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ハンズフリーや視認性の良さを生かして進化、エプソンが業務用スマートヘッドセットを発表

幅広い作業現場の効率化を実現する機能を搭載

スマートヘッドセット MOVERIO Pro「BT-2000」

 エプソンは23日、業務用途向けの新製品として、スマートヘッドセット MOVERIO Pro(モベリオ プロ)「BT-2000」を9月より販売開始すると発表した。

 エプソンでは、独自のマイクロディスプレイ技術・光学技術を生かし、2011年11月に当時としては世界初となるスタンドアローン型スマートグラス「BT-100」を、コンシューマ用途向けに発売。2014年6月には小型・軽量化し、アプリによる映像以外の新しい世界の体感の可能性をさらに広げた「BT-200」を発売している。

 今回の新製品「BT-2000」は、「BT-200」をベースに、現場作業用途への最適化と機能強化を図ったスマートヘッドセットとなっている。

スマートヘッドセット MOVERIO Pro「BT-2000」を披露するエプソン販売 代表取締役社長の佐伯直幸氏

 エプソン販売 代表取締役社長の佐伯直幸氏は、業務用途向けにスマートヘッドセットを投入する狙いについて、「コンシューマ用途向けスマートグラスとして『BT-200』を発売したが、年々ビジネス用途でのニーズが高まっており、実際に導入事例も増えてきている。この背景には、工業のデジタル化や物流機能の強化、世代交代の進展、ICT技術の革新などが挙げられる。また、スマートフォンやタブレットを作業現場で利用する場合、操作する際に両手がふさがってしまうという課題もあった。そこで、こうした作業現場のニーズに応えるべく、ハンズフリーや視認性の良さといった『BT-200』の強みを生かしながら、業務用途向けに進化させたスマートヘッドセット『BT-2000』を開発した。これを機に、ビジネス市場にも『MOVERIO Pro』の事業領域を拡大していく」と述べている。

 新製品「BT-2000」は、メガネのように装着して使用する業務用ウエアラブル情報機器。映像を確認しながらハンズフリーで作業できるため、視線を対象物から移動させず作業することができる。さらに、音声コマンドにも対応することで、コントローラーのボタン操作なしで作業を続けることが可能となっている。

セイコーエプソン 取締役 ビジュアルプロダクツ事業部長の渡辺潤一氏

 「BT-2000」の機能強化ポイントについて、セイコーエプソン 取締役 ビジュアルプロダクツ事業部長の渡辺潤一氏は、「作業現場の担当者が長時間着けていても疲れないように、装着性を追求した。本体重量を頭部全体でバランスよく支えるストレスフリー構造で、固定するヘッドバンドの長さは頭の大きさに合わせて調節することができる。また、複数の作業員で共有する際に、交換可能なインナーパッドを3種類用意している。さらに、必要な時に情報を確認できるよう、ディスプレイ部分が上下に可動する構造を採用。映像を見ないときには上に跳ね上げることで、実視野を確保できる」と、装着性と視認性を大幅に向上したと説明している。

 ヘッドセットの機能としては、両眼シースルータイプのグラスに高輝度・高精細ディスプレイを搭載。照度センサーも備えており、作業者は、作業対象や周囲の情報を確認しながら作業することができる。

 映像表示は、鮮やかなフルカラー(QHD:960×540)で、表示画像と作業視野を重ね合わせて、より的確なオペレーションを行うことが可能となっている。また、高精細ステレオカメラを搭載し、500万画素のクリアな動画・静止画を撮影できる。さらに、ジャイロセンサー、加速度センサー機能を備えた新開発の高精度センサーIMU(慣性計測ユニット)や地磁気センサー、GPSを搭載。使用者の向きや移動速度、移動距離を高い精度で測定する。このほか、IP54準拠の防水防塵仕様で、水滴がかかる場所や埃が多い作業環境下でも安心して使用できる。

 コントローラーの機能では、グローブを装着していても持ちやすい凹凸ボタンを採用。ボタンの大きさが異なるため、直感的な操作が可能となっている。また、作業者ごとに機能割り付けができるプログラマブル機能キーに対応している。

 通信機能は、干渉が少ない5GHz帯のWi-Fiに対応し、安定した無線通信を確保。音声コマンド機能を備えているため、コントローラーを使用せずに操作することも可能で、Wi-Fiネットワークがない環境下でもスタンドアロンで使うことができる。

 バッテリーは、2つのバッテリーで約4時間駆動を実現。ホットスワップ機能により、電源を落とさずにバッテリーを交換することができる。

「BT-2000」による遠隔支援のデモ

 「BT-2000」が狙う利用シーンとして、渡辺氏は、「現場での作業支援」、「遠隔地と結んだ作業支援」、「位置情報を活用した作業支援」の3つのシーンを挙げた。

 「現場での作業支援では、作業対象を見ながら、必要な指示、手順を重ね合わせることが可能だ。

 遠隔地と結んだ作業支援では、遠隔地のオペレーターや熟練者と作業者を結び、現場状況をリアルタイムに共有し、作業支援を受けることができる。

 位置情報を活用した作業支援では、高精度センサーによって作業員の位置情報を検知し、的確な作業支援を行うことができる」としている。なお、発表会では、現場の状況を映像で共有し、遠隔地から画像と音声で効率よく支援を行う遠隔支援のデモンストレーションが行われた。

エプソン販売 取締役 販売推進本部長の鈴村文徳氏

 販売戦略については、エプソン販売 取締役 販売推進本部長の鈴村文徳氏が説明した。「『BT-2000』は、作業現場の業務を革新する作業支援型スマートヘッドセットとして、製造・設備から流通・物流、旅客・運輸、安全・安心、ライフライン、土木・建設など、幅広い現場に向けて拡販展開していく。販売にあたっては、開発パートナーとの協業によって、それぞれの現場ニーズに合わせたシステムやソリューションを提案する。開発パートナーに対しては、製品情報やデベロッパーズガイド、開発キット、保守メニューなどを適切なタイミングで提供していく」と、開発パートナーと連携しながら幅広い作業現場の業務改善を推進していく考えを示した。

 「BT-2000」の価格はオープンプライス。同社では、今後3年間で約1万台の販売を予定している。

【お詫びと訂正】
初出時、鈴村氏の写真が渡辺氏になっておりました。お詫びして訂正いたします。

唐沢 正和