マニア心をくすぐる「HP MicroServer」を試す【OSインストール&ベンチマーク編】
日本HPが提供している小型サーバーの「HP ProLiant MicroServer」(以下、MicroServer)は、マニア心をくすぐるサーバーだ。前回は、MicroServerのハードウェアスペックなどを紹介した。今回は、実際にMicroServerにOSをインストールして触ってみた感触や、いくつかのベンチマーク結果を紹介する。
■ECCなしのメモリを試す
MicroServerは、メモリが1GB、HDDが160GBという標準構成しか販売されていない。さすがに、メモリ1GBでWindows Server 2008 R2を動かすには、心もとない。そこで、手持ちのメモリに入れ替えようと思ったのだが、あいにくとECC付きは余分がない。
そこで、Athlon II NEO N36Lのスペックを見ると、ECCなしのDDR3メモリでも動作するようだったので、手持ちの2GBメモリに入れ替えて、メモリテストのMemTest86+を10時間ほど動かしてみた。結果としては、エラーはまったく起こらなかった。
ただし、サーバーでの運用ということを考えれば、ECC付きのDDR3メモリを利用した方がいいし、日本HPのサポートもないが、ひとまず、手元にあるMicroServerで、ECCなしで動作したことはご報告しておく。
■一手間かかるOSのインストール準備
さて、今回は、Windows Server 2008 R2をインストールしてみた。MicroServerには、Easy Set-up CDのようなドライバ/ユーティリティのメディアは添付されていないため、Webサイトから入手することになる。
MicroServerには、パソコンのようなマニュアルが付いているわけではない。また、ドライバなどのCD/DVDも添付していない。必要なユーザーは、HPのサイトからダウンロードする必要がある。マニュアルに関しては、インストレーションガイド、ユーザーガイド、構成図が日本語ドキュメントとして提供されている。これ以外に、英語だが、参考になるのがメンテナンス&サービス ガイドだ。
さて、前述したようにドライバも添付されていないため、ユーザーが自ら用意する必要がある。日本HPのWebサイトにも、Windows Server 2008 R2用のドライバが用意されている。ただし、Languageを「日本語」にすると、チップセット用のドライバなどがリストアップされないので、Languageは「英語(International)」にする必要があった(ダウンロードはこちら)。
しかも、AMDのチップセットなどのドライバをダウンロードする場合、HPサイトから直接ダウンロードすることができなかった。最終的には、AMDのサイトを案内され、AMD785EとSB820MのWindows Server 2008 R2用のドライバをダウンロードする。
不思議なのは、HPのサイトに掲載されているURLを直接入力しても、アクセスができなかったこと。どうやら、HPのサイトにいったんアクセスしておかないと、チップセット用のドライバが置かれているページには、アクセスできないようだ。また、AMDのWebサイトのトップページからは、このドライバーが置かれているページにたどり着くことはできなかった。通常、AMDのWebサイトには、Windows 7/VistaなどのクライアントOS用のドライバしか用意されていない。どうも、HPのMicroServer用に、特別にWindows Server 2008(32ビット/64ビット)、Windows Server 2008 R2(64ビット)のドライバを用意しているようだ。
AMDのサイトでダウンロードするドライバは、AMD RS785EとSB820M用のドライバ、RAID管理を行うRaidXpertというソフトだ。ちなみに、これらのドライバは日本語環境にも対応しているため、日本語版のWindows Server 2008 R2にインストールしても問題ない。
Windows Server 2008 R2をインストール後に、AMD RS785EとSB820M用のドライバーをインストールすれば、チップセット用のドライバ、グラフィックドライバ、HDD用のドライバなどがインストールされる。MicroServerのパフォーマンスを生かすためには、AMDのドライバをインストールした方がいい。
Windows Server 2008の32ビット/64ビット、Windows Server 2008 R2(64ビット)用のチップセットドライバが用意されている。RaidXpertは、RAID用のユーティリティソフト | AMDのURLを入力しても、ドライバが表示されない。いったん、HPサイトを表示してからでないとダメなようだ。また、AMDのWebサイトから、このページには到達できないようだ |
グラフィックドライバがインストールされるため、1920×1080などのフルHDの解像度でWindows Server 2008 R2が利用できる。また、このドライバは、DirectX 10.1に対応しているため、DirectXを使用するIE 9を動かすこともできる。
■ベンチマークの結果は?
