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日本ユニシス、2015年度連結決算は増収増益 次年度も2けたの増益見込む

 日本ユニシス株式会社は11日、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績を発表した。売上高は、前年比3.3%増の2780億円、営業利益は同14.6%増の125億円、経常利益は同1.7%減の121億円、当期純利益は同23.1%増の89億円となった。

2015年度の連結業績

 2015年度は、中期経営計画「Innovative Challenge Plan」の1年目として、成長戦略の「デジタル/ライフイノベーション領域の拡大」、「ビジネスICTプラットフォーム領域の変革」に加えて、「企業風土・人財改革」などの重点戦略を掲げてきた。

 2016年4月1日付で社長に就任した平岡昭良氏は、「システムサービス、アウトソーシングが好調であり、増収、増益となった。営業利益、純利益ともに計画を達成している。金融、電力・サービスなどの好調により受注高、受注残高ともに増加した。受注高は前年比6.0%増の2794億円、受注残高は0.7%増の2116億円と好調である」と総括した。

 だが、第4四半期には物販が低迷。これが売上高の計画未達につながったという。

中期経営計画の概要
日本ユニシス 代表取締役社長の平岡昭良氏

 セグメント別業績では、サービスの売上高は前年比3.8%増の1941億円、売上総利益が同4.4%増の498億円。そのうち、システムサービスの売上高が前年比7.7%増の898億円、売上総利益が同12.3%増238億円。サポートサービスの売上高が同0.2%増の553億円、売上総利益が同9.1%減の148億円。アウトソーシングの売上高が同4.8%増の404億円、売上総利益が同14.7%増の87億円。その他サービスの売上高が同13.5%減の84億円、売上総利益が同6.3%減の238億円となった。

セグメント別の状況

 ソフトウェアの売上高は前年比2.4%減の300億円、売上総利益が同15.3%減の73億円。そのうち、メインフレーム系の売上高は同29.3%減の54億円、オープン系が同6.5%増の246億円だった。

 ハードウェアの売上高は前年比4.9%増の538億円、売上総利益が同5.7%増の73億円。そのうち、コンピュータ販売の売上高が前年比5.9%増の510億円、売上総利益が同16.0%増の56億円。コンピュータ賃貸収入の売上高が前年比10.7%減の27億円。売上総利益が同17.6%減の17億円となった。また、ハードウェアのうち、メインフレーム系の売上高は前年比10.4%減の24億円、オープン系が同5.8%増の515億円となっている。

 マーケット別の売上高は、金融機関が前年比1.1%増の684億円、官公庁が前年並の159億円、製造が同3.0%増の481億円、商業・流通が同3.4%減の360億円、電力・サービスなどが同7.9%増の1096億円となった。

マーケット別の売上高

 「金融機関は地銀、信金を中心にシステム更改案件が活況であり、フロント領域での決済関連ビジネスを開拓。電力・サービスでは、4月からの電力小売全面自由化などにあわせた案件が増加。航空分野などを対象に、インバウンド増加をにらんだ旅行関連案件などに注力した。官公庁案件は、意図的に慎重な姿勢としている。だが、地域医療連携などに対応したビジネスへのシフトにより、前年比横ばいとなっている。商業・流通は前年の大型案件の反動によりマイナスだったが、受注は好調である」(平岡社長)と振り返った。

 一方、2016年度の連結業績見通しは、売上高が前年比2.5%増の2850億円、営業利益は同11.8%増の140億円、経常利益は同13.5%増の138億円、当期純利益は同12.1%増の100億円と増収増益を見込む。

 「利益は2けたの成長を見込んでいる。アウトソーシング、システムサービスを中心としたサービスで増益を見込む一方で、2020年に向けた開発投資を行うことになる」(平岡社長)という。

2016年度の連結業績見通し

 部門別の業績見通しは、サービスの売上高は前年比3.6%増の2011億円、売上総利益が同6.1%増の529億円。そのうち、システムサービスの売上高が前年比3.1%増の926億円、売上総利益が同2.4%増の244億円。サポートサービスの売上高が同0.2%増の555億円、売上総利益が同1.7%増の151億円。アウトソーシングの売上高が同8.7%増の440億円、売上総利益が同23.9%増の109億円。その他サービスの売上高が同6.2%増の90億円、売上総利益が同4.6%増の25億円を見込む。

 ソフトウェアの売上高は前年比0.7%増の302億円、売上総利益が同1.9%増の75億円。ハードウェアの売上高は前年比0.3%減の537億円、売上総利益が同3.8%減の71億円。そのうち、コンピュータ販売の売上高が前年比0.4%増の513億円、売上総利益が同1.6%増の57億円。コンピュータ賃貸収入の売上高が前年比13.9%減の24億円。売上総利益が同20.9%減の14億円となった。

 マーケット別の売上高見通しは、金融機関が前年比4.5%増の715億円、官公庁が同0.5%増の160億円、製造が同0.8%増の485億円、商業・流通が同2.7%増の370億円、電力・サービスなどが同2.2%増の1120億円とし、全領域で増収を目指す。

 また、2015年度からの3カ年計画「Innovative Challenge Plan」の進ちょく状況についても説明した。

 同中期経営計画では、最終年度となる2017年度には、連結売上高で3200億円、営業利益は170億円、営業利益率5.3%を目指す。

 「2017年度の計画については、現時点で見直すことは考えていない」とした。

 同中計では、「ビジネスをつなぎ、サービスを動かす。ICTを刺激し、未来をつくり出そう」をテーマに掲げ、チャレンジ領域として「デジタルイノベーション」、「ライフイノベーション」、「ビジネスICTプラットフォーム」の3つに取り組んでいる。

