オートデスク、3次元設計モデルのシミュレーション機能をクラウドで提供

設備投資を抑えながら高度な解析が可能に


 オートデスク株式会社は9月13日、3次元設計モデルのシミュレーション機能をクラウドで提供する「Autodesk Simulation 360」を9月15日より発売すると発表した。

 同社では、「より良い世界を作り出すアイデアの創出とその実現をデザインテクノロジーで支援する」というビジョンのもと、2011年から製造・建築・土木や他の業界向けにクラウドサービス「Autodesk 360」をリリースし、顧客のデータ管理やコラボレーション機能、レンダリング機能などをクラウドで提供してきた。

 今回の「Autodesk Simulation 360」では、同社がパッケージ製品として提供している数値流体力学解析ツール「Autodesk Simulation CFD」および製造系解析ツール「Autodesk Simulation Mechanical」に含まれるシミュレーション機能をクラウドサービスで提供する。具体的には、流体解析、伝熱解析、強度解析、熱解析、疲労解析、落下テスト、機構・構造連成解析、構造物フレームにおける強度解析、室内空調の気流解析、ダクトや配管、バルブなどの圧損解析といった機能をクラウドで利用することが可能となる。

オートデスク APAC シミュレーション製品マネージャーの岩本康栄氏Autodesk Simulation プロダクトラインアップ

 オートデスク APAC シミュレーション製品マネージャーの岩本康栄氏は、シミュレーション機能をクラウド上で提供する狙いについて、「これまでのシミュレーションツールは、価格が高い、高性能ハードウェアが必要、解析に時間がかかるなど様々な問題点を抱えているのが実状。そのため、設計者の15人に1人しかシミュレーションツールが使われていないという調査データも出ている。こうした市場背景の中で、当社では、すべてのユーザーにシミュレーション機能を提供することを目指し、クラウドのパワーを活用した『Autodesk Simulation 360』をリリースする」と述べている。

「Autodesk Simulation 360」のアーキテクチャー

 基本的な機能や画面操作は、パッケージ製品の「Autodesk Simulation CFD」および「Autodesk Simulation Mechanical」の環境と全く変わらず利用することが可能。「従来のシミュレーション機能はそのままに、メッシュ作成とソルバー実行のプロセスだけをクラウド環境で行う。これにより、ユーザーは、クラウドを意識することなく、様々なシミュレーション機能を活用することができる」(岩本氏)という。

 「Autodesk Simulation 360」の導入メリットとしては、まず、高性能のハードウェアと専門ソフトウェアをクラウドで利用できるため、大きな設備投資をしなくても高度なシミュレーション機能を使用することが可能となる。また、通常デスクトップ環境では1つのシミュレーション作業しか行えないが、同製品では複数種類の解析作業を同時に実行することができる。これにより、設計者は結果を待つ間に通常業務を行い、デスクトップ環境よりも早いタイミングで結果を検討することが可能となる。とくに、中・小事業者にとっては、ハードウェアの購入など大きな投資をすることなく、高度なシミュレーション機能を利用できることは大きなメリットになる。

「Autodesk Simulation 360」のデモ画面

 主な使用例としては、「椅子などの家具を製作する前に、さまざまな体型や用途に適応する人間工学に基づいたデザインを検討する」、「電子部品が発する熱と周囲に与える影響を設計段階で把握し、対策を検討する」、「建築物の空間の快適性を確保するために空気の流れをシミュレーションし、環境負荷を分析しながら間取りや空調の位置を検討する」、「コンクリートなどの構造部材の強度を検証する」などを挙げている。

 年間ライセンスの価格は、「Autodesk Simulation 360」(使用容量:120ジョブ)が55万1250円、「Autodesk Simulation 360 Unlimited」(使用無制限)が110万2500円。まずは英語版からの提供となり、日本語版は11月から提供開始する予定。なお、日本語版の提供までは、「Autodesk Simulation 360」の使用容量は無制限で使うことができる。


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(唐沢 正和)
2012/9/18 09:41