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富士通研、ソフトウェアによるサーバー電源交換時期の自己診断技術を開発

 株式会社富士通研究所(富士通研)は23日、サーバーなどのICT機器に搭載されているデジタル制御電源のマイコン上にソフトウェアとして実装可能な、電源の交換時期の自己診断技術を開発したと発表した。

 ICT機器に搭載されている電源は寿命部品であり、一般的には複数の電源を利用して冗長化し、一方が故障しても継続動作できる構成を採ることで信頼性を上げているが、特にデータセンターなどの大規模な用途では、効率的な保守が課題となっている。

 電源を構成する部品の中で、入出力を安定化させる電解コンデンサーは、最も劣化しやすいものの一つとして知られており、これまでにもサーバーなどを通常運用しながら、その動作に影響を与えずに電解コンデンサーの劣化を監視する方法として、スイッチング電源におけるスイッチのオン・オフに伴う出力電圧の変動(リップル)を監視する方法が提案されていた。しかしリップルの大きさは出力電圧の数%程度と小さいため、リップルを高精度に測定するには追加部品が必要となり、実装面積や部品コストの要求が厳しいICT機器の電源向けには実用化されていなかった。

 今回、富士通研究所では、今回、電源モデルベース開発技術を応用した解析環境を構築することで、回路内部の直接の観測に成功した。電解コンデンサーの劣化度合いを変動させて取得したデータを解析した結果、電源出力の急変時の出力電圧を分析することにより、電解コンデンサーの劣化を測定できることがわかったという。

マイコンが取り込んでいる出力電圧信号(負荷変動時)

 また、制御マイコンが取り込んでいるデータをもとに、普段、ICT機器が動作しているときに発生する負荷変動量に対する出力電圧の変動量と、電解コンデンサーの劣化度の関係から、電源の交換時期を判定する新しい方式を開発した。

電解コンデンサーの劣化の進行と電圧変動量

 さらに開発した方式を、電源のモデルベース開発技術を用いた評価環境上にソフトウェア実装し、電源の劣化を監視する部品を追加することなく、交換時期を自己診断できることを確認したという。これにより、データセンターなどの運用において、電源の交換を計画的に行う事が可能となり、保守コストの低減と信頼性の向上を実現するとのこと。

 富士通研究所では、この技術を搭載した電源の実機試作とサーバーに接続した実証実験を進め、2018年の実用化を目指す。

石井 一志