物理PCより速いVDIを実現する「Atlantis ILIO Diskless VDI」、ネットワールドが販売へ


説明を行ったAtlantis Computing、マーケティングディレクターのSeth Knox氏

 株式会社ネットワールドは、米Atlantis Computing製のVDI最適化ソフト「Atlantis ILIO Diskless VDI」を3月下旬に発売する。WindowsデスクトップイメージをVDIサーバーのメモリ上に展開することで、SAN/NAS/SSDなどディスクベースのストレージを不要とし、物理PCを上回るパフォーマンスのVDIを実現するという。

 現状のVDIでは「多数のユーザーのアクセスが集中する時間帯に共有ストレージへのI/Oが急上昇する点」と「大量のメモリを消費するが、128GBを超えるメモリを搭載できないサーバーも多くVDIの集積度を上げられない点」が課題となっている。つまり、サーバー側にデスクトップ環境を集約する分だけ、I/Oとメモリリソースへの負荷が増え、サーバーやラック台数が増大してしまうのだ。

 新製品は、これら課題を「世界初」(同社)となる「ディスクレスVDI」というソリューションで解決する。

 新製品の中核技術となるのは、「Atlantis ILIO」というソフト製品。仮想マシンからディスクへの書き込みにおけるインライン重複排除機能、細かな複数のランダム書き込みをまとめてシーケンシャルな書き込みに変える機能、Windows NTFSに特化したRead/Write双方向のキャッシング、といった機能によってVDIブースター(最大10倍)を実現する。

「Atlantis ILIO」の仕組み。最大99%のストレージ容量を削減「Atlantis ILIO Diskless VDI」の概要。デスクトップあたり367IPOS以上で、PCのパフォーマンスを上回る(SAN/NASの36倍)

 同ソフトについては2011年9月より、ネットワールドが単体の仮想アプライアンス製品「Atlantis ILIO 2.0」として販売しているが、今回の「Atlantis ILIO Diskless VDI」は、特に「Cisco UCS」サーバーに最適化し、同サーバーのハイパーバイザー上で稼働する仮想アプライアンスとして新たに発売するものだ。

 Cisco UCSには、拡張メモリテクノロジが実装されており、128GBを超える大容量メモリ(512GB)を搭載可能となっている。「Atlantis ILIO Diskless VDI」では、この大容量メモリ上に、Windowsデスクトップイメージを展開してしまおうというのが最大の特長となる。

 インメモリの高速性を生かすことで、VDIブート、ログイン、アプリ起動、パッチ適用、ウイルススキャンなどのあらゆる面でパフォーマンスを向上。例えば、Windows 7のブートタイムは10数秒に収まるという。

ベンチマーク(200VDIの例)。Atlantis ILIO導入により、平均IOPSが2119から95に、ノンパーシステントVDIでのストレージ容量は408GBから41GBに削減されたMyvirtualcloud.netによるテスト結果。こちらでもIOPS、レスポンスタイム、ストレージ容量が大幅に改善されているのが分かる

 対応VDIは、Citrix XenDesktop、VMware View。構成例としては、2ソケット・20コア・512GBのCisco UCSサーバーにVMware vSphereを搭載。160仮想デスクトップに320GBメモリと19vCPUを割り当て、Atlantis ILIO Diskless VDIに6GBメモリと1vCPUを割り当てる。また、SAN/NASやローカルSAS/SSDの代わりに、160GBのメモリをストレージとして割り当てる。

 このような構成の場合、VDIあたりの初期コストは、共有ストレージを利用して60VDIほどの集積度を持つサーバーで構成する場合と比べて、約半分になるという。フランクフルト銀行の導入事例では、従来、VDIあたり2233ドルもかかっていたストレージコストが150ドルに削減されたとも報告されている。

 なお、今回は特に拡張メモリテクノロジを持つCisco UCSにフォーカスしているが、他社製サーバーも利用が可能だ。当面は「Cisco UCS Cシリーズ(ラックマウント型)」あるいは「Cisco UCS Bシリーズ(ブレード型)」での提供となる。

 100ユーザーまでの「エントリーパック」、500ユーザーまでの「スタンダードパック」、1000ユーザーまでの「アドバンスドパック」の3種類を用意。「Atlantis ILIO Diskless VDI」の参考価格は、ユーザーごとに個別のデスクトップ環境を割り当てないノンパーシステント形態で26万2500円(税別)/25VDIとなる。

 なお「ハードウェアとソフトウェアを含めた形ではVDIあたり6万円ほどとなり、共有ストレージを使う場合の7万5000円~8万円という試算よりも1万5000円~2万円安くなる。ユーザー規模が1000名を超えるような場合では、従来よりも2000万円ほどのコスト削減になる」(ネットワールド)と説明している。

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