「ビッグデータは3つの要素がなければ、ただのデータ」~SAS Japan

吉田社長が2012年戦略を説明


代表取締役社長兼北アジア地域統括責任者の吉田仁志氏

 SAS Institute Japan株式会社(以下、SAS Japan)は28日、2012年のビジネス戦略に関する記者会計を開催。代表取締役社長兼北アジア地域統括責任者の吉田仁志氏が2012年の取り組みなどを説明した。


2011年は過去最高の業績

 2011年度、グローバルの業績としては、過去最高の売上高27億2000万ドル(前年比12.%増)を記録し、36年連続増収を更新した。地域別売上構成比では、アメリカ地域46%、ヨーロッパ・中近東・アフリカ地域42%、アジア太平洋地域12%となった。特にヨーロッパは経済危機の中、順調に成長。日本法人については震災後に苦戦しつつも年の後半で持ち直し、第4四半期は過去最高の売上高となった(数字は非公開)という。


2012年の戦略を後押しする市場動向

 2012年戦略の背景となるのが、1)グローバル化への対応、2)ビッグデータへの対応、3)情報活用力についてという3つの市場動向だ。

 1)については「日本企業にとってグローバル展開は一部の大手企業だけの話ではなくなった」とし、「いかにグローバル展開をサポートするかがSASとしても重要な課題」と説明した。

 2)については「現在ビッグデータの議論はデータをどのように収集・格納して扱うかというレベルにとどまっている」と指摘し、「重要なのはどのように活用するか、企業としてどのように情報活用力を高めるか」と方向性を示した。また、ビッグデータは「Volume(量)」「Velocity(早さ)」「Variety(種類)」の3要素だと定義するとともに、ビッグデータを解き明かすキーワードは「データの集積」「あらゆるデータとの接続」「データの高速処理」であるとし、「これら3つがそろわなければ、データはデータのままで、ビッグデータの意義は生まれない」とした。

 3)については「アナリティクス&BI」がビジネスの優先事項を解決するテクノロジーという認識が高まっており、「事実、戦略的な分析を行っている企業は相対的に高い財務パフォーマンスを示している」とし、企業優位性を高めるためには「スピード」「意思決定の質」「実行力」が重要で「ITの力で組織的に実行することが可能になる」とした。


2012年は3つの戦略を軸に

 これらを踏まえ2012年は、「Information Mangement」「High Performance Analytics」「Global Solution&Practice」の3つを軸として進めていくという。

 Information Managementでは、データを“情報”に変え、企業の競争力を生む意思決定を支援する。ビッグデータ時代の課題はデーが企業内外に散在するも、使える情報が少ない点だ。データを情報に変えるプロセスが必要となる。Information Managementアーキテクチャは、分析プロセスと意思決定プロセスの両方を同一の情報基盤に組み込んでいるのが特長で、全社的にデータを管理できるだけでなく、分析モデルの管理・実行、意思決定の示唆、それを実行するワークフローを実現できるという。

 High Performance Analyticsでは、「SAS Grid Computing」「SAS In-Database」「SAS In-Memory Analytics」の3点を推進。SAS Grid Computingは、グリッドコンピューティングにより処理の高速さを生み出すもの。SAS In-Databaseは汎用のデータベース内でSAS処理を実行するもの。SAS In-Memory Analyticsは専用ハードウェア上でインメモリ処理を行うもの。これら分析基盤によって、優れたパフォーマンス、拡張性、信頼性を提供し、最小限のシステムリソースでビッグデータをサポートするという。

 Global Solution and Practiceでは、グローバルリスクに対応するソリューション提供を強化する。具体的に、SASはソリューションをオンプレミス/クラウドの両環境をサポートする。事業継続性の意味でも、この適材適所のソリューション配置をさらに進めていくという。

 また、収益分析や顧客分析を強化する。これは特にタイ洪水や為替変動で大きく浮き彫りになったテーマだ。製品が製造できなくなっただけでなく、さまざまな要因が絡みあって、企業は収益性の予測が立てづらくなった。今後はより一層、世界のさまざまなロケーションに調達場所を求めなければならず、さまざまな地域での原価評価分析や調達確保などをリアルタイムに行えるSASの製品がそれを支援するという。顧客分析にはソーシャルメディア分析も含まれる。そうした非構造化データと構造化データを問わず、マルチ言語に対応するのが同社の強みとなる。

 こうした戦略をグローバルに推進していくため、世界各国のコンサルタントが導入事例の共有を積極的に行っている。また、北アジア地域については、地域のリーダーカントリーとして積極的に顧客の交流、ナレッジの共有に努めているとした。

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