「次世代データセンター・アーキテクチャ」実現に注力、ネットワンの2010年度


代表取締役社長の吉野孝行氏

 ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は2日、2010年度事業戦略説明会を開催。代表取締役社長の吉野孝行氏が登壇し、2009年度の注力分野の結果と総括、中長期的な市場の変化、2010年度の事業戦略・注力分野に関して説明した。


2009年度の注力分野の結果と総括

2009年度の主なトピックス
グループビジョン「ADMIRED COMPANY」

 2009年度の事業戦略では、「ネットワーク事業における差別化」、「サービス事業の拡充」、「ユニファイドコミュニケーション(UC)事業の促進」、「データセンター・仮想化事業の促進」の4点が注力点だった。

 これらに基づく主な成果として、「Brocadeとの戦略的業務提携(2009年9月)」、「NSATの100%子会社化(2009年9月)」、「新テクニカルセンターの開設(2009年9月)」、「クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)の設立(2009年10月)」、「グループビジョンのリニューアル(2009年10月)」、「社内システムのプライベートクラウド化(2010年1月)」、「エクシードの関連子会社化(2010年2月)」を紹介。

 Brocadeとの戦略的業務提携では「両社のテストラボを有機的に結合したVirtual Cloud Labにて共同検証の結果を社内公開した」と説明。NSATの100%子会社化では「従来以上にスムーズかつスピーディなサポート実行体制を整備できた」とし、新テクニカルセンターの開設では「開設以来10カ月で延べ179社が来訪。お客さまへ当社の技術力・信頼感の理解を促進できた」(吉野氏)とした。

 一方、CBAの設立では、「2009年10月当時はまだクラウドに対してマーケティング先行の感があり、実際にビジネスモデルへ昇華するイメージがあいまいとしていた。ICT市場の活性化、地球環境への貢献を考えた場合、団体を通じてできることがあるのではないかと考えた」と改めて設立の背景に触れ、「参加企業は大手ベンダー・地方官公庁・民間金融も含め、2010年7月末で114社を数えた。その中でマルチベンダーがそれぞれ得意な要素を持ち寄って新たな価値を作り、実ビジネスとして誕生したものも数多い」(同氏)と成果を述べた。

 また、こうした一連の活動を示す新しいグループビジョンとして、2009年10月には「ADMIRED COMPANY」も発表。「お客さま、パートナー、株主、社員すべてのステークホルダーから信頼され支持される企業へ」との思いで、「ICT市場、市民社会、地球環境への貢献を目指し、日々どのような行動を取ればミッションをクリアできるか、社員1人1人に理解が浸透するかということに取り組んできた」(同氏)とした。


中長期的な市場の変化と事業戦略

 今後の市場の変化としては「所有から利用へ」を重要視する。「これはこの20年来、言われ続けたきた言葉。マネージドサービス、ユーティリティサービス、SOA――これらはすべて所有から利用へ目指したものだった。実現できていないのは、ネットワークが最大のボトルネックとなっていたからだが、LTEの登場で解決の糸口も見えてきた」とコメント。

 「パーソナルデバイスの多様化で、モバイルデータは爆発的に増えると予測されている。しかしLTEで有線と無線のパフォーマンスにほとんど差がなくなり、クラウドも“マーケティング先行”から抜け出す日が近いかも知れない。そこで必要なのは、“ユーザー視点”。Salesforce.comもGoogleもSaaSのリーダーと言われているが、本当にそうか。彼らのサービスは本当の意味で“ユーザー視点”といえるだろうか。今後は、利用者にとってのSLAをいかに向上するかという点がますます重要になる」と、中長期的な市場の変化を説明した。


2010年度の事業戦略・注力分野

変化が求められるデータセンター・アーキテクチャ

 では2010年度、ネットワンはどこに注力するのか。2009年度の「ネットワーク事業における差別化」、「サービス事業の拡充」、「ユニファイドコミュニケーション(UC)事業の促進」、「データセンター・仮想化事業の促進」の4点は引き続き継続する意向だが、中でもプラットフォーム事業の成長・拡大に向け、「次世代データセンター・アーキテクチャの提供」を優先的に紹介している。

 その筆頭となるのが、6月に発表した512個のAtomを搭載でき、超スケールアウトを実現するSeaMicro製サーバーだ。今、データセンターには「1つ1つは低負荷だが大量なトランザクション」を処理するフロントに最適なアーキテクチャと、「1つ1つは高負荷だが少量のトランザクション」を処理するバックエンドに最適なアーキテクチャが求められている。

 ネットワンでは、Webサーバー(フロント)にSeaMicro製サーバーを、データベース(バックエンド)に従来の高性能CPUを搭載したスケールアップサーバーを配置。併せて、VMware/Cisco/EMC(VCE連合)が提供するデータセンターに必要なインフラを1台に集約した「Vblock」と同様のものを国内にも提供すべく、VCEあるいはVMware/Cisco/NetAppの製品をインテグレーションし検証。これらを統合して次世代データセンター・アーキテクチャの図を描いている。同時に仮想デスクトップやUCなどを絡め、「生産性向上のためのワークスタイル変革に貢献する」と語った。

Vblockの検証も実施。SeaMicro製サーバーなど総合的に次世代データセンター・アーキテクチャを提供するCiscoやCitrixなどの製品で生産性向上のためのワークスタイル変革も目指す

 一方、2010年のもう1つの注力分野となるのがCBAの取り組みだ。

 7月にはマーケットプレイスをはじめ、SaaSフロント連携、メタクラウドAPIなどの成果を発表したCBAだが、その活動も2010年9月末をもって一段落。10月以降、新たな形態で活動が継承されるが、プロジェクトとしては「地域クラウドビジネス」などがメインテーマとなるという。

 「現状すでに、地方自治体に関してさまざまな協業プロジェクトが走っている。今後、全国でその数は2ケタとなり、CBAの活動によって、いかに新たな市場が作られるのか、新たなビジネスモデルが日本に受け入れられるのか、さまざまな活動に取り組んでいく」(同氏)。

 プラットフォーム/ネットワーク/サービス事業のうち、プラットフォーム事業の2009年度売上高は約99億円。これを2010年度には約150億円まで引き上げる計画という。また「利益改善のため、現状67:33の物販・サービス実績比率を、3年後には50:50に近づけたい」という目標も語る。

 ネットワンでは2009年に、“New Platform Enabler”という同社が目指すべき姿を打ち出している。SeaMicroやCBAの活動を通して、New Platformと表現してきた次世代データセンター・アーキテクチャの形がほの見え始めた。2010年度はさらに「義~One Team, One Destiny」というテーマを掲げ、「人と人とのコミュニケーション、心を大事にして事業を進めたい。それが当社を差別化する大きなポイントとなる」(同氏)とした。

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