ニュース

キヤノンMJ、2012年度連結決算~売上高は前年同期比7.7%増の6812億円

経営計画では、アウトソーシング、クラウドサービスを強化。M&A資金で約450億円を用意

キヤノンマーケティングジャパン 川崎正己社長(写真は過去の記者会見より)

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、2012年度(2012年1月~12月)の連結業績を発表するとともに、2015年度を最終年度とする中期経営計画について発表した。2015年は、2011年度にスタートした同社の長期経営構想フェーズIIの最終年度にもあたる。

 キヤノンMJの川崎正己社長は、「長期経営構想フェーズIIの2015年の業績目標の旗は降ろさない。厳しいが達成不可能ではない。一方で、実行計画である中期経営計画については、M&A案件の成立や、新規事業の立ち上げ、プロジェクト案件などの不確定要素を含めず、現状の経営環境や、現在の事業の多角化を踏まえたものとしている。さらに、長期経営構想策定時には、含まれていなかった会計基準の変更により収益の表示に一定の影響発生が見込まれるという点もあり、これも中期経営計画では反映させた」として、2015年度に向けて、長期経営構想フェーズIIと中期経営計画の2つの目標数値を掲げる考えを明らかにした。

 中期経営計画では、最終年度とする2015年の売上高を7800億円、営業利益は300億円、経常利益は315億円、当期純利益は185億円とする。

 一方で、長期経営構想フェーズIIにおいては、2015年度の売上高は8500億円以上、営業利益425億円、営業利益率5%、1株あたり利益185円以上を目指すとしたほか、多角化による売り上げ増で1000億円以上、サービス事業比率45%、外部仕入れ商品や独自サービスの売上高比率を示すBeyond CANON比率を30%、海外売上高、輸入品売上高の売上高比率を示すBeyond JAPAN比率を10%に高めるという計画も示した。

3年間の中期経営計画の達成において、ITソリューションの利益確保が重要に

 中期経営計画では、「キヤノン製品圧倒的世界シェアNo.1への貢献」、「独自性ある高付加価値ソリューションの創出」、「Beyond CANON、Beyond JAPANの発想のもと、商社機能の強化とビジネスモデルの抜本的変革」の3つを基本方針とし、「サービス創造企業グループ」への転換を図る考えだ。

 中期経営計画におけるセグメント別業績目標は、ビジネスソリューションの売上高が3700億円、営業利益が110億円。ITソリューションの売上高は1680億円、営業利益は50億円。イメージングシステムは、売上高が2105億円、営業利益は110億円。産業機器の売上高は620億円、営業利益は25億円とした。

 川崎社長は、「3年間の中期経営計画の達成において、ITソリューションの利益確保が重要になる。2015年度のITソリューションの営業利益率は3%であり、それでも競合よりも利益率は低い。リーマンショック以降、IT投資が削減され、厳しい状況が続いているが、さらにクラウド、ビッグデータへの対応に遅れたという反省もある。SEの生産性強化や新たな事業への展開、さらにはM&Aなどを含めて改善していく必要がある」としている。

 ITソリューションにおいては、既存事業領域での成長性維持と事業構造改革の実施、戦略的領域の強化・拡大と新規事業の立ち上げに取り組む姿勢をみせた。

 既存事業領域の成長性維持では、営業生産性の向上とソリューション力強化により、システム開発からシステム運用までの対応力を強化するほか、開発体制の見直しによる収益構造の改革に取り組む。また、事業構造改革では、グループにおける重複部分の効率化や整理・統合を適宜実施。アウトソーシング事業などの成長領域への要員シフトに加え、開発生産性を改善し、2015年までにSE1人あたりの売上高を2012年度比40%増に高めるという。

アウトソーシング、クラウドサービスを強化。M&A資金で約450億円を用意

 戦略的事業領域の強化と拡大では、アウトソーシング事業の強化に取り組む考えを示し、西日本データセンターを中心としたデータセンタービジネスとシステム運用サービスを拡大。「西東京データセンターでは、アウトソーシング、コロケーションを含めて活発な商談が進んでいる」(キヤノンMJの川崎社長)という。

 また、クラウドサービスIT共通基盤である「SOLTAGE」によって、クラウドサービス事業の強化および拡大に取り組むとし、「SOLTAGEは、キヤノンを含めて30以上の基盤がある。プラットフォームとしての拡張を図ることで、2013年度は外販に乗り出したい」とした。

 営業・開発組織のプライム体質強化によるアウトソーシングビジネスの獲得にも取り組む方針だ。同社では、ストック型ITサービス事業比率を、2015年までに29%以上に高めるという。

 さらに、ITソリューションにおけるグローバル事業の積極展開を進め、上海での展開に加えて、新たに設置したタイ、フィリピンの拠点を通じたITソリューションビジネスの拡大、海外キヤノングループとの連携強化、海外ソフトウェアおよびハードウェアの調達拡大も計画している。

 「ITソリューションのBeyond JAPAN比率は、2015年度に10%以上に高めていく」という。

 一方、ビジネスソリューションでは、ドキュメントビジネスの収益力向上、商業印刷事業の拡大を掲げており、2015年度の商業印刷事業の売上高目標を500億円においたほか、イメージングシステムでは、レンズ交換式カメラをはじめとする主要製品において利益あるシェアNo.1の確立、業務用映像機器の拡販、顧客満足度の向上、新規事業の拡大に取り組み、2015年の業務用映像機器事業の売上高で100億円を目指す。産業機器では、産業機器のビジネス拡充と、医療事業の収益回復と拡大を目指し、2015年度の医療事業の売上高は400億円を目指す。

