ニュース

「日本でやることはまだまだ多い」、デルの平手智行次期社長が記者会見

 デル株式会社は24日、都内のホテルにおいて、2015年8月1日付けで同社代表取締役社長に就任する平手智行氏の就任会見を行った。

 平手次期社長は、「マイケル・デルと対話する機会があり、そこで熱い志を感じた。非上場化もそうした熱い思いによるものであり、ソリューションを世の中で役立てたいという気持ちを強く感じた。顧客にとって必要なものを、必要な形で提供するための体制づくりをしており、その姿勢がブレていない。デルの強みは、オープンであり、その姿勢をずっと崩していない」と、デル入りした背景を語った。

 さらに、「1992年にIBMが業績不振に陥り、プロダクトカンパニーからソリューションカンパニーに転換したが、デルも、この8年間で、ソフトウェア、ツール、セキュリティの企業を相次ぎ買収し、品ぞろえを広げてきた。ここに、私自身のIBMでの経験を生かすことができる。日本は重要な市場であり、デルのこの8年の取り組みが、化学反応となって影響を及ぼすことができると考えている」と述べ、自身の経験とデルの強みを生かして展開できるとアピール。

 さらに日本の市場については、「まだ、ホワイトスペースもある。顧客の視点に立ち、パートナーと一緒になって、製品、サービス、ソリューションを提供し、顧客の経営支援を行っていきたい」とした。

デルの代表取締役社長に就任する平手智行氏

 「私は、25年間にわたるIT業界での経験があるが、4年ほど通信業界に籍をおいていた。7月から引き継ぎを行っており、顧客、パートナーのもとを訪問すると、『お帰り』という言葉をかけていただいた。グローバルの経験も持っているが、すべての期間において、日本の顧客、パートナーとひざをつき合わせて、新たなことに取り組んできたという自負がある。新たな立場で、顧客、パートナーに恩返しをしたい」とも語っている。

 平手次期社長は、1986年に米チャップマン大学を卒業後、1987年に日本IBMに入社。2000年にはアジア太平洋地区経営企画、2002年には米IBM本社の戦略部門を経て、2006年に日本IBM執行役員兼米IBMバイスプレジデントに就任。通信、メディア、流通、公益などの業種別事業や、サービス事業を統括した。2012年1月に米Verizon Communications エリアバイスプレジデントおよびベライゾンジャパン合同会社の社長に就任。2015年7月に、デル株式会社に入社。現在、デルの執行役員副社長を務め、8月1日付けで、米Dell バイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任する。

 「現時点で、デル日本法人になにかしらの課題があるわけではない。だが、IoT時代に向けて、ITをインテグレートしていくことが求められており、同時に、イノベーションを提供していかなくてはならない。スピード、フレキシビリティ、コストに関心が集まっており、ITに対しては、アジリティ、フレキシビリティ、シンプル、コネクティビティが求められている。これらの要求に応えることができるのがデルの特徴であり、日本においてやることはまだまだ多い」とした。

 一方、現社長の郡信一郎氏は、日本法人の社長退任後、8月1日付けで、Dell 日本アジア太平洋地域担当 副社長 グローバルセールスオペレーションに就任することを明らかにされた。当面は、日本からオペレーションを行うが、日本アジア太平洋地域の拠点となるシンガポールに異動する可能性もあるという。

 郡氏は、「新たな仕事では、日本、中国、南アジア、インド、オーストラリアが対象になる。私自身、強い要望もあり、それがかなった。日本法人の社員にとっても、目標となり、シンガポールや米国本社で勤務するといった流れができることを期待している」としたほか、「社長就任直後から、私の役目として後任社長を探すことに力を注いできた。私自身、4年1カ月という期間、社長を務め、これがひとつの区切りと考えた。新社長の平手は、25年間の業界経験とグローバルの知見、そして決断力がある。さらに、直販、間販の両方でネットワークを持つ強みもある。デルが、真のソリューションカンパニーになるための新たな時代を切り開くには最適な人材だといえる」と述べた。

現社長の郡信一郎氏

 郡社長は、2011年7月に社長就任してからの4年1カ月間を振り返り、「社長就任時には、デルが、ソリューションを提供できる会社、信頼される会社になることを目指した。また、デルをPCの会社から、ソリューションプロバイダーへ変革すること、直間(直接販売と間接販売)の両輪体制へと変革することを目指した。そのために、組織を変え、社員のマインドを変え、顧客とパートナーの視点からソリューションを提供する体制とした。180億ドルを投資し、30社以上を買収し、そのうち8割以上がソフトウェアおよびITセキュリティ関連の会社。製品の幅も広がり、顧客のすそ野も広がった。2013年にはデルソフトウェアを日本に設立し、セキュアワークスの事業展開も開始した。2014年にはアジアで初となるセキュリティオペレーションセンターを開設し、Wyseテクノロジーも日本における事業体制を集約した」などとした。

 なお郡社長によると、セキュアワークスは、海外への事業展開のなかでも日本が最も早い成長を遂げており、直近では200%以上の成長となったほか、ソニックウォールは2014年に国内ナンバーワンシェアを獲得したという。

 「2011年時点では、デルは真のソリューションプロバイダーであると回答した企業の比率は約4割。そして、1割がノーと答えた。だが、昨年秋の調査では、イエスと回答した企業が72%、ノーと答えた企業は1%未満。認知度だけでなく、実績も高めることができた。顧客の期待が変わっている」とした。

 また、社長在任期間中に、「ソリューション提案の強化」、「直接販売と間接販売の両輪の確立」、「非上場化による意思決定の迅速化」という3つの変革に取り組んだことに触れ、「仮想化やSDNなどの領域において、業界のリーダーとして先行導入したほか、ニュータニックスなどのコンバージドインフラにも力を注いだ。統合ITカンパニーとして、エンド・トゥ・エンドのソリューションを提供することができた。また、パートナーとの連携のために人員を2倍に増加。パートナーと製品型番の利用を共通化して、業務の簡素化も行った。同時に、パートナーとの連携による自営保守も開始した。これまでデルを競合とみていたパートナーと協業関係を構築することができている。さらに、非上場化によって、意思決定が迅速化し、顧客を見た経営が行えるようになってきた。短期的な成果ではなく、中長期的な視点で戦略を推進できるようになった」などと述べた。

現社長の郡信一郎氏(左)と次期社長の平手智行氏(右)

大河原 克行