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企業におけるデータ活用のハブ的存在を目指す――。トレジャーデータ、2015年度事業戦略を発表

 トレジャーデータ株式会社は4日、2015年度における事業戦略を発表し、今後は、以前からフォーカスしていたアドテクやゲームといった市場に加え、デジタルマーケティングおよびIoT市場により注力していく方針を明らかにした。

 記者発表会に登壇した米Treasure Dataの芳川裕誠CEOは「2011年の創業以来、米国と日本に拠点を置きながら、ビッグデータの収集/分析サービスを展開してきたが、ここにきてようやくテクノロジスタートアップから“ふつうの会社”へと体制が整ってきたことを実感する。今後はデジタルマーケやIoTといった市場を中心に、データ活用のハブ的な存在としてより多くのお客さまのビジネスに貢献していきたい」と語り、さらなる事業の拡大を目指す。

米Treasure Dataの芳川裕誠CEO

 2011年にシリコンバレーで創業したTreasure Dataは、クラウド上に構築されたHadoop環境に生データを集約し、データの保管から分析までをワンストップで提供するデータマネジメントサービス「Treasure Data Service(TDS)」を主力事業とする。ビッグデータやHadoopへの注目が高まる風潮とあわせて同社も順調に事業を伸ばし、米国だけでなく日本市場でも、無印良品、すかいらーく、パイオニアなどを中心に着々と導入企業を増やしつつある。なお、日本法人であるトレジャーデータの責任者として、2014年7月に三橋秀行氏が代表取締役社長に就任している。

おもな国内導入企業
トレジャーデータ 代表取締役社長の三橋秀行氏

 「Treasure Dataのプラットフォームに保存されているデータ件数は18兆にも上り、いまこの瞬間にも1秒間で50万件のデータが集約されている。これはどんな企業にとってもデータ活用が重要な課題になっていることを表している。現在、われわれのもとにご相談に来られるお客さまはIT部門の担当者よりも、現場で実際にビジネスを見ている方々が多い。案件のサイズが大型化しているのも最近の特徴。GoogleやFacebookといったテクノロジージャイアントだけでなく、一般的な企業がビッグデータを活用する必要性に迫られている」(芳川CEO)。

 こうしたビッグデータ活用のニーズに拍車をかけているのが昨今のデジタルマーケティングとIoTの隆盛だ。特に製造業におけるIoTの普及は社会的にも大きく注目されている分野であり、日本法人のトレジャーデータとしても積極的に獲得したい市場でもある。

日本市場ではデジタルマーケティングとIoTに注力していく

 三橋社長は「IoTという言葉は知っているが、何ができるのかは知らないという人がほとんど。トレジャーデータとしては、IoTがどういうビジネスで役に立つのかを積極的に示していきたい」と語り、IoTの活用が見込める分野として

・ユーザーの利用状況の把握や商品企画など新たなマーケティング
・サービスの迅速化や品質の改善などQoL(Quality of Life)の向上
・従来のM2M(Machine to Machine)をベースにした製造現場の“カイゼン”

の3つを挙げ、特にマーケティングを促進するIoTに注力していきたいとしている。

 すでに、アットマークテクノが開発するIoT用ゲートウェイ「Armadillo-IoT」にログコレクタの「Fluentd(Treasure Dataが開発するオープンソースプロダクト)」を搭載し、センサーデータをTDSに収集するプロジェクトなどがスタートしており、IoTにおける新しい市場を積極的に開拓していく構えだ。

札幌のアットマークテクノと協業し、IoTセンサーデータ収集プロジェクトを実施中

 芳川CEOとともに米国から来日したTreasure Dataの太田一樹CTOは、同社の技術戦略について「一般の企業にはデータ専門の人材はほとんどいない。われわれはデータ基盤のプロとしてそのギャップを埋め、どんな企業でも初期投資を必要とせずに、ものの数分でデータ活用を始められる環境を提供する。データの収集という泥臭い部分を世界に通用するレベルで担うのがわれわれの仕事。Fluentdやembulk(データ転送ツール)といったオープンソースの開発に注力しているのもそのため」と語り、「企業の皆さんはあらゆるデータをTreasure Dataのプラットフォームに入れてほしい。われわれはそれをあちこちにつなげていくハブとしての役割を果たしていく」とあらためてデータ活用における“ハブ”として同社のサービスが機能していく方針を強調する。

Treasure Dataの太田一樹CTO

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 Treasure Dataが技術的にユニークな点は大きく2つある。ひとつはオンプレミスのバルクデータをごく短い期間でクラウド上に移行できること、もうひとつは移行後はそのままクラウド上でのデータ収集に切り替え、分析までワンストップで行えることだ。

 太田CTOは「データの収集がこれほど簡単で、しかもスキーマレスな状態での収集/分析を可能にするプラットフォームは世界にひとつだけだと思っている」と太田CTOは強調するが、Treasure Dataは創業以来、多くの企業にとって“やりたくない”業務、太田CTOの言うところの“泥臭い部分”であるデータの収集/集約にこだわり続けてきた。順調な成長の背景には、Treasure Data自身がFlentdやembulkの開発を含め、データ基盤技術に対する継続的な投資を行ってきたことが大きい。日米の両方において優秀なエンジニアのハイアリングに注力してきたのもそのあらわれだ。

 発表会では最近の事例としてリクルートグループ3社(リクルートライフスタイル、リクルートマーケティングパートナーズ、ブログウォッチャー)によるTDSのアダプションが紹介された。リクルートグループは世界でもトップレベルの規模を誇るHadoop導入企業として知られるが、その運用はこれまで自前で行っていた。その一部をTreasure Dataに任せる方針に変えたということは、技術的な信頼を寄せているからにほかならない。

リクルートライフスタイルのTDS導入事例。TDSはBIツールのTableauと相性が良く、多くの事例が発表されているがこれもそのひとつ

 自社技術の向上に力を入れる一方で、冒頭で芳川CEOがコメントしたとおり、テクノロジベンチャーからの脱却を同社が目指しているのもまた事実だ。日本法人の責任者に三橋社長を置き、昨年7月には、米国本社に元8x8のダン・ワイリック(Dan Weirich)氏をCFOとして迎えている。

 今年の1月にはシリーズBを完了して1500万ドルの資金を新たに調達し、企業として新しい成長フェーズに入っていることは間違いない。芳川CEOは「日本と米国以外の地域での引き合いが増えてきており、すでに韓国市場には進出を果たした。今後はよりグローバルな成長を目指す」としており、テクノロジ企業として絶え間なくイノベーションを続けながら、ベンチャーからグローバル企業への転換も同時に図っていく方針を明らかにしている。

 以前から太田CTOは「Treasure Dataは数年以内にNASDAQ上場を目指す」と公言しているが、技術と組織の両面から着実にそのゴールに向かって走り続けているのはたしかなようだ。

【お詫びと訂正】

  • 初出時、太田氏の名前を誤って「大田」と表記しておりました。お詫びして訂正いたします。

五味 明子