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2016年の鍵はデジタルフレームワーク、SAPジャパン福田社長が方針説明

 SAPジャパン株式会社は3日、2016年の同社事業戦略について説明した。

 SAPジャパンの福田譲社長は、「2016年は、デジタル元年への対応を図る」とし、「ビジネスを支えるITから、ビジネスを変えるITへと変化し、それによってビジネスバリューを創出することになる。SAPは、25業種に対してサービスを提供してきたが、これらをデジタル時代にどう対応していくかが今後の課題になる。SAPは時代の要請に応えられ、ビジネスバリューを提供できるポジションにあると考えており、そこを具体的に実現するのがデジタルフレームワークになる」とした。

SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏
2016年のフォーカス

 デジタルフレームワークは、静のデータを活用しながらも、さまざまな要求にリアルタイムに対応できるということなどをコアの考え方のひとつととらえ、「こうしたデジタルコアと呼ぶ部分を中心とし、そこに顧客接点のデジタル化、サプライヤーとのコラボレーションにおけるデジタル化、従業員のデジタル化、モノとコトのデジタル化の4つを進めることで、デジタル変革を推進することができる。SAPでは、25の業種と、それに業務をかけあわせて整理。それをもとに、それぞれの業界における変化をとらえ、解決手段を、実際に動くソリューションとして提案する。これが、デジタルフレームワークとなる」と説明する。

 また、「すでに日本でも、電力、ガスなどのユーティリティ業界向けのデジタルフレームワークを提供。グローバルでは、すでに約10業種でデジタルフレームワークを提供している。今後、日本でもこれらのデジタルフレームワークを展開することになる。業種と業務を組み合わせた提案は、パッケージ時代から展開してきたSAPらしい取り組みのひとつであり、これをデジタル時代に展開していくことになる」などとした。

 さらに、2016年は、SAP HANAクラウドプラットフォームに力を注ぐ姿勢を示し、「SAP HANAクラウドプラットフォームは、包括的なビジネスアプリケーション構築および運用のためのプラットフォーム。低い導入コストが特徴であり、スタートアップからラージエンタープライズのビジネスまで幅広く対応できる」とした。

SAPのデジタルフレームワーク
SAP HANAクラウドプラットフォームに注力

 また、SAP HANAクラウドプラットフォームの強化にあわせて、国内に新たにデータセンターを設置する計画も明らかにした。

 「私はSAPに20年間勤務しているが、かつてはクラウドに一歩遅れるなどの反省点もあった。だが、いまのSAPは、これまでにないほどクリアに方向性を示すことができる企業になっていると感じる。S/4 HANAによって、半歩先を進んでいるのがいまのSAPである。S/4 HANAでは、実行系と情報系がひとつになり、ビジネスの過去と現在だけでなく、ERP自身が未来を予測することができるようになっている。価格をいくら下げれば、これから、どれだけ売れるのか、ということも予測できる。また、AribaやConcurで証明されるように、つなげることの強さは多くの人が感じている。また、S/4 HANAでは、コードを7割削減するなど、シンプル化している。未来を見通すチカラ、つなげるチカラ、シンプルに実現するチカラの3つに注力していく」と述べた。

 一方で、2015年の業績についても総括。「2014年7月に社長に就任して以来、1年半を経過するが、2015年は社長として初めて、1年間通期を務めた」と前置きし、「SAPジャパンの2015年の売上高は前年比6%増の6億3600万ユーロ(約800億円強)。クラウドの新規受注は193%増となり、ソフトウェアとサポートの売上高は5%増となった。クラウドビジネスは絶対額は低いが、予想を超える伸びを見せており、クラウドの伸長率は日本市場が特に高い」と語った。

 SAP HANA Enterprise Cloudは218%増、Customer Engagement & Commerceが396%増、Aribaが150%増、Success Factorsは20%増。さらに、Concur Japanも108%増となり、主要な顧客への導入が相次いだという。

 2015年は第4世代となったSAP S/4 HANA Enterprise Managementの提供を2月から開始し、2015年12月末時点で、全世界で2700社、日本では70社が導入したことも明らかにした。

 「グローバルでは9月末時点で1300社であったことに比べると、10月からの3カ月間でそれを超える導入数となった。2010年にHANAを発売して以来、史上最速のスピードで伸びている。HANAは2025年までの長期保証を表明しているが、S/4 HANAでしか提供されていない機能もあり、新規ERP導入の90%がS/4 HANAとなっている。日本では、22社のパートナーがS/4 HANAのビジネス展開において、レディ状態になっている」と語った。

 なお、HANAのユーザー数は、全世界で1万社に達しているという。

SAP S/4 HANA Enterprise Managementの提供を開始
S/4 HANAの採用社数は日本でも70社を数える

 また、「日本においては、準大手企業や中堅企業、中小企業の成長が高い。この市場向けの陣容も倍増にしている。かつてはSAPは高くて導入できなかったSAPが、いまでは、3分の1のコストで導入できるといわれている。国産ERPを含めて、10社を並べて検討したところ、一番安いのがSAPだったという声もある。品質に対する評価をもともと高い。中堅、中小企業の導入が促進されている背景はそこにある」と述べた。

 一方で、「SAPジャパンにおいては、グローカリゼーションが課題である。特に人材面をフォーカスしていく必要がある。半歩先で提案できる人材を増やしたい」と語った。

 2015年の全世界の売上高は前年比10%増の208億1000万ユーロ(約2兆7000億円)、利益は63億4600万ユーロ(約8000億円)。クラウドの新規受注は103%増と倍増。さらにクラウドの売上高は82%増、クラウドおよびソフトウェアの売上高は12%増となった。

 売り上げ、利益ともに過去最高を更新し、クラウド比率は32%に達したという。

 「2015年の業績は、当初予測や業界アナリストの予測を上回る結果となっている。世界経済の減速などもあったが、こういう時期だからこそ、企業経営者がSAPに対して投資を行うという傾向が明確に出た。クラウドが倍増しているのに加えて、オンプレミスも5%増となっている。また、オンプレミス事業の粗利率は86.3%から、86.6%に上昇しており、クラウドは64.3%から66.0%と、こちらも粗利率が上昇している。5年前はクラウド比率はゼロだった。クラウド比率が32%まで拡大することで、売り上げには一時的にネガティブなインパクトがあるが、中長期的な収益基盤を確立することができる。先の見通しが堅くなる」とし、「データセンターの増強、クラウドの人員増加を前倒しで実施している。SAPは、2018年には、クラウドとオンプレミスを逆転させる方針を出しているが、それに向けて着実に進展している」とした。

 また、「SAPは、過去6年間で、M&Aの投資が2兆円を超えている。これもクラウドの比率を伸ばすことにつながっている。投資するための強固な基盤がある点もSAPの強みである」などと述べた。

大河原 克行