ニュース

日本IBM、モバイルアプリ用プラットフォーム日本での普及に向け機能強化

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は5日、モバイルアプリ開発のための開発基盤「IBM MobileFirst Platform」に行動解析機能、ビッグデータを活用するアプリ開発機能を付加し販売を開始する。価格は、200アドレス可能デバイスでの利用の場合、135万円。

 MobileFirst Platformは2012年、ワンソースでマルチOS対応な開発基盤として登場。2013年から2014年にかけてエンタープライズアプリ開発のための機能強化が行われ、テスト自動化、SAPなどパッケージとの連携機能が設けられた。

 独自のモバイルアプリ開発環境を持ち、さらに他社が提供する開発ツールで開発されたアプリとの統合、Cordoba、ODataなど業界標準技術、HTML5/JavaScriptによるハイブリッドアプリ開発、ネイティブ/Webアプリ開発、これらを組み合わせた開発アプローチなど、多様な開発に対応する。また、企業の基幹データとの連携、位置情報、モバイルアプリが取得するデータを収集し、パーソナライズされたアプリとして活用していくことができる。

 このプラットフォームは欧米中心に普及が進み、ワールドワイドでは1300社が利用している。日本で社内アプリ開発用に注目が高まっていることから、機能を強化して販売を加速させる。

 「アプリの数が1種類、2種類程度であれば独自に開発したものを管理し、セキュリティのためのアップデートなどを行うことは手動でも可能だが、さらにアプリが増えていくようになればプラットフォームなしにセキュリティ対策などをとっていくことは難しい。今後は日本でも企業ユーザーを中心にモバイルアプリ活用が増えていくのではないか」(執行役員 クラウド事業統括担当 小池裕幸氏)。

MobileFirst Platformの進化
日本IBMの執行役員 クラウド事業統括担当 小池裕幸氏
モバイルアプリ開発に取り組む企業の新たな4つの課題

 そのほかの特徴としては、まずフロントエンド部分については、「すでにアプリ開発を行っているのであれば、そのやり方を変える必要がない。MobileFirst Platformの開発ツールを使わなくても、これまで使ってきた開発技術をそのまま継続して利用できる。その点まで含めたプラットフォームといえる製品」(クラウド事業部 クラウド・テクニカル・ソフトウェア 佐々木志門氏)と選択の自由さが特徴となっている。

フロントエンドの開発ツールは自由
クラウド事業部 クラウド・テクニカル・ソフトウェア 佐々木志門氏

 バックエンド部分については、セキュアであることが求められることから、オフラインであって、暗号化を実現。ビジネスロジックの流出を防ぐために、データだけでなくビジネスロジック含むリソース部分を暗号化し、復元することができないようにした。企業システムとの連携は、Mobileに最適化された連携機能を提供し、HTTP、SQL、RESTFuLに対応する。また今回から新たにCloudant NoSQL DBに対応し、高可用、分散データストアを実現。運用管理の負荷を削減し、新規アプリ要求を迅速化する。

バックエンド部分はセキュアであることが求められる

 今回、屋内位置情報分析機能、バグレポート管理、Storeレビュー解析、UIフロント系機能強化、クラウド連携などの機能強化が行われた。

 屋内位置情報分析機能によって、Beacon、Wi-Fiといったものの位置情報を活用し、行動分析からパーソナライズしたアクションの分析、予測を行う。

 開発にあたってはクラウドと組み合わせることで、アプリ開発のスピードをさらにあげることができることも特徴となっている。

 IBMではモバイルの活用がコンシューマはもちろん、エンタープライズにも大きな変革を及ぼすと見ている。コンシューマ向けに提供するアプリの世界では、モバイルアプリの出来がブランドに大きな影響を及ぼすとしており、「モバイル体験で不満を持つお客さまは、二度と商品を購入しなくなるという調査結果が出ている。モバイルアプリは企業の生死を左右する、ミッションクリティカルなものになってきている。また、2017年時点では、お客さまと対面する社員が使うアプリは100%モバイルを起点として作成されたものになるという調査もあり、モバイルがビジネスを大きく左右する存在になりつつある」(小池氏)と指摘する。

 モバイルアプリ開発にあたっては、利用者を飽きさせないための継続的な機能改善、脆弱性への対応などセキュリティ対策、顧客の行動を分析し洞察を獲得するパーソナライズ、センサーなどのデータも含めた高度なデータの分析など新しい課題が生まれている。

 「アプリによっては社内の基幹データにアクセスするものもあるが、セキュリティ対策を含めて考えると、多数のアプリで個々に基幹データとアクセスする方法を考えて対応するといったことになると、トラブルが起こりやすい。そこで今回提供するMobileFirst Platformがセキュリティ、基幹システムとの連携といった面倒な部分は請け負う。企業側は新しい顧客体験といった部分に注力することができるようになる」(小池氏)。

行動解析からパーソナライズされたアクションへ
クラウドとの連携でアプリ開発のスピードをアップ

 会見には、自社で開発したセンサーをゴルフクラブに取り付けることで、ゴルフスイング解析アプリを開発したセイコーエプソンの担当者も登場した。「以前はアプリ開発に時間がかかりすぎ、納期が問題となるというトラブルが起こっていた。そこでMobileFirst Platformを採用することで、開発にかかる時間を削減することができた」(セイコーエプソン ウエアラブル機器事業部 S企画設計部 部長の加納俊彦氏)と、このプラットフォームを採用したことのメリットを挙げた。

セイコーエプソン ウエアラブル機器事業部 S企画設計部 部長の加納俊彦氏
パッティングを5つの観点で分析

 なおIBMの小池氏は、「今回はモバイルという新しいもの用のプラットフォームだが、コンピュータの歴史を振り返ると、当初は独自に開発していたアプリケーションを効率的に開発、運用していくためにプラットフォームを使うことは当然の流れといえるのではないか」と言及している。

三浦 優子