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富士通、データセンターや広域ネットワークなど異なる特性のICT領域をSDNで制御する新アーキテクチャ

 富士通株式会社は8日、SDNをベースに、ICT基盤全体をネットワークワイドに最適化可能とした新しいアーキテクチャ「FUJITSU Intelligent Networking Computing Architecture」を発表した。

 新アーキテクチャは、データセンターや広域ネットワーク、スマートデバイスなど特性や要件の異なる3つのICT領域でリソースを仮想化。このリソースを「仮想インフラ層」および「分散サービス基盤層」の2階層で管理・制御することで、最適サービスレベルを実現、エンドユーザーのQoE(Quality of Experience:体感品質)向上をめざそうというものだ。

 このアーキテクチャに基づき、今回、データセンター向けに、「サーバー・ストレージ・ネットワークリソースの一元管理・制御ソフトウェア」、「ネットワーク仮想化対応スイッチ」、「仮想アプライアンスプラットフォーム」といった新製品を提供する。

 昨今、スマートデバイスの急速な普及やインターネット上の大量情報に対処するために、データセンターの大規模化や広域ネットワークの高速・大容量化が進められてきている。この傾向はさらに加速するものと予測され、例えばトラフィック量は、2011年から2016年にかけて、CAGR(年平均成長率)30%で増加するし、また仮想サーバー数も2016年になると物理サーバー台数の3倍以上に膨らんでいくものと富士通ではみている。

 そうなると、データセンターにコンピューティング処理を集中させた場合、レスポンス遅延やサービス停止を引き起こしかねない。そこで、こうした不測の事態を避けるためにも、異なるICT領域間でコンピューティング環境を分散させると同時に、それらICT領域間をダイナミックに連携させるために、分散配備されたコンピューティング・リソースをネットワークで最適に接続させるICT基盤アーキテクチャが必要となるわけだ。

 富士通 執行役員常務 サービスプラットフォーム部門 ネットワークビジネスグループ長の大槻次郎氏は「新アーキテクチャでは、データセンターはサーバーやストレージ、ネットワークを一括制御して運用性を向上させ、広域ネットワークは経路と帯域の制御、遅延の抑制、災害・障害時の広域ルート切り替えを行う、またスマートデバイスは、移動するデバイスの状態を管理し、用途や状況に応じて設定変更する、といった機能や性能を提供することができる」と説明する。

 また、「仮想インフラ層がSDNの考え方をICT領域全体に適用させ、柔軟な仮想リソースを提供するし、分散サービス基盤層は、ネットワークワイドにICT機能を動的に分散配置し最適なサービスを提供する」と、2階層の管理および制御を説明。同社が今回特にこだわりをみせるユーザーのQoE向上をアピールした。

3つのICT領域をまたぐICT基盤アーキテクチャの構成
富士通 執行役員常務 サービスプラットフォーム部門 ネットワークビジネスグループ長の大槻次郎氏

 新アーキテクチャに基づく今回発表のデータセンター向け製品には、まずサーバー・ストレージ・ネットワークリソースの一元管理・制御ソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」があげられる。

 富士通 常務理事 プラットフォームソフトウェア事業本部長の堀洋一氏によれば、「これがSDN対応のネットワーク機器の導入や運用の簡易化をサポートするもので、例えばネットワーク設計は不要で結線は導入時のみで済む(ワイヤーワンス)ほか、業務システムごとの仮想ネットワーク配備や仮想サーバーについては、配備・移動時のネットワーク設定を自動化できる」という。出荷開始は2013年6月予定で、販売価格は23万円(税別)から。

富士通 常務理事 プラットフォームソフトウェア事業本部長の堀洋一氏

 そのほかの新製品としては、ネットワーク仮想化対応スイッチ「コンバージドファブリックスイッチ」が提供される。この製品では、スイッチ間をメッシュ構造で最短接続し、スイッチ間の通信経路を複数化できるほか、経路を分散して利用すればスイッチがもつ通信帯域を最大限に活用できる。

 40GbEスイッチをフラット接続し、1台の論理スイッチを構成可能な性能をもつ。出荷開始は2013年6月予定で、販売価格は360万円(税別)から。

コンバージドファブリックスイッチの接続構成
コンバージドファブリックスイッチ

 またPRIMERGYブレードサーバー用内蔵スイッチブレードも同時に発表。出荷開始予定はこちらも6月で、販売価格は180万円(税別)から。

 そして仮想アプライアンスプラットフォーム「FUJITSU Network IPCOM VXシリーズ」は、業務システムに必要なファイアウオールやロードバランサなどのネットワーク機能を提供するもので、一度導入すれば仮想システム追加時でも新たにIPCOMの導入や設置は不要でマルチテナントのセキュリティを1台の装置で実現する(図3および写真5が相当します)。出荷開始は2013年6月予定で販売価格は190万円(税別)から。

 今後の投入予定について、堀氏は「広域ネットワークの仮想化に対応するSDNマネージャや仮想専用線機能をもつSDNサービスノードは、2013年末ころに、スマートデバイスやM2Mなどの端末に対応する製品を2014年末ころに提供する予定」と新アーキテクチャに基づく製品開発戦略を語った。

PRIMERGYブレードサーバー用内蔵スイッチブレード
IPCOM VX1台で実現できるマルチテナントのセキュリティ
IPCOM VXシリーズ

(真実井 宣崇)