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富士通SSL、FJMなど3社、SMBを対象にOSS導入提案を本格化

 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)、富士通マーケティング(FJM)と、富士通マーケティング子会社であるコンテンツ・プランナーの3社は、中堅・中小企業向けのオープンソースソフトウェア(OSS)によるシステム導入支援活動を本格化する。

 富士通マーケティングが持つ中堅・中小企業向けの提案力、コンサルティング力、業種・業務ノウハウと、コンテンツ・プランナーが持つサーバー、インフラ技術に加え、富士通SSLが持つOSSに関する技術力とアプリケーション開発力、運用サポートノウハウを結集。中堅・中小企業を対象に、コンサルティング、導入、設計、開発、システム構築、運用サポートまでをワンストップで提供できるという。

 「Web AP」、「データベース」、「認証」、「監視」、「バックアップ」、「Information」の6分野において、9種類のサービスメニューを用意。信頼性や安全性、サポート体制などにおける課題を解決し、大手企業が中心となっていたOSSの導入を中堅・中小企業にまで拡大する考えだ。

 3社では今後3年間で150社への導入を図り、「OSSビジネス全体の2割弱にとどまっている中堅・中小企業向けの販売比率を、4割程度にまで高めたい」(富士通SSL 公共ビジネス本部 第三システム部プロジェクト課長 兼 ソリューション戦略本部 ソリューション企画開発部 担当課長の筒井敏人氏)と意気込む。

3社によるOSSビジネスの概略

OSS事業をさらに強化

 富士通SSLは同社のPower Solutionシリーズのなかで、2005年以降、OSS関連製品の品ぞろえを開始するとともに、2006年からは「OSSミドルウェアサポート・サービス」の提供をスタート。2007年には、OSSにおける課題の明確化と解決を目的としたOSSビジネス推進部を立ち上げたほか、2010年までにOSSビジネスの売り上げ規模を全社の3割、OSS技術者を3倍規模の300人へと拡大する計画を打ち出すなど、OSS事業を強化してきた経緯がある。

 「2010年度には計画通りの事業規模と人員規模を達成。さらに、商談ガイドラインやリスク検査サービス、スキル調査などの各種サービスをラインアップ。現在はクラウド基盤、運用監視、認証基盤、セキュリティなど60種類以上の幅広いOSSに対応し、275種類のOSSを利用したサービスを提供できる体制を整えた。さらに2011年には、まつもとゆきひろ氏が所属するネットワーク応用通信研究所に次いで、日本で2番目にRubyアソシエーション認定システムインテグレータのGOLD認定を取得。PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの共同発起人の1社になったほか、IPAのRuby国際標準化WGや評価モデルWGでも重要な役割を果たしてきた」(富士通SSL 筒井課長)という。

 富士通グループの一員として、世界最大規模のOSS導入事例となった法務省の登記情報システムの導入や、世界最高速となる東京証券取引所の株式売買システム「arrowhead」によるLinuxの大規模導入事例などにも関与してきた実績も持つ。

 一方で富士通マーケティングでは、2007年に「FJBオープンソーススマートパック」の提供を開始するとともに、「Red Hat Cluster構築サービス」を開始して、OSSビジネスに参入。2008年には、富士通マーケティングの100%子会社であるコンテンツ・プランナーへとOSSビジネスのノウハウを持つSEなどを移管した。「企業システムの構成にあわせて、Web Access SolutionやMessaging Solutionなど6つのカテゴリにサービスを分類しメニュー化。大手情報通信子会社や食品会社でのメールシステム導入などの実績を持つ」(コンテンツ・プランナーの事業推進部長兼テクニカルセンター長の吉田孝志氏)という。

富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ、富士通マーケティング、コンテンツ・プランナーのOSSビジネス関係者

