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日本電産と日本IBMがIoT分野で協業、早期異常検知による生産設備の稼働率向上など図る

 日本電産株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は22日、ビッグデータ解析技術に関する取り組みを共同で開始したと発表した。日本電産グループのモータを組み込んださまざまな生産設備・機器における、「早期異常検知による稼働率向上」「要因分析の効率化による停止時間の短縮」を主な目的として実施する。

 グループの製品をIoT化し、付加価値を高める戦略を展開している日本電産では、従来の売り切りモデルからIoTを活用したソリューションビジネスモデルへの転換を図るために、保守サービスを含めたライフサイクルサービスを提供することが大きな課題になっている。

 そのためには、故障を事前に把握する予知診断と、故障時に的確な対策を打つ要因分析の効率化が必要になっており、その実現に向けて、日本IBMとの取り組みを進めているとのこと。この協業では、日本IBMが、IBMがグローバルで蓄積してきた異常検知・予知保全におけるスキルや知見を生かし、コンサルティング、ソフトウェアの活用、システム構築を提供しているという。

 具体的な取り組みとしては、日本電産シンポのプレス機で「早期異常検知による稼働率向上」の技術開発を開始した。従来は、プレス機の熟練技術者が監視システムの画面を見て、異常発生の有無およびその対処法の判断を行っていたが、今回はさまざまなセンサーの相関関係から得られるデータを分析し、人が気づく前に異常を検知し、不具合発生前に対処できるシステムの構築を目指している。

 最初に顧客ニーズを分析した結果、プレス機現場での不良要因の多くが金型起因であることが判明し、金型起因の問題を事前に予知することで、稼働率の向上につながることが分かったという。

 この取り組みでは、プレス機に各種センサーを装着して集めたデータを分析し、その結果から金型を含む製品異常発生の検知が可能になったとのことで、顧客サイドでは、金型の状態を「金型ヘルススコア」という数値で監視すれば、金型起因の停止時間の低減や金型寿命を延ばせ、プレス機の稼働率向上につなげられるとしている。

 今後両社では、2015年中に、日本電産グループの海外プレス機工場で「異常発生時の要因分析」に取り組む予定。従来のプレス機では、製造不具合の要因究明と対策は個人の技量に依存していたものの、これが実現すると、ビッグデータ分析により、高い精度で短時間に要因を究明し、属人化しない適切な対策が可能になる。

 さらに、今回開発したビッグデータ解析技術を活用した異常検出モデルを、プレス機以外の日本電産グループの機器・装置に展開し、稼働率の向上につなげていく考え。日本電産で十分に実証できた段階で、IoTソリューションとして、日本電産グループの機器・装置に実装し、日本電産による外販も進めるとしている。

石井 一志