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富士通研、広域SDNを実現するクラスタ型分散コントローラ技術を開発
(2014/6/5 12:39)
株式会社富士通研究所は5日、広域SDN(Software Defined Networking)を実現する、クラスタ型分散コントローラ技術を開発したと発表した。これを利用すると、コントローラの障害や負荷変動に対して、自動的に対応できるようになるという。
OpenFlowに代表される従来のSDNでは、ネットワークコントローラは集中制御型の構成を取っているため、大量の通信パケットを転送するスイッチで構成される広域ネットワークをSDNとして運用する場合、ユーザー数の増大に伴いコントローラに負荷が集中し、スムーズなサービス提供ができなくなるといった欠点がある。
これに対してクラスタ型分散コントローラは、複数のコントローラが、論理的に1台のコントローラとして動作しながら複数のネットワークスイッチを制御する方式のため、集中型コントローラと比較して、大規模化に対応しやすく耐障害性が高いという特徴を持つ。
しかしこちらの方式では、複数の分散コントローラ対応モジュールが連携して、競合することなく動作する必要があるほか、どのモジュールが障害となっても処理を継続する必要があるため、一部のコントローラに負荷の集中や障害が発生した時の対処を自動実行することが難しく、該当するコントローラが管理しているスイッチ群の処理が遅くなったり、制御が継続できなくなったりすることが課題になっていた。
そこで富士通研究所では今回、複数のコントローラを連携制御する分散コントローラ対応モジュールを開発し、そうした課題を解決できるようにした。具体的には、コントローラの負荷増大や障害が発生した際に、コントローラが管理するスイッチを別のコントローラに数秒で切り替えるロードバランス技術と、無停止リカバリ技術を開発している。
前者では、分散コントローラ対応モジュールに負荷チェック機能を搭載することで、コントローラそれぞれの負荷情報を収集可能にした。コントローラを統括するコーディネーションシステムが定期的に負荷情報をチェックし、こうした情報からロードバランスが必要と判定された場合、CPU使用率やスイッチ台数といったポリシーに応じてロードバランスを実行する。
後者については、分散コントローラ対応モジュールに障害チェック機能を搭載。リーダーとして選出されたモジュールがコントローラの障害を検出し、障害を起こしたコントローラに接続されているスイッチを管理する、新たなコントローラを決定する仕組みを導入している。また切り替え先のコントローラを、ロードバランス技術を用いて決定することで、コントローラの負荷が極端に上昇し、処理が止まってしまうといった問題が発生しないように配慮している。
これにより、設計時の想定よりトラフィックが増加した場合や、複数のコントローラに障害が発生した場合でも、安定したSDN運用が可能になるとのこと。また、必要なコントローラの台数を減らせる点もメリットで、例えば、従来のコントローラで、10のドメインのネットワークを障害によって停止することなく、主系と待機系を用意するホットスタンバイ方式で運用する場合、10ドメイン分×2台で合計20台のコントローラが必要であるのに対し、クラスタ型分散コントローラの場合は、通常運用の10台に1台の待機系を加え、合計11台のコントローラを準備すれば良いため、コントローラ数を半減できる。
なお富士通研究所では、2015年度中の実用化を目指して研究開発を進める考え。また6月11日から13日まで、幕張メッセ(千葉市)で開催される「Interop Tokyo 2014」に、この技術を出展するとのこと。