 Auroraは、次世代Window Home Server(WHS)をベースにして、Active Directoryなどの機能がサポートされている(最大25人まで)。

 また、WHSのドライブ エクステンダー機能を使って、追加したHDDを統合して1台のドライブとして扱うことができるし、RAIDとは異なる方法で、データを複数のHDDに二重化して保存し、信頼性をアップしている。これなら、必要に応じて、HDDを追加することができる。ドライブ エクステンダー機能なら、RAIDのように、OSのインストール時に構成を決める必要もない。

 もう1つ便利なのは、クライアントPCにAurora用の専用アクセスソフトをインストールすることで、クライアントPCのディスクをサーバーにバックアップすることもできる。この機能を使えば、もしPCが壊れても、サーバーにデータがバックアップしてあるので、簡単に元に戻すことができる。

 さらに、電子メールサーバー(Exchange Server)や文書共有サーバー(SharePoint Server)などは、クラウドサービスのマイクロソフト オンラインを利用する。このため、非力なサーバーでも、電子メールや文書共有などのサービスを提供することが可能だ。

 また、サーバーにActive Directory(AD)が用意されているため、マイクロソフト オンラインもADと連携している。このため、ローカルのファイルサーバーもマイクロソフト オンラインもADのアカウント1つで利用できる。

 なお、残念ながら、MicroServerでは現状、Auroraが必要とするスペックを満たしていない。しかし、製品版が登場した場合には、このあたりが変わっている可能性はあるし、少ない台数のバックアップ用途ぐらいであれば、対応できるのではないだろうか。また、製品版が提供されるようになったら、クラウド Watchでも、このあたりをリポートする予定だ。

 

ディスクマウンタは4つ付属、センサー利用にはリモートアクセスカードが必要

ディスクマウンタ(右)は、標準で4つ付属する

 1回目の記事を掲載して、読者からいくつか質問をいただいた。今回は最後に、その回答と、いくつかの追加情報をお伝えする。

 MicroServerのHDDは、ディスクマウンタにはめて使用すると前回の記事でお伝えしたが、そのディスクマウンタは、本体内部に4つ搭載されている。このため、ユーザーが新たにディスクマウンタを購入する必要はない。

 ただし、日本HPでは、ディスクマウンタ自体の販売は行っていないので、ディスク交換を簡単にしようと思っても、追加でディスクマウンタを購入することはできない。もし破損した場合は、修理という形になる。

 2.5インチのSSDなどを利用するには、MicroServerのディスクマウンタに3.5インチ/2.5インチマウンタを使用すれば使えそうな気がする。ただ、金属のフレームを左右に付けるタイプでは、若干不安定になるかもしれない。3.5インチケースのようなマウンタにSSDを取り付ける方がいいだろうが、あいにくと手持ちに試せるようなものがなかったので、問題ないとは言い切れない。もちろん、SSDに交換した場合は、HPの保証の範囲外になる点にも注意が必要だ。

 製品に付属しているCD/DVDドライブについても、問い合わせをいただいた。この奥行きは17cmで、CD/DVDドライブは奥行きに関してはいくつかサイズがあるが、あまり奥行きが長いとケーブルの配線が面倒になるかもしれない。ちなみに、CD/DVDドライブはSATA接続となる。PATA接続のCD/DVDドライブは、そのままでは使えない。

 MicroServer自体には、いくつかの温度センサーやファンセンサーが用意されているが、MicroServer用にセンサーの情報を取得するアプリケーションは、バンドルされていない。オプションのリモートアクセスカードを接続すれば、リモートのクライアントPCから、ブラウザ経由で各センサーの情報を確認することはできた。

 なお、前回の記事に書き忘れたが、MicroServerにはキーボード、マウスは添付されていない。また、キーボード/マウスの接続は、USBポートのみとなる(PS2キーボード/マウスは使用できない)。

 MicroServerは、購入時から1年間のパーツ保証と翌営業日オンサイトサービスが付いている。ただし、より手厚いオンサイトサービスを受けたい場合は、追加でオンサイトサービスのHP Care Packを契約する必要がある。翌日対応を最長5年まで延長する(3万4000円)、4時間対応で365日対応を最長5年(8万3000円)、などのメニューがある。

 

 次回は、リモートアクセスカードの機能などについて紹介する。

関連情報