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クラウドの課題を理解した上で情報を収集する企業が増加、プライベートクラウドの多様化も~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は8日、2013年4月に実施したユーザー動向調査「2013年 国内クラウド調査」の結果を発表した。IDC Japanではクラウドを「SaaS」「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「業界特化型クラウド」といった提供形態に分類しているが、すべてのモデルにおいてクラウドの認知度は向上しているとのこと。また、クラウドに対する印象についても「低コスト」と肯定的な意見が多く見られるほか、クラウドの利用/導入率も堅調に増加している傾向が見られる。

 クラウドの利用・検討状況を問うた設問では、2012年4月実施の調査で「検討したが利用しない」と回答する企業割合が、2011年5月の調査と比較して大幅に増加していた。これは、2011年3月の東日本大震災の影響により、ITの災害対策を含めた事業継続強化(IT-BCP)を実現するためにクラウドを検討したものの、技術的/管理的な課題によって。短期間ではクラウドの利用/導入ができないと判断する企業が多かったためという。

 しかし2013年の調査では、「検討したが利用しない」と回答した割合が大幅に減少し、「興味があり、情報を収集中」の回答が増加した。これは、クラウドの課題を理解した上で情報を収集する企業の増加を表しており、今後のクラウド市場の成長を促進する要因になっていると、IDC Japanでは分析している。

パブリッククラウドの利用検討状況、2011年~2013年(出典:IDC Japan)

 一方プライベートクラウドについては、ユーザー企業内に自らの資産として構築する形態が一般的だと考えられてきたが、サービス事業者の保有するIT資産をユーザー専有のクラウド環境として利用する、「ホスティング型プライベートクラウド(デディケイテッドプライベートクラウド:DPC)」形態の発展が見られるとのこと。

 またこの領域では、サービス事業者が持つクラウド環境の構築/運用のノウハウと、高い堅牢性に対する期待から、事業者データセンター(データセンターサービス)の需要も高まっており、プライベートクラウドであってもその構築形態は多様化の傾向にあるとした。

 なお、一部の先駆的な企業こそ、クラウドを活用して新しいビジネスを開拓しているものの、多くの企業は、既存システムを効率化するための手法としてクラウドを考えている状況とのこと。

 企業のIT支出にかかわる意識を「守り(削減による経営の効率化)」から「攻め(投資による事業拡大)」に変化させることは容易ではなく、IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏は、「ベンダーは『顧客志向によるソリューションの強化』『技術志向によるプラットフォームの強化』といった施策を積極的に進めることによって、顧客の意識変化を促すことが重要である」とコメントしている。

石井 一志