日本HP、Hyper-Vベースの大規模向け仮想化基盤アプライアンス~“総合サポート力”でユーザーを支援

最大1200VMを集約可能


HPの最適解に基づくHyper-V環境を提供するのが「HP VirtualSystem for Microsoft」だという
日本HP インダストリースタンダードサーバー製品本部 製品企画部の荒木裕介氏

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は16日、Hyper-Vに最適化された仮想化基盤アプライアンス「HP VirtualSystem for Microsoft」を発表した。主にエンタープライズでの利用を想定しており、サポートまでを含めたトータルソリューションとして製品化されている。なお、すでにVMware向けの「HP VirtualSystem for VMware」が提供されており、今回の製品は第2弾となる。

 「HP VirtualSystem for Microsoft」は、Hyper-Vによる統合仮想化環境を一括導入可能なアプライアンスサーバー。実際に仮想マシン(VM)を動作させる「仮想ホスト」、管理サーバー、ネットワークスイッチ、SANストレージなどのハードウェアと、Hyper-V、管理ツールのSystem Centerなどのソフトウェアをパッケージ化しており、最大1200の仮想マシンを1つのアプライアンス内に収容できるという。

 このようなアプライアンス化による最大のメリットは、日本HPと日本マイクロソフトの両社によって、あらかじめ動作検証や最適化作業が行われた状態で出荷されるため、機器の選定から設計・導入・セットアップにかかる期間・手間を大幅に短縮可能な点だ。

 日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリースタンダードサーバー製品本部 製品企画部の荒木裕介氏は、「日本HPがベストプラクティスと考えている構成がベースだが、120以上の検証項目をパスした上で、アプライアンスとしてお客さまに提供するため、届いた時にはすぐに使える状態になっているのが特徴。基本的な設計や事前検証の費用がまったくかからないし、構築作業もグローバルで標準化されているため圧縮されており、モデルケースによる試算では1100万円相当の導入費用削減につながる」と、その効果を紹介する。


「HP VirtualSystem for Microsoft」の特徴アプライアンスにより導入期間を短期化可能モデルケースによる試算では、1100万円相当の導入費用削減につながるとした
グローバルを含めたジョイントサポートにより、ユーザーに対して的確な対応が可能
ハードウェアのみならず、OSやアプリケーションをサポートすることも可能という

 また「HP VirtualSystem for Microsoft」の対象となるエンタープライズでは、サポート体制が重要視されることから、製品とサポートが一体となったソリューションとして提供されるとのこと。HPとMicrosoftではグローバルレベルでジョイントサポートの仕組みを整えており、共同でMicrosoft製品環境をサポートできる点を強みとして持っている。日本でも、日本HPのサポートセンターに日本マイクロソフトのエンジニアが常駐しており、そのリソースを活用したサポートが行われているのだという。

 両社では、今回もこうした共同サポート体制を生かして、ユーザー企業への支援を提供する意向で、荒木氏は「当社はハードウェアベンダーであるからハードウェアは当然として、その上で動くソフトもサポートできる強みがある。しかも、いくつ仮想マシンを動かしても保守料金は定額だし、日本マイクロソフトのアプリケーションサポートも定額の範囲。高価な専用サポートではなく、通常のサポート契約でここまで提供できるのは、ほかにはないだろう」と、充実したサポート体制をアピールした。

 なお荒木氏によれば、物理環境で稼働しているシステムをそのまま仮想環境へ移行させる、P2Vでトラブルが起こることが多いというが、日本HPではETW(Event Tracing for Windows)ツールを用いた一括解析により、移行後に発生した仮想OS(Windows)の問題も含めた、迅速な解決策を提供可能とのことで、こうした点でも同社ならではの、Microsoftとの協業の深さを生かせるとしている。

 加えて管理ツールについても、ハードウェアの管理機能をすべてSystem Centerに統合しているため、「インフラからマイクロソフトのアプリケーションまでを、System Centerで管理できる。これによって、仮想化導入後に管理が煩雑になるという課題を解決可能だ」(荒木氏)とした。

 アプライアンスのラインアップとしては、仮想ホストに「ProLiant DL 380 G7」を利用する「VS1」と、仮想ホストにブレードサーバー「HP BladeSystem」を用いた「VS2」を用意する。目安として、前者は最大400、後者は最大1200までの仮想マシンを収容可能で、価格はそれぞれ2730万円から、6510万円から。


両社の管理ツールも連携可能ラインアップとしては、2つの製品を用意する

 

Windows Server 2003など古いサーバー環境からのリプレースを促進

日本HP インダストリースタンダードサーバー製品本部の橘一徳本部長

 なお、こうした製品を日本HPが市場投入する背景としては、Windows Serverシステムの移行の問題がある。2003年に発売されたサーバーOSであるWindows Server 2003は、すでにメインストリームサポートが終了しているが、2011年上半期の時点で、これを含めたメインストリームサポートが終了が終了しているOSが、Windows Server全体の半分を占めてしまっているとのこと。こうしたユーザーの中には、景気後退や震災の影響などで移行が先送りされてしまったものの、新しいシステムへ移行したいというニーズは確実にあるという。

 一方で、Hyper-Vなどの仮想化技術は、今では当たり前の存在になってきており、「システム移行と仮想化採用の問題はあわせて考える必要がある」と、日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 インダストリースタンダードサーバー製品本部の橘一徳本部長は指摘する。

 橘本部長によれば、今回の「HP VirtualSystem for Microsoft」は、こうした状況を同社なりにそしゃくし、その改善に向けた答えとして提供するものとのことで、「古いシステムを使っているお客さまが仮想化を導入しない理由は、パフォーマンス、移行リスク、運用性などの面で心理的な障壁があること。マイクロソフトと日本HPのテクノロジーを集約・統合したこのアプライアンスにより、不安要因を取り除くことができるのではないか」と、狙いを説明していた。

 また日本HPと日本マイクロソフトでは、このアプライアンスの普及・拡大に向けて両社共同での施策を積極的に展開する考え。まず、自社内や販売パートナーの営業/SEのトレーニングを行い、提案力を強化するほか、啓発に向けたマーケティングキャンペーンの実施、セミナーの共催による案件創出などを行っていく。

 「1ベンダーによるロックインを嫌うお客さまがいらっしゃるのも事実だが、検証作業を伴ったり、動作の不具合のリスクを抱えたりといった事態を避ける、またコストを削減するためには、アプライアンスやリファレンスモデルが効果的だ。お客さまが次のステップに移る支援を両社共同で行いたい」(橘本部長)。


古いシステムから新しいシステムへの移行ニーズは確実に高まっているという仮想化を取り入れることも当たり前になりつつあるが、いくつかの課題が障壁になっているとのことで、こうした課題を日本マイクロソフトとの協業でクリアし、ユーザーを後押ししていくとした
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