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サーバー仮想化実施企業の7%がOpenStackを本番環境で使用、ICT企業では約40%が導入に向けて取り組み~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は11日、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」について、国内企業のITインフラにおけるOpenStackの導入状況に関する調査結果を発表した。調査は、サーバー仮想化を実施している企業および組織を対象としたアンケートによるもので、調査時期は2016年3月、有効回答は459社。

OpenStackの導入状況に関するユーザー調査結果(出展:IDC Japan)

 調査によると、OpenStackを「すでに本番環境で使っている」と回答した割合は7.0%で、前回調査(2015年7月)の4.5%から3.5ポイント上昇した。

 「試験的に使用し、検証している」は8.3%で前回調査とほぼ同様だが、「使用する計画/検討がある」は17.9%と前回調査の5.2%から大きく増加しており、導入に向けて具体的な動きが出てきていると分析。「OpenStackを知らない」の回答割合も前回調査から8.5ポイント下がっており、認知度も上昇しているとしている。

 情報サービスプロバイダーやシステムインテグレーターのようなICT関連サービスを主力事業としているICT企業では、OpenStackを「すでに本番環境で使っている」が8.2%、「試験的に使用し、検証している」が10.8%、「使用する計画/検討がある」が20.5%で、合計で約40%のICT企業がOpenStackの導入に向けて取り組んでいる。

 一方、それ以外の製造や流通、金融、一般サービスなどを主力事業としているNon-ICT企業でも、本番環境で使用、検証中、計画/検討の回答を合計すると約30%の企業がOpenStackの導入に向けて取り組んでおり、多くの企業での導入が期待されるとしている。

 OpenStackを本番環境で使用、検証中、計画/検討している企業に対して、OpenStackに期待する効果について尋ねた質問では、「クラウド基盤の運用の効率化」が25.7%で最も回答が多く、「クラウド環境の構築の迅速化」が21.7%、「アプリケーション開発の迅速化」が21.1%で、クラウド基盤の運用効率化に加え、スピード向上に対する期待が高い。また、「自社エンジニアのスキルアップ」も19.7%あり、これはICT企業だけで見ると22.1%と最も多い回答で、OpenStackを通じてエンジニアのスキルが向上することへの期待も表れているとしている。

 OpenStackを使用していく上での課題については、「OpenStackに精通しているエンジニアが少ない」が28.3%と最も回答が多く、「セキュリティの脆弱性に不安がある」が25.7%、「半年ごとのメジャーリリースに合わせた対応ができない」が19.7%と続く。IDC Japanでは、半年ごとのメジャーリリースはOpenStackの大きな特徴の1つだが、このバージョンアップのスピードに追従することができない企業が約2割あり、課題と表裏一体となっていると分析。また「ネットワーク環境の構築/管理が難しい」の回答も19.7%を占め、OpenStackのネットワークはNeutronコンポーネントに対する課題が残されているとしている。

 IDC Japanソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は、「国内におけるOpenStackは関心/勉強のフェーズから具体的な導入を計画/検討するフェーズへと移った。ヤフーやNTTグループをはじめとし、既に導入から使用フェーズに入っている先進的な企業も増えつつある。現状はOpenStackスキルのあるエンジニアのリソースは限られているため、短期間で加速度的に導入が進むとは考えにくいが、着実に導入する企業は増えていくことが予測される。OpenStackの導入を検討している企業は事前にしっかりと課題を抽出し、導入プロジェクトを滞りなく進めていくことが重要である」と述べている。

三柳 英樹