弥生、UIとサポートを強化した「弥生12シリーズ」。SaaS版は2012年4月に提供


 弥生株式会社は11月1日、業務用パッケージシリーズ「弥生シリーズ」の最新版「弥生12シリーズ」を発表。「やよいの青色申告 12」「弥生会計 12」などシリーズ6製品を12月2日に一斉発売する。価格は「やよいの青色申告 12」が1万500円。「弥生会計 12」が4万2000円から。

岡本社長「2011年は“愚直な実践”が実った1年」

弥生株式会社 岡本浩一郎社長

 弥生の岡本浩一郎社長は発表会で、2011年版の発表から始まった1年を「“愚直な実践”が実った1年」と評価。製品開発面では、実際の申告用紙を画面上にそのまま写したようなユーザーインターフェイスで青色申告書類が作成できる確定申告モジュールを実装し、また今年7月に発売した「やよいの見積・納品・請求書11」では、帳票レイアウト機能を新たに開発・搭載したことを成果として挙げた。

 確定申告モジュールの開発では、Microsoftのプレゼンテーションシステム、WPF(Windows Presentation Foundation)技術を採用していることから、「2011 Microsoft Country Partner of the Year for Japan」も受賞、岡本社長は米国で開催された授賞式にも出席したという。

 「顧客やパートナーが広がった1年」(岡本社長)でもあるとして、弥生のスマートフォンアプリコンテスト9月6日~10月31日実施、弥生検定の実施、2011年9月から「弥生検定 パソコン経理事務」(3級)がスタートしたことを紹介した。

 市場シェアにおいては、本数シェアで48.5%(前年43.4%)、金額シェアで68.2%(同63.7%)と本数・金額とも対前年比5%ていどのシェア向上となった。市場全体は、対前年で本数比108.7%、金額比107.9%の成長となったが、弥生単独では本数ベースで121.4%、金額ベースで115.5%の伸長となっており「弥生が市場拡大を牽引」(岡本社長)、過去最高の業績を達成した。

 岡本社長は「市場は明確に回復に向かっている。去年、自社が良くなっても市場全体が縮小するのでは成長の意味がないと申し上げたが、やよいが市場をけん引できている」と総括した。

岡本社長は「“愚直な実践”が実った1年」と評価おもに弥生の販売増で、業務ソフト市場は成長基調に

2012年4月開始のSaaS版は、ハードルを下げたサービスで新規ユーザーを取り込む

 2012年4月提供開始のSaaS版について岡本社長は、「現在のパッケージを利用しているユーザーがすぐに移行するといったサービスではなく、現在会計ソフトを利用していない新規ユーザーを対象とした、もっとハードルを下げたサービスになる。新たなニーズを掘り起こすために開発を進めている」として、SaaS版では、新規顧客取り込みを目指す考えを明らかにした。

 またSaaS版提供について、パッケージ版のような流通コストやパッケージ版にかかるソフトは不要になるが「クラウドにすれば簡単にコストが下げるとは言えない。提供する以上は365日の稼働が求められる。これは大変だなあというのが正直なところ」とコメント。

 一方で、震災以後大きなテーマとなっている事業継続性の面では、今回の弥生シリーズでも製品を購入したユーザーにはデータのバックアップサービスを1年間無償で提供すると述べ、すでにクラウド的な要素がパッケージ製品にも入ってきているとして「中長期的には、デスクトップ製品とクラウドサービスといった区分けは意味がなくなってくるのではないか」と指摘した。

震災の業績への影響は限定的、市場は回復基調に

 震災の影響については、3月売上げは対前年割れとなったものの、4月以後は徐々に回復し、6月にはほぼ前年の売上げを達成。影響は限定的だったと述べた。

 震災支援では、3月に義援金や既存ユーザー向けにソフトの無償提供や、あんしん保守サービス無償延長などを行い、8月には被災地の中小企業・個人事業者への支援を目的として日本商工会議所に義援金拠出したほか、新規ユーザー向けソフト無償提供を行ったと説明。10月31日時点でソフトの無償提供は63件にとどまっており、「当初想定に比べまだ数が少ない」(岡本社長)という。

 「被災地の生活復興はある程度進んできたが、事業の復興はまだこれから。ソフト無償提供は期限を延長して2012年3月まで延長し無償で業務復興支援セミナーも実施する」とした。

