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「時代の要請に応える最先端のデータセンター」、富士通が館林DCのC棟を開所

 富士通株式会社は、群馬県館林市の館林データセンターにおいて、新たにC棟をオープン。4月5日午前10時30分から開所式を行った。

富士通 館林データセンターC棟

 富士通の田中達也社長は、「富士通は100カ所以上のデータセンターを持ち、5000社以上のユーザーにサービスを提供している。そのなかで館林データセンターは、当社のデータセンタービジネス発祥の地となる。1995年に、館林にA棟を開設し、耐震構造を導入した堅牢なデータセンターとして現在でも利用されている。また、2009年にはB棟を開設し、トップレベルのセキュリティと環境性能を実現した。今回のC棟は、これまでの20年間にわたって富士通が蓄積してきた知見を、至るところで活用。時代の要請に応える最先端のデータセンターになる」と述べた。

富士通 代表取締役社長の田中達也氏
開所式でのテープカットの様子

4000ラックを収容可能、外気冷却も積極的に採用

 B棟に隣接する形で建設したC棟の建屋は、幅140メートル、奥行55メートル。1階~5階までの延床面積は3万9000平方メートル、ラック数は4000となる。

 外気利用時間を従来設備の年間約3250時間から、約7000時間へと拡大し、空気の自然対流を最大限利用することで、新たな建築構造と空調方式を採用した最新の空調設備を導入。空調などの設備に使用する電力を約60%削減した。電力効率の指標であるPUEでは、国内最高水準となる1.20を実現したという。

 「国内電力事情や地球温暖化問題など、地球環境に配慮した社会的責任が求められており、大量の電気を使用するデータセンターのエネルギー消費を減らすことは大切な取り組みとなる。新たな技術を活用することで、国内最高水準の環境性能を実現できた」(田中社長)と自信をみせる。

 また「クラウド化が進展するなか、ハイブリッドクラウドに対しても、柔軟な活用を可能するネットワーク基盤を持ったデータセンターであり、富士通だけでなく、クラウド事業者の利用も想定している」(田中社長)とした。

 さらに、災害・セキュリティ対策にも力を注いだデータセンターと位置づけており、「ITが経済活動を広範囲にサポートするなかで、事業継続性が重視されるとともに、同時に安全性に対する要望も高まっている。新たなデータセンターでは、電源、空調の二重化などを行っているほか、FISC対応も行っており、さまざまなお客さまのビジネスを、より高度に支えられるデータセンターになっている」(田中社長)という。

 富士通 アウトソーシング事業本部長の小林俊範執行役員は、「地球環境に優しいデータセンターであること、ハイブリッドニーズに対応したつながるデータセンターであること、事業継続に貢献する止まらないデータセンターであることをコンセプトとした」と説明。

 また、「自然対流を最大限に活用する建屋構造としており、館林は暑い場所だが、30度以下であれば外気を使うことができる。年間のうち、9カ月間は使えると考えており、夏でも夜間は使える。また、サーバー室暖気と冷気をミックスする『ミキシング方式』と呼ぶ新空調方式を採用し、送風ファンの出力を低減できる。さらに、ハイブリッドクラウドに最適な閉域ネットワークを提供。スピーディにハイブリッドクラウド環境およびマルチクラウド環境を提供できる。東西にコンロトールセンターを持っており、相互にバックアップしながらハイブリッドクラウド環境を実現できるのが特徴だ。また、免震構造に加えて、複数の電源を確保。不正侵入や誤操作を防ぐほか、脆弱性診断やアクセス監視により、外部からの攻撃に強い、止まらないデータセンターを実現している」と、その特長を述べた。

富士通 執行役員の小林俊範氏

 さらに、要件にあわせた3つのタイプのサーバー室を用意したのも、C棟の特徴だとした。

 主に産業、流通向けとするティア3準拠のサーバー室である「スタンダード室」、スタンダード室に比べて2倍規模の電源容量を持ち、クラウド運用のための高集積化にも対応し、クラウド事業者への提供も可能とした「クラウド室」、主に金融機関を対象にティア4準拠のFISC基準に対応したサーバー室を持ち、さらに、UPSの完全二重化の高信頼送電システムを導入した「FISC対応室」を用意している。

