プライベートクラウドは自社運用が予想外の手間に~富士通が解決策

プライベートクラウド×アウトソースの新サービス


常務理事 サービスビジネス本部長の阿部孝明氏

 富士通株式会社は22日、顧客専用のクラウド環境をアウトソーシングする「プライベートクラウドサービス」の提供を開始した。

 同サービスは、プライベートクラウド導入の企画・設計・構築・運用・保守・撤去・廃棄までのライフサイクル全体を受託するアウトソーシングサービス。

 従来富士通では、顧客先に構築したICTシステムをネットワーク経由で内部利用させるプライベートクラウドを提供してきたが、昨今のニーズの高まりを受けて、プライベートクラウドを同社データセンター内にも構築し提供する。

プライベートクラウドでコスト削減を見込んでも、実際の運用が複雑で思い通りの効果が得られないケースが存在する

 常務理事 サービスビジネス本部長の阿部孝明氏は、この背景について「サイロ型システムをプライベートクラウド化することでリソースの共有などの効率化が進む一方で、お客さま自身で運用する従来のプライベートクラウドだと、クラウド固有の運用の複雑さやセキュリティリスクに対応しなければならず、予想通りのコスト削減とならない場合がある。お客さまは運用を簡素化したがっている」と説明。

 新サービスでは一定の基本料金のほか、ハードウェアリソースから各種サービスまで従量課金で提供する。サーバー・ストレージ・ネットワークのみならず、セキュリティまでをクラウドインフラ環境ととらえ、その運用・トラブル対応までサービス提供するのが特徴だ。阿部氏は「従来のプライベートクラウド構築サービスより、運用サービスの毛色を強めたもの」としている。

 富士通ならではの安定稼働の継続的改善の仕組みも採用。業務システムをクラウド化するにあたっては、プライベート/パブリッククラウドのどちらが適しているか見極める必要がある。新サービスでも独自の業務仕分け・見える化手法を適用し、業務・アプリ・処理・データの特性に応じてクラウド化の方針を立てていく。

 また、実際の導入にあたっては、2010年上期に2400件にのぼったクラウド案件などで培ったノウハウを基に、プライベートクラウド構成モデル・設計/構築テンプレートを用意。あらかじめ構築・編成されたサービス基盤や専門要員の活用により、短期導入を実現するという。

プライベートクラウドサービスメニュー概要サービス提供イメージ

独自の手法で業務仕分けを行い、クラウド化の方針を立てていく導入にあたってはプライベートクラウド構成モデル・設計/構築テンプレートを活用。短期導入を実現している

 阿部氏によれば「2010年上期のプライベートクラウド案件は450件と、前年同期比220%に増えた。そのうち、運用サービス込みのプライベートクラウド案件が全体の約3割で前年同期比300%に増えている」とのことで、普及するプライベートクラウドでは実際の運用で発生する予想外の手間が課題となっているようだ。

 同社では、調査・企画担当として約2万5000名のフィールドSE・営業、設計・構築担当として約700名のクラウドアーキテクト、運用担当として約500名のサービスマネージャ、約300名のLCMサービスセンターエンジニア、約8000名のオンサイトサービスエンジニアを配置し、これらの課題に取り組む姿勢。

 価格は、どの部分を月額固定あるいは従量課金とするかなどの調整が必要で、案件ごとの個別見積もり。プライベートクラウドサービスのみで今後5年間で導入企業1000社/3000億円の売り上げを目指す。

関連情報