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ネットにより多くのIoTデータを――モバイル回線からクラウドまで一括提供する「さくらのIoT Platform」、課金はメッセージ単位
(2016/2/8 18:11)
さくらインターネット株式会社は8日、モバイルにも対応したIoTプラットフォーム「さくらのIoT Platform」のアルファ版を4月に、ベータ版を9月に提供すると発表した。同日よりパートナー募集の受付を開始し、2016年度中にサービスの正式提供を予定している。
「どこでも誰でも手軽に今すぐに」をテーマに、モバイルネットワーク環境と、データの保存や処理を行うクラウドを組み合わせたIoTプラットフォーム。センサーや照明、自動車など、アップロードされたさまざまなデータが相関関係を持つことで、新しい価値やサービスの創出を目指す。また、その土壌を育てる目的として、より多くのIoTデータをアップロードしてもらうための料金体系や取り組みを用意している。
サービスでは、さくらインターネットオリジナルのモバイルネットワークモジュール(ソフトバンク株式会社とソラコム株式会社を用途別で選択)を通してL2接続した閉域網を用意。「Amazon Web Services(AWS)」やヤフー株式会社の「myThings」など、外部サービスとの連携機能や、クライアントがデータ取得時に利用するAPIゲートウェイ、ストレージなどを垂直統合型で提供。また、モジュールが送信したデータを外部サービスやAPIゲートウェイ、ストレージに割り振るデータルーターも搭載する。
IoT機器側のマイコンと通信モジュール間の通信にはUART/SPI/I2Cに対応。簡単なコマンド体型によりごく僅かなデータ量で済むほか、末端のデバイスでTCP/IPなど高度なプロトコルが不要で利用でき、IchigoJamやPICなど安価なマイコンでも連携可能。クライアント側でのデータ取得は、HTTPリクエストで行え、リアルタイムデータからストレージ内の過去のデータを呼び出すことができる。また、通信モジュールに対してプッシュ送信も可能だ。
料金体系はユニークで、モバイルネットワーク費用やサーバーコストといった月額料金ではなく、プラットフォームを行き来するメッセージと、第三者によるAPI経由のデータ取得が課金対象となる。また、IoT機器から得られたデータは、誰でもAPIで取得できるパブリックなもの(データは匿名化する)であれば無料で保管可能だが、APIで取得できないプライベートな秘匿データは有料。なお、より多くのデータをアップロードしてもらえるよう、第三者がAPI取得時に課金した一部を、利用者に還元する仕組みも備える。
通信モジュールは、パートナーとの共同開発により、一般的に数万円するものを1万円以下に抑えて出荷するとしている。このモジュールには、2年間100万メッセージ分を無料で提供。これは、2年間1分間隔で通信した場合に相当するという。超過分のメッセージに関しては、10万メッセージや50万メッセージといった単位での購入になるという。なお、アルファ版ではモジュールを無償貸与し、ベータ版および正式版ではモジュールの販売を行う予定だ。
さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏は、「大きな目標は、たくさんのデバイスがつながり、もっと大量のデータがインターネットに出ること」と述べた。データの総量が増えることで、データ解析などに使用するストレージやCPUの必要性が高まり、プラットフォーム事業者にとってのメリットを生む目的もある。
AWSやBluemixなどと専用線接続、システムトータルで閉域網内で運用可能
さくらのIoT Platformでは、すでにさまざまなプラットフォームやサービスとの連携が発表されており、AWSの「Direct Connect」のほか、IBMの「Bluemix」とも「Private Link」で接続可能。閉域網内のまま取得したデータを「ワトソン」で分析することもできる。また、BaaSのMilkcocoaとのAPI接続および、閉域網におけるセキュアなバックエンドサービスを構築できる。
一般的なサービスでは、ヤフーのmyThingsで「さくらインターネットチャンネル」をリリース予定。各チャンネルとさくらのIoT Platformを簡単に連携可能となる。また、アパマンショップとホームIoTの実現に向けた取り組みとして、賃貸事業者向けのスマートロックによる貸鍵業務の軽減や、レジアプリの「スマレジ」との連携も発表している。ハードウェアでは、エイビットとIoT通信モジュールの開発・製造を行うほか、インテルと「edison」を活用したIoTスカラシップを実施する。