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OSS構成管理ツール「Puppet」のユーザー会が日本でも発足、「ユーザー同士の横のつながりを広げたい」
(2015/11/5 06:00)
10月28日、都内において、日本で1回目となる「Puppetユーザ会」(以下、ユーザ会)が開かれた。この開催に先立ち、日本の「ユーザ会」の会長であるNTTデータ 基盤システム事業本部の菅原亮氏、および来日した米Puppet Labs CIOのNigel Kersten氏に話を聞いた。
Puppetとは、サーバーの設定やアプリケーションの導入・設定といったセットアップを自動化するツールだ。システム管理者が複数のサーバーを同一の構成でセットアップしたり、似たような手順で何度もセットアップする場面は多いが、それぞれを個別にセットアップするには時間がかかる上にミスも起こしやすい。特に近年はクラウドサービスの拡充によってサーバー台数も爆発的に増加する傾向にあり、なんらかの自動化ツールを導入することは必須になりつつある。このようなツールは構成管理ツールや構成自動化ツールなどと呼ばれることもあり、Puppet以外にも「Chef」や「Ansible」などのツールが有名である。
Puppetの「ユーザ会」を日本でも立ち上げようと思った理由として、菅原氏は、「Puppetは大規模なシステムの管理に非常に役立つツールだが、ユーザー同士の横のつながりが少ないと思う。そこで、Puppetについてのさまざまな情報交換ができる場を提供するために『ユーザ会』を立ち上げた。ほかのツールのユーザーには、声の大きな(発信力のある)人が多いが、Puppetにはそういう方がまだ少ないようで、あまり情報が出回っていないように感じている」と述べた。
しかし、Puppetに興味を持つユーザーは決して少なくないよう。1回目となる「ユーザ会」のイベントも、申し込みだけで会場が満員になっている状況だという。実際、PuppetのOSS(オープンソースソフトウェア)版はサイトから自由にダウンロード可能であるため、潜在的なユーザーは決して少なくないのだろう。
日本以外での「ユーザ会」の活動について、Kersten氏は「さまざまな国や地域にPuppetの『ユーザ会』があり、その規模や活動内容もさまざま。実はわれわれの知らない間に『ユーザ会』が発足していることもあり、『あれ、いつの間にできたの?』と驚くこともある」と語った。
さらに「ユーザ会」について同氏は、「Puppetのユーザー同士で情報を交換する以外にも、まだPuppetを使っていないが興味を持っている人に対し、情報を提供する活動も行っている。日本では難しいかもしれないが、『こんなスキルを持ったエンジニアが欲しい』あるいは『自分はこんなことができる』といった仕事の情報が交換されることもある。一方でわれわれにとっては、『ユーザ会』のようなコミュニティを通じて、現場のユーザーから直接フィードバックがもらえることがメリットだと思っている」と述べ、日本以外でもコミュニティが積極的に活動している実情を語った。
また菅原氏に、いくつかの構成管理ツールの中から、なぜPuppetを選んだのかを尋ねたところ、“個人的な意見”としながらも、「PuppetはChefよりも大規模な管理に向いたツールだと思っている」と回答してくれた。
その理由として菅原氏は、「マニフェスト」と呼ばれるPuppetの構成管理情報の記載が、ほかのツールよりも自然言語に近く、比較的容易に内容を理解できる点を挙げている。「SIerの立場から言わせてもらうと、システムがカットオーバーしてしまえば、担当していたSIerは現場を離れてしまう。その後にシステムを管理する人が、Puppetが何をしているかをすぐに理解できることは、とても重要」(菅原氏)。
マニフェストについては、Kersten氏も「例えばChefではrecipe(Puppetのマニフェストにあたる情報)をRubyで書く必要がある。私自身は、Rubyは良い言語だと思っているが、多くのシステム管理者にとって、システム管理のためにプログラミング言語を学習することは容易ではない。また、大規模なシステムを管理する場合、管理のための手順書が必要になるものの、Puppetのマニフェストは、そのまま手順書としても利用可能なため、わざわざWordなどでドキュメントを書く必要がない」と語っている。
さらにKersten氏は、Puppetのセキュリティについても言及し、「Puppetはクライアント/サーバー型の仕組みだが、その間の通信はすべてSSLに対応している。常に安全な方法で情報をやり取りしている」とした。
なお、「ユーザ会」以外のコミュニティ活動として、Puppet Labsでは「Puppet Camp」と呼ばれるイベントを世界各国で開催している。菅原氏も、2014年に日本で行われたPuppet Campに参加しており、日本の「ユーザ会」を立ち上げるきっかけになったという。
「2014年のPuppet Campの参加者の多くは、日本のユーザーではなく、たまたま日本にいた外国のユーザーか、熱心なPuppetユーザーが来日して参加していた。日本での知名度が少ない理由のひとつには、日本語のドキュメントが少ないことにあるように感じた。それから、Kersten氏をはじめとするPuppet Labsの方々に、日本語ドキュメントの必要性を主張してきた」と菅原氏。
なお、現在入手可能な日本語のドキュメントは、菅原氏をはじめとするPuppetユーザーが提供したものであり、現在も翻訳の協力者を募っている。また、日本での次回Puppet Camp開催は、来年の予定であるという。
今後の「ユーザ会」の活動について菅原氏は、「例えば、Puppetはビッグデータの世界でも有用なツールだ。私自身もPuppetとHadoopを組み合わせた仕組みを手掛けたことがあるが、PuppetとHadoopは非常に親和性が高い。もちろんその他にもPuppetにはさまざまなメリットがあり、これらの有用な情報をユーザー間で共有するためにも、ユーザー同士の横のつながりは大切だと考えている」と述べた。
また、「ユーザ会」への入会資格は特に設けておらず、「Puppetのユーザーはもちろん、Puppetのようなツールに興味がある人や、ほかのツールと比較検討したい人なども積極的に参加していただきたい」と語っている。
一方Kersten氏も「Puppetのコミュニティには多くのベンダーも含まれている。ユーザー同士、あるいはユーザーとベンダーの間で知識を交換し続けることで、よりレベルの高い技術が生まれるだろう」と述べ、今後もPuppet Labsは積極的にコミュニティを支援していく方針であることを明らかにした。