9つのサービスをメニュー化

 今回、3社によって提供されるOSS導入支援サービスは以下の通り。

・ApacheとTomcatによる「WebAPサーバ構築サービス」
・PostgreSQLの設計、構築、サポートを行う「PostgreSQL構築サービス」
・MySQLの設計、構築、サポートを行う「MySQL構築サービス」
・Red Hat Clusterによるデータベースサーバー環境の構築を行う「クラスタ構築サービス」
・OpenAMおよびOpenLDAPによる認証基盤構築を行う「OSSを用いた認証基盤構築サービス」
・SambaによるActive Directoryドメイン環境構築を行う「OSSを用いたActive Directoryドメイン環境構築サービス」
・Zabbixによる稼働監視、アプリケーション監視およびリソース監視を行う「OSSを用いたシステム運用監視構築サービス」
・baculaによるバックアップ基盤構築を行う「OSSを用いたバックアップ基盤構築サービス」
・Movable Type Enterpriseによるブログサーバー構築を行う「社内SNS基盤構築サービス」

 「OSSは、システムコストの削減、オープン化した標準技術の利用、サポート期限に制約されない長期間にわたる情報システム利用、ライセンス数に左右されない拡張が可能といったメリットがあるものの、情報不足やリスクに対する懸念から、十分に活用されていないという状況にある。特に、中堅・中小企業においてOSSの関心が高まるなかで、OSSの最適な活用提案を行うのが狙い」(富士通SSLの筒井課長)とする。

 IDC Japanの調べによると、企業におけるOSSの導入率は32.0%となっており、前年調査から6.7ポイントも上昇。OSSの活用に積極的な企業は、ビジネス成長が早いという結果も出ており、中堅・中小企業でもOSS導入に向けた気運が高まっている。

 「これまでOSSの導入は、自社内にシステムノウハウのある企業をはじめ、システム開発の規模や運用負担の大きい大規模システムを持つユーザーが中心だったが、自治体などの公共、文教、情報、サービス業に加え、中堅・中小市場の流通、ネット系企業、アミューズメント系企業にも、OSSビジネスを展開していきたい」(富士通マーケティング 流通・サービス営業本部 情報・サービス統括営業部 情報営業部の浅井武担当課長)とする。

 今回の取り組みを第1弾として、今後は、ミドルウェア領域のサービスメニューの拡大とともに、アプリケーションサービスにも幅を広げていく考えだ。

OSSベースの課金決済システムを再構築しISAOに納入

 一方、富士通マーケティングと富士通SSLでは、デジタルコンテンツのオンライン課金決済や会員管理などを行うISAOが、Postgres Plusを活用した課金決済システムを再構築し、2014年4月から運用を開始したことも明らかにした。

 ISAOの課金決済システムは24時間365日稼働しており、一日のトランザクションが数千万件、多い時には1億件にも達する大規模システムを運用している。

 従来は、データベースに「PostgreSQL」を導入していたが、課金決済システムの安定運用を目指してPostgres Plusを採用。障害時でも止まることのない安心、安全なシステムを実現したという。

 再構築に際しては、サーバーやストレージ導入を含めた大規模なものになったため、3段階の改善プランにより、10カ月間をかけて実施。「第1段階ではバックアップ周期の見直しなどから着手。第2段階ではアプリケーション構成を変更し、リスクを分散することで安全性を確保。リカバリ時間を3分の1に短縮した。さらに第3段階では冗長構成を実現し、二重障害にも対応できるシステムを構築した」(富士通SSL 公共システム本部 第三システム部の佐藤誠主任)という。

 ISAOでは、Oracle Databaseのような商用データベースの採用も検討したというが、OSSベースの開発、運用ノウハウが社内に蓄積されていたこと、従来資産の手直しにも時間と費用がかかることから、OSSでの再構築に取り組んだという。

 「OSSにおける信頼性、安全性を強化することができた事例。今後は、オンライン課金にとどまらず、ユーザー管理などのさまざまなサービス追加や、サービス拡大に対応するためのシステム改善などを実施していくなかで、さらに安心、安全なシステム運用の支援を行っていく」(富士通マーケティング 流通・サービス営業本部 情報・サービス統括営業部 情報営業部の蔦木聡氏)としている。

大河原 克行