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オープン化と自動化でクラウドユーザーをもっと自由に! 日本IBM、「IBM SmarterCloud Orchestrator」提供開始

日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 ヴィヴェック・マハジャン氏

 日本IBMは22日、ハイブリッドクラウドや複数のベンダが提供するクラウドを横断的に構築/管理するソフトウェア製品「IBM SmarterCloud Orchestrator」の提供を24日から開始すると発表した。

 IBM Tivoliブランドの流れを継いで開発された製品で、企業に混在する多様なクラウド環境をオープンアーキテクチャにより連携/統合し、構築や管理の徹底的な自動化を図っている点が特徴だ。

 日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当 ヴィヴェック・マハジャン氏は「日本における企業のプライベートクラウド導入率は40%、IaaS導入率は25%を超えており、これは世界的に見てもかなり先を行っている数字。一方で、IaaSやPaaS、SaaSといった複数のパブリッククラウドを利用している企業も多く、“クラウドファースト”が進むにしたがって新たな課題が生まれつつある」と指摘。「プライベートとパブリックの双方に対応する効率的な管理システムが必要とされており、IBM SmarterCloud Orchestratorはこのニーズに対し“オープンと自動化”という技術的な優位性でもって応える製品」と説明する。

クラウドファーストが浸透しつつある中、国内企業のクラウド導入率はプライベートもパブリックも比較的高い数字を示している
クラウドファーストに備える製品としてオープンと自動化を強く訴求した製品が「IBM SmarterCloud Orchestrator」となる

 マハジャン氏の説明にあるように、IBM SmarterCloud Orchestratorはプライベートクラウドからパブリッククラウドまで、異なるハイパーバイザーの仮想環境を連携し、横断的で効率的なクラウド管理を実現する製品だ。各種仮想マシンやネットワークから構成されるIaaS基盤の管理にはオープンソースのOpenStackテクノロジを採用し、オープンスタンダードである点を強調している。なお、発表時点で対応するハイパーバイザーはAmazon EC2、VMware、KVMの3つで、その他のハイパーバイザーには順次対応予定としている。

 IaaSの上位層であるアプリケーション基盤のPaaSでは標準規格のひとつであるOASIS TOSCAをサポートしている。TOSCAは異なるベンダ間のクラウドアプリケーションおよびサービスをスムースに導入するための規格で、多種多様なクラウドをまたがったアプリケーションの可搬性を確保し、システムの移行や連携を容易にする。PaaSレイヤではユーザーが作成した複数の仮想システムパターン(OS、ミドルウェア、データベース、アプリケーションサーバなど)や仮想アプリケーションパターン(Webアプリケーション、データベーススキームなど)を管理することが可能だ。

 こうしたオープンなアーキテクチャに基づいたクラウド環境の構築や管理を徹底的に自動化するオーケストレーション機能を実装しているのがIBM SmarterCloud Orchestratorの特徴となる。

日本IBM ソフトウェア事業 クラウド&スマーター・インフラストラクチャー事業部長 高瀬正子氏

 日本IBM ソフトウェア事業 クラウド&スマーター・インフラストラクチャー事業部長 高瀬正子氏は「クラウドを導入したにもかかわらず、サービスの利用にあたっては多くの人手が介在しているのが現実で、かえって手間がかかっているという声も少なくない」というクラウドの現状を指摘。クラウドの本来のパワーを享受するには人力に頼りがちなワークフローの定義を自動化し、セルフサービスポータル上でサービスのカタログ化やプロビジョニング実行などが容易に行えるようにすべきだと強調する。

 「IBM SmarterCloud Orchestratorはサービスの申請から承認手続き、プロビジョニング、リソース変更、仮想イメージのデプロイといったあらゆるワークフローを、GUIによってアイコンを組み合わせながら簡単に設計できる。クラウド全体のライフサイクルをすべて可視化し、自動化まで可能にできるオーケストレーション製品はIBM SmarterCloud Orchestratorだけ」(高瀬氏)。

IaaS、PaaS、セルフサービスポータルの3層を横断的に管理する
ワークフロー設計のデモ画面。GUIでビジネスユーザでも簡単に設計できる点が特徴

 「本製品はどういうユーザーを対象にしているのか」という質問に対し、高瀬氏は「クラウドの悩みを抱えているユーザーに、クラウドの本来の良さを体感してもらいたい」と答えている。スピーディな導入が可能で、必要なときに必要なだけスケールアウト/スケールダウンし、従量課金による大幅なコストダウンが実現する、といったクラウドのメリットをそのまま享受できると思いきや、いざクラウドを導入してみると意外と運用/管理に手間がかかったり、異なるクラウド間の連携に悩んだりという企業は少なくない。特にエンタープライズ企業では、プライベートクラウドとパブリッククラウドのハイブリッド化が進んでいるところが多く、複数のクラウド上に散在するシステムの統合や連携は大きな課題となっている。「クラウドで自由になるはずだったのに、クラウドに縛られているお客様が非常に多い。その状況をIBM SmarterCloud Orchestratorで解放したい」と高瀬氏。クラウドがビジネスに貢献するという状況にするためにも、さまざまなクラウドに対応できるオープン性と、煩雑な運用/管理の自動化を備えたオーケストレーション製品が果たす役割は大きいとしている。

 IBM SmarterCloud Orchestratorは、クラウド環境の構築、セルフサービスポータルによる構築と管理の自動化、仮想イメージ/パターンと自動化パッケージの管理/活用を実現する通常版と、これらの機能に加え、監視機能、さらに細かいレベルでの課金サービスを提供するメータリング機能を備えたエンタープライズ版が用意される。価格は通常版が8万6835円/1コア、エンタープライズ版が16万4115円/1コアとなっている。

(五味 明子)