弥生の震災復興支援施策

より使いやすく、わかりやすくを目指した「弥生 12シリーズ」

 「弥生12シリーズ」のラインナップは従来と同様で、「弥生会計 12」、「弥生販売 12」、「弥生給与 12」、「弥生顧客 12」、「やよいの青色申告 12」「やよいの給与計算 12」と、今年7月に発売したばかりの「やよいの見積・納品・請求書11」を除く6製品を12月2日に一斉発売する。

 岡本社長は、「年末調整など、1年に1度しかやらない業務でも、より『かんたん・やさしい』に。昨年は青色申告の確定申告機能を刷新したが、同じ技術を用いて、今回は給与の年末調整機能を刷新した。また、『やよいの見積・納品・請求書11』で搭載した帳票レイアウト機能を弥生販売にも搭載し、業務に合った帳票の作成が容易になった」と今年の製品開発のポイントを紹介。そのほか今回の機能追加では、全製品共通でPDF出力・白紙カラー印刷に対応した。

弥生 12シリーズのラインナップ弥生 12シリーズの製品コンセプト

 製品個別の機能強化については、「弥生会計 12」「やよいの青色申告 12」では、これまで別途用意する必要のあった、所得税確定申告書の第三表、第四表の作成に対応。また、多くの支払い先から所得の支払いを受けている場合に必要となる「所得の内訳書」や「医療費の明細書」など使用頻度の高い付表にも新たに対応した。青色申告決算書などの入力・修正箇所をナビゲートする機能も改良した。

所得税確定申告書の第三表、第四表のほか、所得の内訳書、医療費の明細書など頻度の高い付表にも対応ナビゲート機能も強化、入力が必要な部分のみをハイライトするなどよりわかりやすくした

 「弥生給与 12」「やよいの給与計算 12」は、年末調整機能を刷新。年に一度の年末調整業務でも、必要な業務の流れや一連の処理がどこまで進んだのか、あと何が残っているのかがひとめで把握できる年末調整業務のポータル画面を新たに搭載した。申告書の入力画面は実際の申告書と同じ画面デザインのため、「個々の従業員が記入した申告書をそのまま入力すればよく、初心者でも迷わず入力できる」(岡本社長)。従業員の個々の申告書にはふせんメモを付けることができ、「生命保険料控除証明書未提出」などのふせんメモを付けることで、ポータル画面でも「生命保険料控除証明書未提出」ふせんメモの数が表示され、未提出者が何人いるか、誰が未提出かがすぐに把握できる。

年末調整機能を刷新。ポータル画面を設け、作業の進行状況がひとめで把握可能に青色申告と同様に、実際の申告書と同じ画面を搭載。入力をわかりやすくした

 「弥生販売 12」では、今年7に発売した「やよいの見積・納品・請求書 11」に搭載された「帳票レイアウト」機能を搭載。帳票そのままの編集画面でレイアウト変更が可能になった。これにより、背景色や罫線スタイル設定なども画面で確認しながら、直感的にカスタマイズすることができる。PDF出力にも対応したことで、見積書や請求書などを電子メール添付で送信することが容易になった。

帳票レイアウト機能を強化独自の帳票がより手軽に作成可能に

 このほか、「弥生サポート&サービス」も拡充。トータルプランでは、「弥生会計」「やよいの青色申告」で業務ナビゲーションサービスを新たに提供。弥生シリーズの使い方ではなく、経理や財務の業務そのものに関する問い合わせに対しても、公的機関の窓口など、適切な問い合わせ先などを案内する。

 同じくトータルプランで「弥生会計」「やよいの青色申告」については2012年1月16日から3月15日まで平日夕方の電話サポート時間を2時間延長し、平日19:30まで受け付ける。「弥生給与」「やよいの給与計算」については、問い合わせの多い年末調整時期に合わせて2011年12月1日から2012年1月31日まで、平日19:30まで電話サポートを延長。ベーシックプランでも年末調整時期に合わせメールサポート時間の延長も行う。

 また弥生12シリーズを購入した全顧客を対象に、データバックアップサービスを1年間無料にする。震災後業務継続性が話題に上ることが多くなったが、岡本社長は「以前から提供していたが、認知度がいまひとつ高くなかった。まず使ってみていただきたい」と述べた。また、使いかたのセミナーを社内で開催するのが難しい中小企業においても、手軽に社員教育ができるよう、期中にストリーミングセミナーを提供開始する予定だ。

関連情報