比較したAthlon II X2 250は、クロック周波数3.0GHzで、L2キャッシュはAthlon II NEO N36Lと同じくトータル2MB。Athlon II NEO N36Lの方が、コア電圧が低くなっている分、省電力化されている |
今回は、ハードウェアの性能を測るため、PassmarkのPerformance Testと、HDDのパフォーマンスを測るCrystalDiskMarkを用いた。CrystalDiskMarkでは、MicroServerで公開した共有フォルダをネットワーク越しにドライブレターにマウントして、パフォーマンスを測った。
参考として、手持ちのAthlon II X2 250(3.0GHz)を使ったデスクトップPCのデータも掲載しておく。CPU、メモリ、チップセット、HDDのメーカーも異なるため、MicroServerと厳密に比較することはできないが、参考として動かしてみた。
マイクロサーバー | デスクトップ | |
マザーボード | - | ASUS M4A785TD-M EVO |
チップセット | RS785E+SB820M | AMD785G+SB710 |
プロセッサ | Athlon II NEO N36L(1.3GHz) | Athlon II X2 250(3.0GHz) |
メモリ | DDR3 800MHz 2GB | DDR3 1066MHz 4GB |
HDD | SATA 7200rpm 160GB | HSGT HDP725050GLA360 |
グラフィック | 785E内蔵グラフィック(HD4200相当) | 785G内蔵グラフィック(HD4200相当) |
PassMarkのPerformance Testの結果。CPUのベンチマークは、デスクトップのAthlon II X2 250がずばぬけて高い。また、メモリのベンチもDDR3 1066をフルに生かしきるデスクトップの方が高かった。ディスクアクセスやグラフィックは両者ともほとんど変わらない |
Performance TestのCPU Markを見ると、さすがに3.0GHzで動作するAthlon II X2 250は、1.3GHzのAthlon II NEO N36Lに比べると高いパフォーマンスを示している。Athlon II NEO N36Lは、1.3GHzでの動作を考えれば、それなりのパフォーマンスだろう。ただ、Athlon II X2 250のTDPが65Wで、15WのAthlon II NEO N36Lは、省電力という面で見れば非常に優れている。
Memory Markに関しては、Athlon II X2 250が4GB(2GB×2)をDDR3 1333で動作していることと、デュアルチャンネルで動かしているため、これだけ高いパフォーマンスを示している。一方MicroServerは、DDR3 1333をクロック数を落として、800MHzで動作させている。これにより、メモリも省電力化されている。
グラフィックに関しては、両方ともATI Radeon HD4200相当とほとんど同じグラフィックコアが採用されているため、あまり差は出なかった。
HDDは、使用しているHDDの機種が異なるが、ベンチマークとしてはあまり差は出なかった。
面白いのがCrystalDiskMarkのベンチだ。ネットワーク越しに、それぞれの共有フォルダをドライブとしてマウントし、ベンチマークを行った。ハードウェアとしてMicroServerの方が非力だが、CrystalDiskMarkではMicroServerの方が上回った。
ローカルで動かすPerformance Testでは、HDDのベンチマークとしては差が出なかったので、これはネットワークチップの差かもしれない。デスクトップPCはRealtekのネットワークチップを使っているが、MicroServerではサーバー用のネットワークチップが使われている。このあたりは、MicroServerと比較するPCのハードウェアスペックをそろえて分析してみないとわからないが、MicroServerでは、さすがにサーバー向けのチップを使っているだけの効果はある、ということだろう。
CyrstalDiskMarkの結果。MicroServerの方が、ネットワーク越しのディスクアクセスが高いパフォーマンスを示している | MicroServer側のCrystalDiskMarkのベンチマーク結果 |
ベンチマークを分析してみて、MicroServerはCPUは非力だが、データベースなどを動かさないファイルサーバーとしての用途なら、十分なパフォーマンスがあると感じた。HDDが4台搭載できるため、ファイルサーバーとしては十分な容量を用意することができる。
CPUやチップセットなど、多くのパーツはモバイル用が使われており、サーバーといえども、大幅な省電力化が果たされている。例えば、24時間動かすActive Directoryサーバーなどにはぴったりかもしれない。
ともかく、HP MicroServerは、企業ユーザーにとっては24時間365日動かす省電力サーバーとして、個人ユーザーにとっては遊べるサーバーといえるだろう。
■現状ではサポート外も、「Aurora」での利用に向くか?