 日本ユニシスの平岡社長は、「デジタル化の進展により、ビジネスモデルが多様化。なかでも、キャッシュレス社会がさらに加速することをにらんで、それに向けた準備を進めている。また、生活そのものが変化するなかでIoTなどを活用し、少子高齢化や独居老人問題、医療リソース不足への対応、女性が働きやすい社会の実現、エネルギー問題や交通問題といった社会課題の解決に向けて、各業界のパートナーと協業していく。日本ユニシスでは、4万人の子どもの成長の発育データベースを持っており、自分の子どもの成長と比較することもできる。こうしたサービスも展開していく。これまでは点で見ていたものを面で見たサービスとして提供していくことも考えたい」とした。

 デジタルイノベーションにおいては、決済の多様化に対応し、キャッシュレス社会に向けた決済の利便性・効率性を向上。「日本は現金の決済が多いが、プリペイドカードやスマホを活用した決済、海外で使っている電子マネーを日本で使えるようにするといったサービスの提供、マイナンバーとの連携、各種デバイスとの連携などに取り組んでいく。地域金融機関と商店街による協業モデルによる地域創生につなげていくことができる」とした。

デジタルイノベーションでの取り組み

 ライフイノベーションでは、先駆的サービスの実績をさらに連携させ、社会課題を解決することを目指す。「医療の無駄を省くような提案のほか、ビッグデータを活用した未病への対応、あるいは場所や時間を選ばずに仕事ができるワークライフバランスへの取り組み、電気会社への対応に加えて、各家庭の電気利用を削減するといった日本のエネルギー問題への対応、監視カメラや気象衛星などのデータを活用し人工知能で分析する災害対策への取り組み、スマホでタクシーを呼び出し多言語に対応したスマートタクシーへの取り組みなども行っていく。スマートタクシーは受注が好調で、東京で走っているタクシーの7台に1台に、この仕組みを使ってもらえるようになる」とした。

ライフイノベーションでの取り組み

 ビジネスICTプラットフォームでは、新たなニーズに対応する技術基盤の拡充とプラットフォーム化を推進し、「フロント領域への投資が大切になってくるなかで、SoEの基盤となる開発プラットフォームを提供。IoTやビッグデータを、異業種企業が一緒になって活用できる仕組みも提供する」と述べた。

ビジネスICTプラットフォームでの取り組み

 さらに、同社が掲げている「Foresight in sight」を実現する新たな取り組みを強化。ヤマダ電機の店舗において、米Fellow Robotsの自律移動型サービスロボットNAVII(ナビー)を活用した実証実験を開始。また、イトーキのオフィスデザインの知見と、日本ユニシスが取り組む人工知能の融合を進めることにより、会議室自らが能動的に判断、行動、学習する機能を充実させ、会議体験を総合的に支援する仕組みを提案。「今年秋には製品化したい」という。

 また、オープンイノベーションの推進では、リバネス主催の科学、技術を活かした新たな事業の創造を目指すベンチャー企業の発掘、育成を行うシードアクセラレーションプログラム「TECH PLANTER」にパートナー参加している取り組みなどについて触れた。

 「2020年に向け、新たな地位を築くために、変革を進めていく。成長するデジタルエコノミー領域で、異業種をつなぐ新たな価値を提供。ビジネスエコシステムの創造を通じて、将来的には、ビジネスエコシステムの中核となり、未来のビジネスシナリオを描くフロントランナーへ成長していく」とした。

Foresight in sightを実現する新たな取り組み

 また、Foresight in sightのキーワードについては、「予見して、可視化し、洞察していくという意味を持たせている」と説明。「日本ユニシスは、地味であるとか、愚直であるとか、誠意のある社員が多いと言われる。これは、顧客を第一に考えて、最後までやり抜くことを、若い時から徹底されてきたものであり、今後も忘れてはいけないことだと考えている。顧客の期待に応えきるDNAは、これからも残していく」とした。

 しかし、「これは裏を返せば、言われていることをやるだけの会社である。Foresight in sightは、これまでの日本ユニシスのイメージからは遠い言葉である。顧客の要求を待って、それに対応していくという姿勢を見直し、社会や業界の動向を見て、事前に準備をしていくことが大切である。だが、そうなると全方位展開はできなくなり、重要なドメインを選んでいく必要がある」と説明する。

 そしてその例として、「電力業界向けソリューションは、我々が事前に用意して、これをクラウドで提供したものであった。また、これまでの協業は、ピラミッド構造の会社のなかでのものが多かったが、オープンイノベーションを推進する上では、フラットな関係を作らなくてはならない。こうしたことにも取り組んでいく」としたほか、「日本ユニシスは、顧客満足度は高いが、認知度は低い。これまでは、しっかりやってくれるところに頼むというところで日本ユニシスの価値が認められていたが、今後、すぐにやってくれるところに頼むという世界がくれば、認知度が必要。今後は認知度を高める活動を行う。システムをお守りするシステムインテグレータではなく、社会課題を解決するエコシステムを提供会社になりたい」と、新社長としての抱負を語った。

大河原 克行