 「全体の約30%がクラウド室になると考えている。だが、需要にあわせて変更できるようにしている。3~5階までがサーバー室となっており、1フロアあたり6部屋を用意。各フロアの両端がクラウド室専用となっている。その他の部屋は、スタンダード室にもクラウド室にも変更することが可能。1部屋をひとつのモジュールと捉えて構成を変えていきたい。全体の3割を、富士通によるクラウドサービスで活用することになる」(富士通 アウトソーシング事業本部 ファシリティマネジメント統括部の南部裕行統括部長)とした。

 まずは、5階から活用をはじめていく予定で、2020年度前後には、C棟のフル稼働状態を目指すという。

 サーバールームへの入室の際には、富士通がこれまでデータセンターで採用してきた仕組みを採用。C棟から入館することは不可能で、A棟およびB棟から入館することになる。

 C棟の前室では、部屋内に数多く設置された小型カメラによって、入室している人数を検出。最大4人を超えた人数の場合にはアラームを出すなど、セキュリティを強化している。さらに、サーバー室に入った後、サーバーラックを開けるための鍵はキーステーションに保存したものだけを使用。静脈認証によって、指定された人が、指定されたラックしか開けることができないようになっている。また、サーバーにアクセスした履歴も管理しており、いつ、だれが、どのサーバーにアクセスしたかがわかる。

天井にはセキュリティカメラが設置されている

 スタンダード室に設置されているラックは、富士通が標準で採用しているラックに比べて2割ほど背丈が高いものであり、標準ラックが42Uであるのに対して、ここで使用しているラックは49Uタイプとなっている。電源供給は200Vが主体だが、100Vでの供給も可能だ。ラックは、前面吸気、背面排気のスタイルのため、前面がコールドアイル、背面がホットアイルとなっている。

まだラックが導入されていないスタンダード室の様子
ラックが導入されているエリア
スタンダード室に設置されたサーバーラックの様子
富士通の標準ラックよりも2割ほど背が高い
前面吸気となっている

 また、50センチメートルの床上げをしており、そこにネットワークケーブルと電源ケーブルを敷設している。

床下にはネットワークケーブルと電源ケーブルが敷設されている
床下にあるネットワークケーブル
床下のコンセントボックス
スタンダード室の分電盤
スタンダード室の床の様子

 クラウド室は、電源容量および回線数を2倍としており、定格で12kVAを供給。最大32kVAを供給できる。

 屋上には、外気取入口を設置。2つのフィルタを通じて空気を浄化。24個のエアダクトを通じてサーバールームに外気を送り込む。3~5階までにダクトを通すために、サーバールーム全体の約10%ものスペースを使っているというが、環境性能を高めることで電気コストの削減が可能であり、スペースを使った分のマイナスを十分取り込めると判断したという。また火山灰対策として、屋上でメンテナンス作業を行った作業員がデータセンター内に戻る際に、エアーシャワーを浴びるスペースが屋上のエレベータ横に配置されている。

 免震装置は、東日本大震災で震度5強の影響を受けながらも、安定的に稼働することができた館林データセンターB棟のノウハウをそのまま継承。受電設備やUPS、空調設備などを、すべてC棟のなかに配置。高減衰ゴム系積層ゴムを74台設置して、免震を可能にしているという。

 一般社団法人日本建築構造技術者協会(JSCA)の特級グレードを取得。PMLは2.0%の評価を得ているという。

富士通のデーセンターに導入されている免震構造
耐震型二重床
高集積対応構造

 田中社長は、「館林データセンターC棟は、富士通のデジタルサービス基盤を支えるデータセンターになる。ビジネスはもちろん、あらゆる社会活動を支える基盤になるだろう。2020年の東京オリンピックでは、富士通はデータセンターサービスのゴールドパートナーとなっており、それに向けて、高い技術力と経験を生かしていく」と述べた。

 また、小林執行役員は、「C棟は、FUJITSU Digital Business Platform MetaArcの中核拠点として活用。デジタルイノベーションを支援していくことになる」とした。

超高感度煙感知機
ガス消化設備
二系統受電設備
自家発電設備
高効率UPS設備

 なお、C棟およびB棟と隣接するA棟1階には統合監視センターが置かれており、2006年の拡張を経て、約410平方メートルのエリアに、1班あたり約30人の4班体制で、24時間365日の運用監視を行っている。C棟の管理もここで行うことになる。

 またA棟は、2017年度にはデータセンターの機能は終息する予定だが、統合監視センターは維持する。富士通ではワンデータセンターのコンセプトを掲げており、今後、各拠点の運用監視を統合することを目指すという。

 さらに富士通では、兵庫県明石の明石データセンターにおいて、今年7月に新たなF棟をオープンする予定である。

大河原 克行