MicroServerは、マイクロソフトがリリースを予定している25ユーザーまでのサーバーOS「Windows Small Business Server」(開発コード名:Aurora)がぴったりかもしれない。
Auroraは、次世代Window Home Server(WHS)をベースにして、Active Directoryなどの機能がサポートされている(最大25人まで)。
また、WHSのドライブ エクステンダー機能を使って、追加したHDDを統合して1台のドライブとして扱うことができるし、RAIDとは異なる方法で、データを複数のHDDに二重化して保存し、信頼性をアップしている。これなら、必要に応じて、HDDを追加することができる。ドライブ エクステンダー機能なら、RAIDのように、OSのインストール時に構成を決める必要もない。
もう1つ便利なのは、クライアントPCにAurora用の専用アクセスソフトをインストールすることで、クライアントPCのディスクをサーバーにバックアップすることもできる。この機能を使えば、もしPCが壊れても、サーバーにデータがバックアップしてあるので、簡単に元に戻すことができる。
さらに、電子メールサーバー(Exchange Server)や文書共有サーバー(SharePoint Server)などは、クラウドサービスのマイクロソフト オンラインを利用する。このため、非力なサーバーでも、電子メールや文書共有などのサービスを提供することが可能だ。
また、サーバーにActive Directory(AD)が用意されているため、マイクロソフト オンラインもADと連携している。このため、ローカルのファイルサーバーもマイクロソフト オンラインもADのアカウント1つで利用できる。
なお、残念ながら、MicroServerでは現状、Auroraが必要とするスペックを満たしていない。しかし、製品版が登場した場合には、このあたりが変わっている可能性はあるし、少ない台数のバックアップ用途ぐらいであれば、対応できるのではないだろうか。また、製品版が提供されるようになったら、クラウド Watchでも、このあたりをリポートする予定だ。
■ディスクマウンタは4つ付属、センサー利用にはリモートアクセスカードが必要
ディスクマウンタ(右)は、標準で4つ付属する |
1回目の記事を掲載して、読者からいくつか質問をいただいた。今回は最後に、その回答と、いくつかの追加情報をお伝えする。
MicroServerのHDDは、ディスクマウンタにはめて使用すると前回の記事でお伝えしたが、そのディスクマウンタは、本体内部に4つ搭載されている。このため、ユーザーが新たにディスクマウンタを購入する必要はない。
ただし、日本HPでは、ディスクマウンタ自体の販売は行っていないので、ディスク交換を簡単にしようと思っても、追加でディスクマウンタを購入することはできない。もし破損した場合は、修理という形になる。
2.5インチのSSDなどを利用するには、MicroServerのディスクマウンタに3.5インチ/2.5インチマウンタを使用すれば使えそうな気がする。ただ、金属のフレームを左右に付けるタイプでは、若干不安定になるかもしれない。3.5インチケースのようなマウンタにSSDを取り付ける方がいいだろうが、あいにくと手持ちに試せるようなものがなかったので、問題ないとは言い切れない。もちろん、SSDに交換した場合は、HPの保証の範囲外になる点にも注意が必要だ。
製品に付属しているCD/DVDドライブについても、問い合わせをいただいた。この奥行きは17cmで、CD/DVDドライブは奥行きに関してはいくつかサイズがあるが、あまり奥行きが長いとケーブルの配線が面倒になるかもしれない。ちなみに、CD/DVDドライブはSATA接続となる。PATA接続のCD/DVDドライブは、そのままでは使えない。
MicroServer自体には、いくつかの温度センサーやファンセンサーが用意されているが、MicroServer用にセンサーの情報を取得するアプリケーションは、バンドルされていない。オプションのリモートアクセスカードを接続すれば、リモートのクライアントPCから、ブラウザ経由で各センサーの情報を確認することはできた。
なお、前回の記事に書き忘れたが、MicroServerにはキーボード、マウスは添付されていない。また、キーボード/マウスの接続は、USBポートのみとなる(PS2キーボード/マウスは使用できない)。
MicroServerは、購入時から1年間のパーツ保証と翌営業日オンサイトサービスが付いている。ただし、より手厚いオンサイトサービスを受けたい場合は、追加でオンサイトサービスのHP Care Packを契約する必要がある。翌日対応を最長5年まで延長する(3万4000円)、4時間対応で365日対応を最長5年(8万3000円)、などのメニューがある。
次回は、リモートアクセスカードの機能などについて紹介する。