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「クラウド時代に求められる基盤を提供する」~Oracleのハードウェア戦略
Software in Siliconを採用したSPARC M7プロセッサを年内投入予定
(2015/4/10 06:00)
日本オラクル株式会社は9日、「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」の開催にあわせて、同社のハードウェア製品戦略について説明した。
日本オラクル 執行役員 システム事業統括の飯島淳一氏は、Oracleは、クラウド時代に求められるプラットフォームを提供し、迅速な経営判断を可能にする性能、デジタル対応、業務アプリケーションに最適化されたハードウェアであることが特徴だと説明。
「クラウドビジネスを強化する上で、目的などにおいて透明性を持ったハードウェアが求められている。Oracleは、長年のデータベースでの経験を生かして、ソフトウェアから設計したハードウェアを開発することで、高い性能、高い効率性をもたらすことができるのが特徴である。Sun Microsystemsを買収してから5年を経て、いよいよ今年は、新たな設計思想に転換し、われわれが目指した製品が登場することになる」とした。
また年内には、Software in Siliconを採用したSPARC M7プロセッサを投入する予定であり、米Oracle システムズ・ソリューション担当シニア・ディレクターのマーシャル・チョイ氏は、「これはソフトウェアから生まれた究極のプロセッサであり、史上初のハードウェアベースのメモリ保護が可能になる。ハードウェアのセキュリティと信頼性を改善できるものになる」と位置づけた。
さらに、日本オラクルの飯島執行役員は、「Oracleが提供するハードウェアは、エンタープライズの要求を満たす唯一のクラウドプラットフォームである。Oracle Database 12cのインメモリオプションに最適化し、Software in Siliconを軸にSPARCおよびSolarisのさらなる価値を追求。金融業、製造業といったように、さまざまな業界ごとに異なる要求に対応し、さまざまな業種に直接貢献できる強みがある。そして、これらのハードウェアの価値を生かしたソリューションを提供することができる戦略パートナーとの連携強化が、ハードウェア戦略の柱になっている」と述べた。
開発中の「SPARC M7」は、第4世代目のCMT Coreであり、166のバーチャルキャッシュを搭載するなど、新たなキャッシュ構造が特徴である。また、DDR4 DRAMでは、プロセッサあたり最大2TBの物理メモリを持ち、前世代に比べて2~3倍のメモリ帯域を誇る。さらに、PCIe Gen3をサポート。アプリケーション・データとの整合性、同時メモリマイグレーションとVA Masking、DBクエリ・オフロード・エンジンにより、アプリケーションの高速化を実現しているという。
Oracleのチョイ氏は、「CPUの歴史を振り返ると、いまから約20年前に64ビットが登場し、演算の正確性が増した。また、10年前にマルチコアコンピューティングが登場した。この間、性能を高めるために、CPUのコア数を増やし、クロック周波数を高めることに力を注いできたが、そこにも限界が訪れていた。それを解決するのがSoftware in Siliconである。ハードウェアでソフトウェアを実行する姿がSoftware in Siliconであり、これは革命的な進化である」と前置き。
「飛行機のエンジンが飛行機の性能を決めるように、CPUの性能がデータベースの性能を決めることになる。Software in Siliconの実現には困難が伴うと判断して、われわれは4年前にプロジェクトを立ち上げて取り組んできた。データベースに最適化し、インメモリへの対応、クエリの高速化といった『パフォーマンス』、アプリケーション・データとの整合性を実現する『セキュリティ』、圧縮データの解凍などによる『キャパシティ』の3つの観点から取り組んできた」などと述べた。
アプリケーション・データとの整合性では、ほかのアプリケーションメモリにアクセスする不正プログラムを停止できるのに加え、ハードウェアアプローチの設計により、シリコンにデータ保護レイヤを追加。データベースインメモリ機能をチップ上に直接埋め込むことで、パフォーマンスへの影響がほぼなくなることなどを示しながら、「常時使用が可能になり、開発者の効率性、セキュリティおよび可用性が改善できる」としている。
また、Application Data Integrity(ADI)により、「パフォーマンスに影響を与えることなく、メモリデータの破壊を阻止。End of Structureへのアクセス、古いポインタへのアクセス、悪意のある攻撃を防止し、開発者の生産性を向上できる。メモリ・アーキテクチャへの革命的な変更が実現できる」と、その効果を説明した。
さらに、クエリの高速化では、シリコン上でクエリを実行し、結果をプロセッサキャッシュに直接配置。実環境におけるエンタープライズアナリティクスの加速につなげることができるとのこと。
これらの特徴によって、Oracle Database 12cを高速化できるとしており、低いCPU利用率で高性能を発揮するとともに、10倍の高速化により処理時間を短縮。120GB/sという高速解凍処理が可能になるという。
「多くの企業は、プラットフォームを自らが持っている領域で定義し、テクノロジーの改善においては、限定的な観点からの性能向上などで解決を図っている。これに対してOracleは、ハードウェア、ソフトウェアといったあらゆる観点からの課題解決を図ることができる。そこに他社にはない独自のイノベーションがある。当社は、2004年からの10年間で340億ドル以上のR&D投資を続けており、アプリケーション、ディスク、クラウドまで独自の開発手法を採用している。イノベーションとテクノロジーに対して正しい投資を行っている」と語った。
またSPRACは、2006年の製品に比べると34倍というパフォーマンス向上を実現しているとアピール。「Oracleは、Sun Microsystemsを買収後、SPARCへの投資を加速。ソフトウェアとハードウェアテクノロジーを組み合わせ、大きなイノベーションを起こした」としたほか、「20以上のベンチマークで世界記録を持つ最高の性能と、オーバーヘッドをゼロにし、クラウドスケールを実現する豊富なスレッドとメモリを採用。インメモリに最適化することで、2倍以上のメモリ帯域とキャパシティを実現し、リアルタイム処理での活用が可能になる。そして、Oracleのソフトウェアに最適化されたデザインである点も大きな要素である」とした。
一方で、日本オラクルの飯島執行役員は、日本におけるハードウェアの導入事例についても触れ、リコーでは、世界数百万台規模で稼働する複合機のデータを蓄積および分析するプライベートクラウド基盤を、SPARC T5とZFS Storage ZS3で構築。奈良先端科学技術大学院大学では、頻繁にアクセスする研究データや再現性がない実験データなどの一定期間保管が必要なデータを効率的に保管するために、FS1 Flash StorageとStorageTek Tapeを導入したという。
「クラウド時代であるからこそ、大量のデータを処理し、リアルタイムで処理できる性能を実現するサーバー、ストレージのケーパビリティが重視される。だが、その一方で、セキュリティという観点からは、テープもクラウド時代のなかでは注力していきたいと思っている」などとした。