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ランサーズ、クラウドソーシング基盤をパートナー企業に公開

「Lancers Open Platform」を提供開始

 ランサーズ株式会社は12日、新事業戦略発表会を開催し、新サービス「Lancers Open Platform」を発表した。クラウドソーシングプラットフォームの会員データベースを外部パートナーに公開する業界初の取り組みで、パートナー企業がクラウドリソース(ランサーズ上のオンラインワーカー:通称ランサー)を活用したサービス提供が可能となる。

 Lancers Open Platformは、ランサーズが有する36万5000人の会員データベースを外部パートナーに公開するもの。これにより、パートナー企業はクラウドリソースを活用したサービス提供が可能となり、一方、クライアント企業は今まで通りにランサーズを使って個人に直接発注するのに加え、パートナー企業から提供されるクラウドソーシングを活用した新サービスの提供も受けられるようになる。

要件定義が困難といった課題を解決

足立和久氏

 この狙いをランサーズ 取締役 COO兼事業開発部 部長の足立和久氏は「クラウドソーシングが抱える、クライアント企業とオンラインワーカーの間での要件定義やスケジュール管理などのディレクションが困難といった課題を解決する」と話す。

 ランサーズで仕事を発注するクライアント企業には、たい焼き屋などの中小企業が含まれる。こうした企業には、要件定義やディレクションのスキルを持たないところも多い。要件定義があいまいなまま発注するため、オンラインワーカーも名乗り出にくい状況が少なからずあった。実際、ランサーズ上での案件数は増加する一方で、その増加数と比べると成約数が伸び悩んでいたという。

 パートナー企業が間に入ることで、自社のサービスにクラウドリソースを活用できるようにするとともに、パートナー企業による要件定義やディレクションに期待するというわけだ。

クライアント企業のメリット。個人への仕事依頼に加えて、パートナー企業が提供するサービスを利用可能に
パートナー企業が間に入ることで仕事のディレクションを円滑に

パートナー企業にとってのメリット

 パートナー企業にはAPIが公開され、自社のサービスにランサーズのプラットフォーム機能を組み込んで、クライアント企業に直接提案できる。また、パートナー企業には自社のサービスにあったオンラインワーカーのスキルや実績などが整理された形で提供され、自社のサービスにあったオンラインワーカーがすぐに検索できるようになる。

 現在提携済みの認定パートナーは13社。CMS製品「BiND」を手がけるデジタルステージや、コンテンツ管理製品「Handbook」を手がけるインフォテリアなども名を連ねる。

企業名提供サービス名仕事カテゴリ
イノーバInnva Business CMSコンテンツライティング
サイバーバズDoctors Me
ByThinkオウンドメディア型SEO
サムライトサムライトネットワークス
KoLabo IntermationalCrew World
八楽WorldJumper翻訳
BIJIN&Co.ビジンキャスティングモデルキャスティング
LOCUS動画制作-LOCUS-動画制作
インフォテリアHandbook資料制作・配信
ファストメディアYappliWeb開発
デジタルステージBiND
オルトプラスシステム開発・運用システム開発
ByThink商品データ変換サービスECサイト商品登録
志木サテライトオフィス・ビジネスセンター毛筆・ペン筆耕、宛名書きなど筆耕

 Lancers Open Platformは8月12日より提供が開始され、限定的な認定パートナー企業とともに歩み出す。今年度をフェーズ1としてまずは約100社のパートナー企業と提携し、受注額約1億円/月を目指す。ランサーズからは担当クラウドソーシングコンサルタントを配置し、クライアント企業とパートナー企業の橋渡しをサポートする。2015年以降はフェーズ2として、すべての企業にAPIを公開し、規模もさらに拡大する計画だ。

パートナー企業のメリット。クラウドリソースを活用した事業展開が可能に

「ランサーズの新たなエンパワーメントモデルに」秋好社長

 発表会では、ランサーズ 代表取締役社長兼CEOの秋好陽介氏が市況感を紹介。2014年度のクラウドソーシング市場は408億円で、2018年度には1820億円への成長が見込まれているという。2014年Q1(4~6月)におけるランサーズ上での流通金額は49億円、契約金額は4億5000万円、会員数(オンラインワーカーとクライアント企業の合算)は36万6000人に達し、その推移はいずれも指数曲線を描いている。

秋好陽介氏
契約金額推移

 今後の方針としては「新しい働き方の実現を目指し、2020年に全世界で1000万人が仕事をできるプラットフォームに育てる」とコメント。その原動力として、「インターネットの進化による経営資源のオープン化」を挙げ、「クラウドソーシングによりオープンな経営資源を活用することで、経営がスリム化・効率化される。これにより、経営資源が十分でない企業や事業の活性化が図られる」とし、Lancers Open Platformをベンチャー企業や新規事業におけるランサーズの新たな“エンパワーメント”モデルに位置づけた。

 これは、企業が社員の代わりにクラウドリソースを活用する新時代への幕開けといえるかもしれない。「時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」を企業理念とするランサーズにとっても重要な戦略の1つとなりそうだ。案外、クラウドソーシングがテレワークを推進するキーファクターになっていくのかもしれない。

川島 弘之