富士通研、高性能と柔軟性を両立させる次世代サーバーを試作

仮想化を使わず物理資源をプール化する技術


取締役 久門耕一氏

 株式会社富士通研究所(富士通研)は26日、高性能と柔軟性を同時に実現する次世代サーバーの試作に成功したと発表した。「資源プール化アーキテクチャ」により、新しいICTサービスの創出を可能にするという。

 今回、試作したのは、CPU・メモリ・HDDなどのハードウェア部品をプール化し、それらの資源を高速なインターコネクトで接続して組み合わせることで、ハードウェア本来の機能や性能を損なわず、仮想化技術のような柔軟性を実現する次世代サーバー。

 新技術として開発した「プール管理機構」「ストレージ機能を提供するミドルウェア」「ディスクエリアネットワーク」などで実現している。

 「プール管理機構」は、利用者が必要とするCPU数・HDD数などの要件に応じて、プールから資源を切り出し、OS・ミドルウェアの配備を行い、必要とされる構成のサーバーをオンデマンドに構築する。

 従来は仮想化技術を使い、必要となる資源を割り当てた仮想マシンを立ち上げることで同様のことを実現していたが、新技術では物理コンポーネントそのものをプール化して組み立てるため、仮想化レイヤを通さない分、オーバーヘッドを抑えられるという。

試作サーバー資源プール化アーキテクチャの概要

 「プール管理機構」によって構築したサーバー上にHDDとデータを管理するミドルウェアを構成し、プール化されたHDDから必要な容量分のストレージ機能を提供するのが「ストレージ機能を提供するミドルウェア」。これにより、大規模データ処理に適した多数のローカルディスクを持つサーバーや、データの信頼性を向上させるRAID機能を、性能や消費電力などの要件に応じて柔軟に構成できるという。

 加えて、CPU・メモリのプールと多数のHDDを集積したディスクプールを6Gbpsのインターコネクトで接続するのが「ディスクエリアネットワーク」。ここを介してCPUに接続されたストレージは、ほかのCPUからの性能面の影響を受けることもなく、通常のサーバーのローカルディスクと同じディスクアクセス性能を発揮する。例えば、一般的なスケールアウト技術の場合、サーバー間はEthernetで接続されるため、どうしてもオーバーヘッドが生じてしまう。仮想化技術の場合もSANなどの外部ストレージを必要とするため、性能面で新技術には及ばないという。

CPU・メモリとストレージをインターコネクトし、ミドルウェアでHDDとデータを管理するCPUプールとディスクプールを結合する高速(6Gbps)インターコネクトで、ローカルディスクと同じアクアセス性能を提供する

 富士通研が行った性能評価では、Webサービスを提供する一般的な構成と比較して、I/O性能が約4倍に(Iometerによりブロックアクセスの総帯域を算出)、実アプリケーションの性能を約40%向上(Hadoop上でSortを実行)した。

 同社では新技術の狙いについて、「現在、クラウドで提供されているWebサービスはもちろん、新たに登場するサービスについても、その特性に応じて常に最適なサーバーとストレージを素早く構築できる。負荷変動の予測が難しいサービスでも、システム構成を柔軟に変更できるという特徴により、設計時のキャパシティプランニングが不要。ワークロードの割合が経年変化していく場合も、同じICTインフラの構成を変化させることで常に最適なサービスが提供できるため、データセンターの利用率を高められる。また、ハードウェア部品の故障時も故障部品の接続を切り替えることで対処できるため、部品交換の頻度を下げ、保守コストの低減にも貢献する」(取締役 久門耕一氏)とした。

性能評価で高いI/O性能を実証実現できる効果

 今後は、ファシリティ(冷却、給電)の融合、統合管理機能の実装などを行い、個別最適化からシステム全体の最適化を実現する“垂直統合”を極めていく方針。実用化は2013年~2014年ごろを目指す。製品化の時期は未定。

今後、ファシリティなども融合する方針
関連情報
(川島 弘之)
2011/9/26 14:05