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「Surface RT/Pro」法人向けに発売、樋口社長とリセラーが意気込み

 日本マイクロソフト株式会社は2日、タブレット端末「Surface RT/Pro」を法人向けに発売した。リセラー6社を通じて販売する。

 法人市場ではタブレットのニーズが高まりつつあるが、一方で「キーボードやマウスが使えないタブレットは“タブレット未満”」と発表会に登壇したマイクロソフト代表執行役の樋口泰行氏が語るように、従来のタブレットは操作性などの面で導入を尻込みする企業が存在した。

 Windowsの周辺機器が利用でき、運用管理やセキュリティも既存資産を活用できるSurfaceがその打開策となるか。「発売前にもかかわらず幅広い顧客からの引き合いを500件以上いただいている」と樋口氏。パートナーとともに法人タブレット市場への意気込みを見せた。

 ラインアップは、「Surface RT 32GB(本体のみ、Office 2013 RT搭載)」「Surface RT 64GB(同)」「Surface Pro 256GB(本体のみ、Office非搭載)」の3種類。参考価格はそれぞれ3万9800円、4万7800円、9万9800円。

 Surfaceは、シネックスインフォテック、ソフトバンクBB、ダイワボウ情報システム、ネットワールドの4社がマイクロソフト認定ディストリビューターとして取り扱い、6社の認定リセラーが販売する。リセラーはウチダスペクトラム、大塚商会、キヤノンマーケティングジャパン、日立システムズ、富士ソフト、リコージャパン。

「これがタブレット、今までのはタブレット未満」樋口氏

マイクロソフト代表執行役の樋口泰行氏

 登壇した樋口氏は「おかげさまで一般向けの店頭販売を開始させていただき好評を得ている。週によってはiPadより売れるときもある」と一般市場でのSurfaceの状況を説明。

 「法人向けは発売前から幅広い顧客から引き合いをいただき、すでに500社を超えている。XPのサポート終了ということで法人ではOSの移行需要が高まり、それと相まってタブレット導入に目が向けられているように感じる。特に小売・運輸・保険・金融のフィールド業務、ペーパーレス、顧客接点の端末としてニーズが高いようだ」。

 「(Surfaceは)従来のWindows環境が利用できて管理やセキュリティが二度手間にならず、周辺機器も使える。これがタブレット、今までのはタブレット未満。タブレットOSへの関心を調査した結果、(iOSでもAndroidでもなく)Windowsへの興味が一番多かったという報告もある。Surface Pro発売後、3カ月でここまでの関心を得ることができた」と語った。

 Surfaceの発売に伴い、マイクロソフトでは全社員にSurfaceを配布。顧客へのPRなどに社員自身が活用しているという。特に営業はこれまでハードウェアの売り上げは自身の業績に影響しなかったが、この7月からサードパーティのOEMハードウェア製品も含め、売れれば成績につながるようなシステムにも変更している。

 樋口氏は「他社のWindowsタブレットと競合する場面も出てくるだろうが、それよりもWindows勢としてほかのOS勢に挑んでいくという姿勢。多くのハードウェアがあり、ユーザーに選択肢があるというのが、Windowsエコシステムの一番の強み。そのためにも協業を重視していく」と述べ、Windowsタブレット全体で他OSに追いつき、追い越す体制を整えたいとした。

法人向けにSurface RT/Proを発売
法人タブレットOSの関心度調査ではiOS・AndroidよりもWindowsに高い期待が

2300台のSurfaceを導入した北國銀行、採用理由は?

 なお、現在、Surface導入企業としては、北國銀行、ムビチケ、パソナ(他機種との混合)の事例が公開されている。

【お詫びと訂正】
初出時、導入企業の中に明治安田生命を含めておりましたが、同社が導入しているのは富士通製タブレットでした。お詫びして訂正いたします。

 発表会には、そのうち北國銀行がゲスト登壇。同行では、情報系IT基盤をマイクロソフト製品に統一し、その中でクライアント端末もSurface Proに全面移行。合計2300台を導入した。

 その採用理由について、同社代表取締役 専務取締役の前田純一氏は次のように説明。「SurfaceがタブレットでありながらWindowsで、ハードウェアキーボードを備えるため、タブレットとしてもPCとしても使えること。従来はノートPCとタブレットを別々に利用していたが、それをSurfaceに統一できるため、維持管理が簡単になった。また、Surfaceがハードウェア的に優れている点もニーズにぴったりだった。画面がフルHDで、顧客へ見せる場合も見栄えが良く、スタイラスペンで顧客と契約する際も便利に使えると考えた」。

リセラーのSurfaceにかける意気込み

 PCとしてもタブレットとしても利用できるため、管理が二度手間にならない点は、Surfaceの最大のポイントだろう。発表会にはリセラー6社も登壇。そのうち、大塚商会が「通常のタブレットのようなPCとの二重管理が不要な点が導入を推し進めると考える」と発言。また、クラウドとの連携にも期待でき、ウチダスペクトラムが「Surfaceを絡めたSIに注力するが、合わせて注目しているのがAzure。この2つをあわせて違った付加価値を提供できるのが楽しみ」と述べた。今後、さまざまなクラウドサービスにSurfaceをバンドルしたソリューションが登場してくるだろう。

ウチダスペクトラム代表取締役社長の町田潔氏。「主にソフトウェア販売を行っている当社がハードウェアの発表会に呼んでもらうのは初めて。ここを分水嶺ととらえている。特に文教市場に強みを持つので、AzureとSurfaceを組み合わせた新しい価値を提供していきたい」
大塚商会 取締役兼専務執行役員の片倉一幸氏。「法人でタブレットニーズが高まる一方、導入はまだまだ。SurfaceとWi-Fiソリューションがその突破口になると考えている。Acive Directoryを構築しているユーザーは連携も用意で、Direct AccessでVPNを導入せずにリモートアクセスが可能になる。管理面・セキュリティ面で優位性があるSurfaceは、通常のタブレットのように二重管理を行う必要もなく、導入は進むものと考えている」
キヤノンマーケティングジャパン常務執行役員の神森晶久氏。「当社グループではPCやモバイル製品を取り扱い、ニーズに合ったハードウェアをSIの中で提供するケースが多い。その経験からいうとタブレット市場はようやく法人需要が見えてきた。ビジネスチャンスを逃さぬように総力を挙げて取り組んでいく」
日立システムズ取締役 専務執行役員の山本義幸氏。「法人タブレット市場はいよいよ機が熟してきた。相当な期待を込めてビジネスを開拓するつもり。当社はすでにスマートデバイスの調達・導入・設定・運用保守をトータルに支援するソリューションを提供している。そこへキーデバイスのSurfaceが加わり、一段とビジネスを拡大していけると信じている」
富士ソフト常務執行役員の豊田浩一氏。「Surfaceで当社ビジネスに大きな相乗効果が生まれる。SI力と開発力を生かして、Surfaceの特長を生かした新たな法人向けソリューションを提供する。特にクラウド連携や基幹系連携、あるいはワークスタイル変革などを顧客と一緒に模索・展開していきたい」
リコージャパン専務執行役員の窪田大介氏。「XPサポート終了が発表された後、IT市場は様変わりした。来年の4月にはXPを何かしらのOSに移行しなければいけない。昨年当社は60万台のクライアントを出荷した。今年は70万台と予想していたが今のニーズだと80万台は超えそう。そのうちタブレットは2万台とみていたが、来年の事業計画を5倍の10万台に引き上げたいと考えている。Surfaceの登場でIT業界も活気を盛り返していくのでは」

川島 弘之