 なお、長期経営構想フェーズIIの目標達成のために、今後3年間で約400億円の投資を予定。M&Aのために、フリーキャッシュフローの範囲内で450億円の資金を用意しているとした。

2012年度の連結業績は、売上高が前年同期比7.7%増の6812億円

 営業利益は99.0%増の168億円、経常利益は69.7%増の181億円、当期純利益は56.4%増の105億円となった。

 キヤノンMJの川崎社長は、「売上高は5期ぶりの増収。ナンバーワン戦略や多角化の効果が出てきた」とした。

 同社では、“成長と変革”をキーワードに、新製品の拡販やさまざまなソリューション提案などに積極的に努めたこと、キヤノンライフケアソリューションズや昭和情報機器、日本オセといった新たな連結子会社が売り上げ増に貢献。売上総利益率の改善や構造改革および継続的なコストダウンの推進により、大幅な増益につながったとしている。

 セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が前年比5.8%増3439億円、営業利益は28億円増の63億円。第4四半期には、秋以降の景気減速の影響で主要製品の販売に影響したという。連結子会社のキヤノンシステムアンドサポートが、新規顧客の開拓などにより、オフィスMFPやレーザープリンターの出荷台数を大幅に伸ばしたこと、さらに、ITソリューション部門も順調に推移したという。

 キヤノンシステムアンドサポートの売上高は5%増の1035億円、営業利益は13億円増の12億円となった。

 ITソリューションの売上高は前年比5.5%増の1313億円、営業利益は、33億円増の2億円。

 ITソリューション市場の回復に合わせ、SIサービス事業を中心に売り上げは順調に推移。継続的な構造改革により、生産性向上やコスト削減などで大幅に改善した。

 SIサービス事業では、金融機関や製造業向けを中心に個別システム開発案件が増加。医療ソリューションや製造ソリューション案件の増加や、2012年7月に発売したMR(Mixed Reality)システム案件の受注が貢献したという。ITインフラ・サービス事業では、BPOサービスなどが堅調に推移。2012年10月に稼働した西東京データセンターにより、今後、アウトソーシングサービス事業の拡大を図るという。

 また、エンベデッド事業では、自動車関連顧客向け案件が堅調に推移。プロダクト事業では、ビジネスPCが減少したものの、セキュリティ関連製品や、タブレットをはじめとするスマートデバイス、メモリー関連の新規商材の販売が堅調に推移し、売上高は前年同期を上回った。

 SIサービスの売上高は前年比7%増、ITインフラ・サービスは1%減、エンベデッドは2%増、プロダクトは10%増になった。

 コンスーマイメージングは、売上高が前年比10.2%増の2006億円、営業利益は25億円増の109億円となった。

 EOS Kiss X5やEOS Kiss X6iなどのエントリーモデルがシェアを獲得。3月に発売したEOS 5D Mark IIIや、11月に発売したEOS 6Dなどのミドルクラス製品が好調に推移したほか、9月に発売したミラーレスカメラのEOS Mも新規ユーザーを獲得したことで、年間シェアNo.1を達成したという。

 コンパクトデジタルカメラでは、Wi-Fi機能をさらに進化させたIXY 430Fや、9月発売のプレミアムモデルであるPowerShot G15やPowerShot S110の拡販、エントリー層向けのPowerShot Aシリーズが好調に推移したことで、出荷台数は前年同期を上回った。だが、エントリーモデルの構成比増加により、売上高は前年同期を下回った。

 インクジェットプリンターは、PIXUS MG6330などの発売により、タイの洪水被害の影響で落ち込んだ前年同期を上回りまった。

 産業機器の売上高は前年比13.7%増の306億円、営業損失は9億円減の12億円の赤字となった。

2013年度の業績予想、売上高は前年比0.5%増の6848億円

 2013年度の業績予想を発表。売上高は前年比0.5%増の6848億円、営業利益は前年比7.1%増の180億円、経常利益は前年比4.9%増の190億円、当期純利益は前年比0.2%増の106億円とした。

 セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が2%増の3367億円、営業利益が7億円増の70億円。ITソリューションの売上高は前年比6%増の1394億円、営業利益は、5億円増の7億円。コンスーマイメージングから名称を変更するイメージングシステムは、売上高が前年比4%増の1992億円、営業利益は12億円減の97億円。産業機器の売上高は前年比16%増の356億円、営業利益は13億円増の1億円とした。

 「ITソリューションは、売上高はSIサービスをはじめとした既存事業の拡大や、新規事業の立ち上げなどにより増収を見込んでいる。金融、製造、流通に加え、医療分野での成長を期待している。クラウドサービスや西東京データセンターによるサービス事業拡大を見込む」(キヤノンマーケティングジャパン・柴崎洋取締役常務執行役員)という。

 ITソリューションのうち、SIサービスの売上高は前年比11%増、ITインフラ・サービスは8%増、エンベデッドは4%増、プロダクトは1%増を見込んでいる。

(大河原 克行)