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東陽テクニカ、会員制ベンチマークテストサービスを開始

ベンダー情報と一線画す数値をSIや企業に提供

@benchmarkの概要

 株式会社東陽テクニカは、会員制IT機器ベンチマークテストサービス「@benchmark」の提供を、4月15日から開始する。登録会員のリクエストに応じ、ベンダーに依存しない中立な立場で、実導入環境に近い設定でのベンチマークテストを実施。IT機器の的確な選定および導入を支援するという。

 東陽テクニカ 情報通信システム営業第1部長の北山正姿執行役員は、「当社は、システムインテグレータ(SIer)などを対象に、海外の計測器を輸入販売している。そのビジネスのなかで、試験に関するノウハウ、情報を社内に蓄積してきた。これを価値のあるものと判断し、新たな役立ちができないかと考えた」と、今回のサービス開始の背景を説明する。

 「想定する会員は、いままでベンチマークを実施したかったというシステムインテグレータ、自社で使用する機器の選定時に検証結果を重視したいエンドユーザー。全国5万社におよぶシステムインテグレータへのアウトソーシングサービスとしての提供、検証レポートなどの閲覧を通じて、自社エンジニアのスキルアップを希望する企業なども対象とする。通常は1件あたり100~300万円のテスト費用がかかるが、それに比べると格安だといえる。中堅規模のユーザーやシステムインテグレータなどでも利用しやすい会員登録料金とすることで、検証サービスのクラウド化を目指す」(東陽テクニカ 情報通信システム営業部の中村彰宏課長)という。

 システムインテグレータや企業のIT導入担当者は、ITシステムの選定や導入の際に、ITベンダーが公表するカタログスペックやテスト結果を参考にするが、これらの情報は、必ずしもユーザーが想定する環境や方法で実証された結果ではないのが実情だ。

 また、実際にベンチマークテストを実施するには高価な専用負荷装置や、実環境に近い設定や、知識を持ったテスト技術者による運用が必要とされるが、ユーザー企業やシステムインテグレータが個々の案件ごとに、有効なテストを実施するのは難しいのが現状だ。テストにかかる膨大な時間と費用も大きな負担となるといえよう。

 「ベンダーの公表値は、最もパフォーマンスが高い数値を利用している場合が多く、実際の利用環境ではパフォーマンスが下がることが多い。カタログスペックを真に受けないというのが多くの企業に共通した認識だ。今回のテストサービスの結果は、ベンダーにとっては出してほしくない情報になるだろうが、ユーザー企業やシステムインテグレータが求める、真の数値を出していきたい」(中村課長)とした。

東陽テクニカ 執行役員 情報通信システム営業第1部長の北山正姿氏
東陽テクニカ 情報通信システム営業部の中村彰宏課長

 @benchmarkでは、東陽テクニカが持つ、電子技術センターのインフラを活用して、テストを実施。専用計測器を用いて、約10人の経験豊富な技術者が試験を行い、7~10日でテスト結果が通知される。

 ベンチマークの対象となるのは、ネットワーク機器、サーバー、ストレージ、UTM、ロードバランサーで、対象機器は順次増やしていくことになる。なお、対象機器は調査を依頼した会員が手配する。

 テスト対象項目は、スループット、最大転送レート、レイテンシ、TCPトラフィック帯域、新規セッションレート、最大TCPコネクション保持数、書き込み/読み込みスピード測定、実効消費電力など。会員のリクエストにより追加が可能になる。

 「スイッチやルータのスループット性能測定や、レイテンシ測定。ソフトウェアスイッチやソフトウェアルータの性能測定のほか、OpenFlowスイッチパフォーマンスの測定などのベンチマークも実施する。クラウド環境の浸透とともに、ストレージのI/Oパフォーマンスの測定なども増えるものとみている」(中村課長)としている。

 これにより、検証環境や検証技術者を持たないシステムインテグレータ、ネットワークインテグレータ、ユーザー企業が実測値を確認した上で、IT機器を的確に選定できるようになるという。

 月3件以上のテスト結果をWeb上で公開し、全会員が無料で閲覧でき、会員の社内資料としても再利用できるようにする。テストの依頼主については公表しない。なお、テスト結果の非公表を希望する場合は、同サービスとは別に、個別契約でのテストサービスを提供する。

 さらに@benchmarkでは、テスト専門家によるテスト数値の読みとり方法や検証に関する技術情報、テスト結果の活用ノウハウなどを公開し、会員同士が自由に情報交換を行うことができるコミュニティサイトも提供する。テスト結果をもとにしたレポート活用コラムなども用意する考えだ。

 「コミュニティサイトでは、会員同士が、機器の設置方法の注意点を共有するといったことも期待している」(中村課長)としている。

サービス内容
テスト結果をきちんと読み取るためのノウハウも提供

 また、北山執行役員は、「これまで試験に関する投資ができなかったシステムインテグレータや企業に対するアプローチのほか、どんな試験があるのかを知ってもらうという狙いもある。試験を身近に利用してもらうことで、われわれのビジネスを理解してもらうという意味もある」と、その狙いを説明した。

 会員登録料は、年間55万円(税別)。また、月額5万円(税別、最低利用期間6カ月間)の料金設定も用意した。会員獲得活動やコミュニティサイトの管理支援などは、パステル・ネットワークスが行う。

 東陽テクニカでは、初年度100会員の登録を見込んでいる。

@benchmarkのWebサイト

大河原 克行